表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/371

151 キツネとタヌキ

 キツネとタヌキは仲が悪い。

 化かし合い、馬鹿試合。

「俺は人間にだってなれるんだ」

 キツネの子供が、得意げに人間の子供に化ける。

「馬鹿キツネ! 耳がそのままケモノだぞ。僕だって人間にくらいなれるわい」

 そう言って、今度はタヌキの子供が人間に化ける。

「馬鹿タヌキ! おまえは尻尾がそのまま出てる。尻尾のついたのが人間なもんか」

「なんだと!」

「やるか!」

 元の姿に戻り、じゃれあうように喧嘩をする二人は、一瞬にして闇に包まれた。

「あれ?」

「これは?」

 二人はあたりを見回すと、闇は一気に元通りになる。

「やった! タヌキとキツネを捕まえたぞ!」

 目の前にいるのは人間の子供。どうやら人間の罠に掛かったらしく、二人はあっという間に籠に入れられ、ふたを閉められた。

「なんてことだ、おまえのせいだぞ」

「なにを? おまえのせいだ!」

 狭い籠の中で醜い争いが始まったが、どれだけ相手を罵ってもここから出られるわけではない。

「仕方がない……ここはひとつ、協力しよう」

「そうしよう。じゃあまず手始めに……僕は蛇にでもなって、あの籠の蓋を開けようか」

「それもいいが、俺がカミキリムシになって、この籠を食いちぎってもいい」

 だが、二人の体は何にも変身しません。

「どういうことだ!」

「きっとこれは、人間の前だからか、それともおひさまのパワーに当たっていないからか」

「どっちでもいいけど、俺たちは間違いなくピンチだぞ」

 その時、蓋が開いて、子供の顔が見えた。

「さあ、おいで。今日からここが、君たちの家だよ」

 そう言って、子供は自宅の外に置かれた囲いに二人を入れようとした。

 その瞬間、キツネは風船に、タヌキはキツネの風船を咥えた鳥へと姿を変え、大空へと飛んで行った。

「はあ……ここまで来れば大丈夫か」

「本当に驚いた……タヌキ汁だの、ステーキだのにされるかと思った」

「見事な化かし合いになったと思わないか」

「ああ、もちろんだ。僕が鳥になって君を咥えなければ、君は今頃、あの子供に割られていたかもしれないよ」

「なにを? 俺が風船になったおかげで、君は大空に飛べたんじゃないか。その飛び出たおなかで飛ぶには無理だったろうからね」

「なにを!」

 互いの肩を掴み、取っ組み合いになろうとする寸前で、二人は互いの顔を見合い、そして笑った。

「ハッハッハッハ。なにを喧嘩になる必要があるんだ。俺たちは無事に逃げ出したんじゃないか。互いに協力して」

「本当にそうだ。喧嘩なんてバカバカしい。お互いに最高の変身だった」

「今まで悪かった」

「僕のほうこそ」

 二人は固く握手をする。

「でもまあ、俺の変身の方が繊細で美しいけどな」

 ぼそっと言ったキツネに、タヌキが顔色を変える。

「なにを? 僕の変身のほうが正確だ」

 やはり二人は、取っ組み合いを続ける。

 だが、明日も明後日も、二人は一緒に居続けるだろう。

 キツネとタヌキは仲が悪い――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ