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135 雪のたより
きのう、ふりつもった雪は、けふのうちに溶けてしまうだらう。
雪の結晶なるそのすべて、ひとつひとつにいのちといふものがあるのならば、
なんとはかなく、うつしいかがやきであることを、あなたも知ることができるだらうか。
わたくしがそのやうなことを申し上げるのは、
きのう、この目の前にある雪がまだ空からふってきたばかりのころ、
極楽浄土のせかいへと旅立って逝った、
わたくしの母が教えてくれたのだと思ひます。
いつかわたくしも、母のやうなやすらかな顔で、
またこの雪が雪解け水とかわるような、
うつくしいいのちをまっとうし、
あなたのかがやきへとつなげていけたら、
どれだけ倖せなことだらうかとかんがえてみた。
けふの夜も雪はふって、誰かさんのいのちのかがやきをおしえてくれるだらうか。
それでもきっとふりつもった雪は、明日のうちに溶けてしまうだらう。