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112 季節の風
風薫る、季節。
「季節の変わり目が好き」
透子の言葉に、友達たちは好奇の目で見つめる。
「変わり目なんか、わかんないよ」
「そう? なんか、風がふわって優しくて、なんかわくわくしない?」
「もう透子ってば、不思議ちゃん炸裂?」
そう言われて、逆に透子は首を傾げる。
「みんな、わかんないんだ……」
放課後の帰り道、部活三昧の友達を置いて、透子は一人、学校を出ていく。
ふと、暖かな風が吹き、透子の長い髪や制服のスカートを揺らす。
「いい風なのに……」
ぼそっとそう言って、透子は風を受ける形で振り向いた。
すると、数メートル後ろに男子生徒が歩いており、まるで風を楽しむかのように、空を見上げて深呼吸している。
男子生徒は透子の視線に気づくと、少し恥ずかしそうな顔をして、その横を通り過ぎた。
「いい風だよな……」
そっとそう言った男子生徒の声を聞いて、透子は嬉しそうに笑った。
「うん!」
二人はそのまま、家路を一緒に帰っていく。