014 死体の森
※少しホラー要素を含みます。
森の奥深くに、一人の男がいた。その男は、悔やんでも悔やみきれず、ただ罪の意識だけを持ち、途方に暮れていた。
「死にたい……」
だが男には、首を吊るロープも、体を燃やす炎も、自身を切り刻むナイフも持っていない。
その時、一人の女が、男の前へやってきた。
「ちょうどよかった。何か……自殺出来る物をお持ちではありませんか?」
男の言葉に、女もまた表情もなく、ロープを差し出した。
「私も死ぬつもりで来たんです」
「それはよかった。あなたからもらったこのロープで、私は晴れて死ぬことが出来ます。あなたに会えて本当によかった。さようなら」
そう言って、男は命を絶った。
急に、女は怖くなった。
たった今まで生きていた男の死を前に、女はふと、何かに気付いた。
そこには、今まで生きていた男だけではなく、他の見知らぬ男女の首吊り死体が、近くの森じゅう、無数に並んで吊られているのに気が付いたのだ。
「キャ――!」
女は我に返って後ずさる。近くに絶壁があることも知らずに――。
体が落ちかかったところで、女は間一髪、崖から落ちることから逃れた。だが、片側に背負っていたリュックは、崖の下に落ちてしまった。
女は途方に暮れた。
あのロープを男にあげなければ、自分は死ねていただろう。自分だけ生き残ってしまったことも、男を殺したのが自分である錯覚にも思え、女は罪の意識に捉われた。
「死にたい……」
だが女には、首を吊るロープも、体を燃やす炎も、自身を切り刻むナイフも持っていない。
その時、一人の男が、女の前へやってきた。