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神話の始まり  作者: 一宮 沙耶


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12話 指輪

政府が用意した施設で暮らし始めてから半年が過ぎた。

私は何度も取り調べのようなことを受けたけど、どうも何も知らないと思ったらしい。

私の軟禁は解かれ、自宅に戻れた。


でも、監視は続いているだろうから、いきなり行動せずに静かにしておく。

さらに半年が過ぎた。そろそろいいと思う。


私は、いつもの散歩のように吉祥寺のショッピング街を散歩する。

そして、ルーペを持って駅ビルのアトレのトイレに入った。

さすがに、こんな所に監視カメラなんてないと思う。

ルーペで、指輪の宝石の裏を見てみた。


やっぱりあった。「実家の英会話CD」という文字が書かれてある。

CDの中にみんなが狙っている書類があるのだと思う。

私は会ったことがない光莉の両親のご実家を訪問することにした。


ご両親はあざみ野にお住まいだった。

急に親友だったんですと見たこともない女性が現れたらビックリすると思う。

光莉が生きている間に会っておけばよかった。

でも、光莉はプライベートを隠していたから、会えるはずもない。


今日も、刑事に尾行されているはず。

光莉のご両親の住所が分からず、刑事に調べてもらったから。

でも、光莉のご両親に会いに行くのは不思議ではない。

私は、気付くとご両親の家の前に立っていた。


ドアホンを押すと、お母さまかしら60歳ぐらいの女性が出てくる。

道路から少し階段を上った所に玄関があった。

そこには気品があるけど、やつれた女性がいた。


「どなた?」

「光莉さんと仲良くしていた者です。」

「もしかして三崎さん?」

「ご存じだったのですか?」

「ええ、親友がいると光莉から聞いていました。どうぞ、お入りください。でも、よく、ここが分かったわね。」

「光莉さんが、今度、一緒に行こうと話していましたから。」


つい、嘘をついてしまう。光莉は自分のことはずっと秘密にしてきた。


「でも、光莉は、この家で育ったんですね。それよりも、今回は、本当になんと言っていいか。」

「まあいいから、お入りなさい。主人も家にいますし。」

「では、お邪魔させていただきます。」


まずは居間の横にある和室に置かれた光莉の仏壇にお祈りを捧げた。

ゆっくりお休みなさい。

あなたの無念は私が果たすからと伝えて。


家は、昭和の頃に建てられたごく普通の木造一軒家。

私が毎日暮らす両親の家もこんな感じだから違和感はない。

リビングには4人が座れる食卓と、テレビを囲む大きなソファーがある。


いきなりだったから何もないと言われ、お茶とおせんべいが出される。

お父様も、優しそうな笑顔に溢れていた。

お母様の顔は、よくみると光莉に似ている所もある。


私は、光莉と出会い、どれだけ楽しい時間を過ごしてきたのかをご両親に語った。

久しぶりに光莉の話しをしたからか、怒涛のように話し続けてしまう。

ご両親は暖かく見守ってくれてた。

久しぶりに聞く娘がどんな暮らしをしていたか懐かしむように。


そして、お母様は私を、2階にある光莉の部屋に通してくれた。

なんでも持って行っていいとだけ言って、1階に降りていく。


私は、書棚を見ると、たしかに英会話の本があった。

その本にはCDが2枚入っている。会話編というラベルが貼ってある。

これだと思う。私はそのCDをバックに入れる。


そして、光莉の学生の頃の卒業アルバムとかを見ていた。

大学は帝都大学の農学部。日本で一番権威のある農学部で素晴らしい。

さすが、世界が狙う研究で成果を出してきた人。


いつも、光莉は輝いている。

そんな人が私のそばにずっといてくれた。

そして、あっという間に、私の元から消えてしまった。


また泣いてしまった。だめ。

光莉の無念を引き継ぐのだから。

光莉の写真をそばに置いておきたかったから、そのアルバムも鞄に入れた。


1時間ぐらい経ったのかしら。

私は光莉の部屋をでて1階にいるご両親に挨拶をする。


「今日は、突然、ご訪問をさせていただき、ご迷惑をおかけしました。光莉にはきちんと挨拶ができて良かったです。私の海外出張中に亡くなったので。では、失礼します。」

「三崎さん。私は、長い間、中国で働いていたから、今でも中国との関係は続いているんだ。」


何を言い出したのか、よくわからなかった。


「中国政府から、光莉が研究していた書類を引き渡してもらいたいと要請を受けたんだ。光莉も、自分の研究成果が世の中に出た方が嬉しいだろう。鞄の中に、それがあるんだね。渡してもらいたい。親には、それだけの権利はあるだろう。」

「何のことでしょうか? そんなものはなかったですけど。」

「しらばくれないでくれ。三崎さんも、光莉に会うためといいながら、その情報を盗みに、この家に来たんだろう。私たちも探したんだけど、見つからなかった。三崎さんなら、何か聞いていたんじゃないかと思っていたんだ。さあ、出してくれ。」


私は、あまりに光莉の願いを無視するご両親に怒りを覚えた。

こんな親に育てられたんだ。

でも、光莉はこんなご両親でも、素直に育っている。崇高な夢に向かって進んでいた。


私は、玄関に向かって走って逃げようとした。

でも、2人に押さえつけられてしまう。

ご高齢だと思ったけど、思ったより力は強い。


お父様は私の鞄から卒業アルバムを引きはがした。

アルバムに気が注がれているすきを狙って私は外に逃げる。

CDは鞄のポケットにいれてチャックをしていたから気付かれずに済んだみたい。


私にとっては卒業アルバムもとっても大切なもの。

でも、光莉の願いをかなえる方が重要だもの。


私の部屋に戻ると、ご両親がここに押し寄せるんじゃないかと心配していた。

でも数日後、ニュースで、ご両親が自宅で遺体で発見されたと報道される。

中国に提示したけど、何もなく殺されたんだと思う。


もう、私の周りにはどこにも安全がないことを理解した。

何も知らないとしらを通せないと思う。

どこかに身を隠さないと。


ご両親は私の住所を知らなかったようだから、中国政府もまだ知らないはず。

でも、アメリカ政府は知っているし、日本政府は確実に知っている。


その間に、別の人がこの研究を実現できれば、その時のこと。

私の目的は、この情報を独り占めすることではなく、多くの困っている人に届けること。

また、そんなに簡単に実現することはできそうもないし。

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