115 魔法のクレヨン
ちぃちゃんはお絵かきが好き。今日も色とりどりのクレヨンで、大きな画用紙に絵を描く。
「これはママ、これはパパ、これはおじいちゃんとおばあちゃん。こっちが犬のジョイ」
今日もおうちでお絵かきしては、ママにそう説明をした。
「ちぃちゃん。ママ、ごはん作ってくるね」
ママはキッチンへ行ったが、ちぃちゃんから見えるところにいるので安心だ。
「これはおうち、これは太陽、これは雲、これは……」
ちぃちゃんがそう言った時、画用紙からクレヨンがはみ出してしまった。
「あっ……ママに怒られちゃう」
床にはみ出したクレヨンを、ちぃちゃんは慌てて手でゴシゴシする。でも、クレヨンは落ちないままだ。
その時、不思議なことに、床にはみ出したクレヨンが、ふわふわと浮いた。
指でそっと触れてみると、静かに揺れてふわふわしている。
「魔法のクレヨンだ!」
ちぃちゃんは、ふわふわと浮いているクレヨンの続きを描いた。
すると、クレヨンはちゃんと続いている。
まるで空に描いているかのように、ちぃちゃんはたくさんのクレヨンで大きな虹を描いた。
「これは大きな虹の橋……」
気が付けば、ちぃちゃんは床の上で眠っていた。
ママはそれを見つけると、ちぃちゃんの身体に毛布をかける。
「なんの夢を見ているのかしらね」
幸せそうに微笑むちぃちゃんに、ママも優しく微笑んだ。