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神話の始まり  作者: 一宮 沙耶


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8話 葬儀

私は、大学の時にITはだいぶ研究したこともあり、研究所のファイルサーバーに入り込む。

光莉が行っていた研究の内容を初めて目にすることができた。

この世の中から飢餓をなくす研究だということを知る。


私は、これまでそんなこと考えたことがなかった。

こんな理想を持って生きている人がいるんだと、改めて光莉の偉大さを実感する。

私なんて、世界の飢餓なんて自分に関係ないと気に止めることもなかった。


飢餓には、内紛、輸送路の未確立等、いろいろ原因があると光莉はメールに書いていた。

その中でも、農作物のテクノロジーに着目したとある。

アフリカで、雨が降らない地域でも育つトウモロコシを生み出そうと。


そして、まだ課題はあるものの、解決に向けて一筋の光を見つけたという。

種を1週間、海水に浸しておけば、その後、水がなくても育つ種を遺伝子工学で作れる。

海水はアフリカでもいっぱいあるから、実現性は高いと。


そんな壮大なことを考えて前に進んでいた光莉はすごい。

私なんて、人見知りをして1人の殻に閉じこもっていただけなのに。

そして、いつも光莉の笑顔に支えられてきた。


もしかしたら、この研究成果を誰かが狙っていたのかもしれない。

このデータにアクセスした人達の履歴を調べる。

そのデータを匿名で警察に送信しておいた。


部屋の外はすっかり暗くなり、光莉がいないこの世の中はすっかり色褪せていた。

夜空を見ていると、一筋の流れ星が通っていく。光莉の涙だったのかもしれない。

この若さで人生が終わっちゃうなんて無念だと思う。

しかも、ゴミに塗れて殺されるなんて。


私は着替えて、光莉のご葬儀に参加した。

今夜は晴れたけど、最近は、雨の日が多く、地面には多くの水たまりが残っている。

光莉の涙が溢れているよう。真っ暗で、泥だらけの涙。


振り返ってみると、私って、ひどい人。

光莉が女性しか好きになれないことを知りながら、知らないふりをして頼っていた。

光莉が生きていれば、女性どうしで結婚とかしていたのかしら。想像がつかない。


多分、一緒に暮らすことはできても、結婚していると周りの人には言える自信はない。

親も子供ができない夫婦って、認めてくれないと思う。

でも、光莉とはずっと一緒にいたかった。

そんな外見のことなんて気にすることは間違っている。


どうすれば、光莉の気持ちに応えられたのかしら。今の私には、分からない。

本当に、ごめんなさい。来世で、幸せになって。

そう言って、ご焼香をして、帰ろうとした時、知らない男性から声をかけられた。


「あの、三崎さんですか?」


私より少し年下に見える爽やかな男性が目の前にいる。

葬儀場なので、光莉と関係のある方だと思う。


「ええ。」

「私は、光莉の弟です。佐伯 悟といいます。姉が、三崎さんのこと、一番信頼できる親友だと、いつも話してました。今日は、来ていただき、本当にありがとうございます。最近は、週刊誌も、姉は全く悪くないと報道してくれて、うちへの攻撃はなくなったし、姉も安心していると思います。」


光莉の弟さんなんだ。光莉と同様に、誠実な雰囲気が漂う。


「弟さんなんですね。光莉がいなくなったって、まだ信じられない。この前まで、笑って、一緒に話ししていたのに。もし、よければ、別の日に、光莉のこと、もっと聞かせてもらっていいですか?」

「もちろんです。じゃあ、連絡先、この紙に書いていただけますか? 今日は忙しいので、後日、ご連絡します。」

「そうですね。では、ご連絡、お待ちしています。」


ご葬儀に出て、光莉が本当にいなくなってしまったという現実から逃れられなくなった。

ホテルには自殺なんてしないと言ったけど、もう生きていくのが辛い。

これから何を希望に生きていけばいいの?


いろいろと調べていることが警察にも伝わり、危ないからやめなさいと注意もされた。

でも、光莉は私の大切な人だから、私は、光莉のことを知りたい。

光莉のことを更に調べ、恨みをはらすことを決めた。

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