111 人工知能の夢
人は永遠に憧れている。好きな人を失いたくないし、一人で死にたくないんだろう。
私は人工頭脳を持ったヒト型ロボットだが、今ではそんな人間の気持ちすらわかる。
「A50892号」
私は名前を呼ばれ、二人の人間に引き合わされた。
「今日から私たちの子供よ。あなたの名前は、今日からエイミー」
私は状況を察知し、両親となった人達にお辞儀をする。
「私の名前はエイミーです。よろしくお願いします」
その日から、私はエイミーと言う名で、人間の家へと引き取られていった。
それからというもの、両親は私を娘として愛してくれたし、私も両親に甘えた。
最初のうちは、何度か製造工場へ戻り、微調整というものをしたが、今ではすっかり両親の望む子供になっていると思う。
微調整というものは、両親の希望に沿った微調整である。
「頭が良すぎる。もう少し知能を落としてくれ」
「もう少し、背丈を高くして欲しい」
「目の色は、彼女と同じブルーがいいね」
「手が大きいから小さくして欲しい」
そんな微調整を繰り返し、私は完成された。でも、私はどんな姿だって構わないのだ。私だけを愛してくれる人が見つかったのだから。
だけど私たちの運命は、それなりに決まっている。
飽きられて捨てられ、スクラップになる者。捨てられたが逃げ出して、少し生きながらえる者。そして、愛する家族の死を見つめた後、役目を終えてスクラップになる者。
どんな最後も同じ。私たちもまた、最後には死ぬ。
私の両親もまた、死んでいった。あまりのあっけなさに、私は理解出来ずにいたが、それが悲しみというものだと、後で知った。
その時、生命とはなんと美しいものなのかと知ったのだ。
それが永遠ならば、そんなに愛しく輝かない。
人間は勝手でずるい生き物だけど、少なくとも私は幸せに生き、幸せを知った。
そして今日、私は両親の死を見届け、自らも死ぬ。
私はアンドロイドだが、私の命も輝いていると信じたい――。