1話 不幸な力
私の不幸は、初潮の時から始まった。
今でも、赤色を見ると、自分は不幸の運命の元にいると気が滅入ってしまうことが多い。
両親は他界していて、これが遺伝なのか聞くことができないまま大人になってしまった。
最初は曖昧だったけど、時間とともに確信に変わる。
手を触れると、相手の考えていることが分かる力が自分にはあるということを。
最初は、まだ健在だった母親から頼まれてスーパーでお肉を買っていた時のこと。
美味しそうなお肉をかごに入れようとすると、お店の人が別のパックを勧める。
私の手を別のパックに置き換える。
でも、その人は、勧めるのは、古くなって破棄する直前の肉だと話した。
失礼な人だと、何も買わずにその場を立ち去る。
でも、よく考えてみると、その店員は、ただ、別の方がお勧めだとしか言っていなかった。
口は閉じたままで、古くなって破棄する肉とは一言も言っていないことを思い出す。
何が起きたのか頭の中が整理できない。
話していない相手の声が聞こえるなんてことがあるのかしら。
時間が経つにつれて、それは人の手に触れた時だと気づいた。
そんな事が重なり、自分が持っている力を確信する。
他の人もそうかと思い、友達に、遠回しに聞いてみる。
そんな力を持っている人なんて誰もいなかった。
不幸、そう、この力があって良かったなんて思ったことは1回もない。
人間は醜い。誰もが、笑いながら、相手を騙し、憎み、おとしめようとする。
男性は、私が知っている限り、例外なく、女性を見て、犯した姿を思い浮かべている。
子供の頃、幼稚園の園庭を無邪気に走り回っていた頃は楽しかった。
今は、信頼できる人は誰もいない。
私の周りでは、いつも霧がかかり、何も見えない中でもがき、人間不信に陥る日々が続く。
ただ、もう一つ気づいたことがあった。
人によっては、頑丈な秘密の壁を作っている人がいる。
秘密にしようと強く決めている、そんな気持ちは読めない。
でも、ほとんどの人は、考えていることがバレるとは思っていない。
だから、考えたことが隠されずに、そのまま心の中で流れ、私に伝わってしまう。
邪悪な考えほど、伝わりやすい気がしている。
しかも、私の両親は交通事故で初潮の直後に亡くなってしまう。
その後、親戚に預けられる。育ててくれたことに感謝しているけど、実の娘とは違った。
お誕生日のケーキとか、いつも明らかな格差があることに気づいていた。
人との接点を絶った私の学生生活は、ずっと一人ぼっちだった。
それでも人と関わらないで生きていけない。
そして、人と関係を持つたびに、人の醜さ、悪意を知り、疲れてしまう。
結局、ただただ学校と家を行き来し、家では部屋に閉じこもる日々が続いた。
自分の部屋では、一人でアニメとか見ていた。
親戚の家族も、そちらの方が気が楽そうに見える。
もちろん、寂しい気持ちはある。
でも、それよりも、周りから嫌なことを言われて落ち込むよりはまし。
朝ごはんを食べているときに、親戚のおばさんがTVをつける。
戦争で多くの人がなくなり、貧困国では飢餓が蔓延しているというニュースが流れた。
痩せほそり、飢餓で死んでいく子供達の姿が映る。
でも、そんなことは私には関係がない。
そんな遠い世界のことなんて、私は何もできないし、その国の人が解決すればいい。
そんなことより、自分の苦悩を乗り切ることで必死だった。
男性も、そんな、暗い私になんて声をかけることもない。
私は綺麗なんだから、積極的になって彼氏を作った方がいいと親戚のおばさんは言う。
でも、手を握ると、早くこの家から出ていけばいいのにと不満が募る女性が目の前にいる。
私は、高校に入学したときに、両親が住んでいた家に戻り、一人暮らしを始める。
親が残した資産は、信託に入り、私のために大事に保管されている。
その意味では、私に早く出て行って欲しいとはいえ、親戚には守られていて感謝している。
家に戻ると、時々掃除には来ていたけど、部屋は埃に覆われ、庭は荒れていた。
掃除が一通り終わり、キッチンに座ると、笑顔の両親と一緒に夕食を食べた記憶が蘇る。
ふと気がつくと、今は、私だけがテーブルに座り、カップラーメンの蓋を開ける。
一軒家と広くなった分、寂しさは前に増して大きくなった。




