プロローグ
「先生、この本読んで。どんなお話しなの?」
幼稚園の子供たちが私の前に駆け寄る。
特に私の足元で質問するこの子は、いつも、とても可愛い。
しっぽと耳をピンと立て、この本に興味があると目が輝いている。
私達の体は、多種多様な形で、それぞれの個性がはじけている。
この子には、私にはないしっぽがあって、可愛らしさを醸し出す。
太陽から大量の光が注ぎ、気温が70度を超える前は、人間は同じ形だったらしい。
本当かどうかは誰にも分からない。
外に目を向けると空気が揺らぎ、熱風が吹き付ける。
この時間は、眩しくて、外を見続けることができない。
大きな屋根がある板の間の中央でみんなが体を寄せ合う。
お昼には水分はほとんどが蒸発し、夜中に豪雨となる極端な気候。
でも、水路は整備され、農作物を育てる大地が広がる。
黄金のとうもろこしが見渡す限り育っていて、今年も豊作のようで嬉しい。
「これは、私たちに豊かな生活を持ってきてくれた女神様の神話なの。」
「面白そう。読んで。」
「そうね。じゃ、今日はこのお話しにしましょう。みんな集まって。」
「は〜い。」
この本を見つけたのね。これは、2000年以上前、日本という神話の国で起きたお話し。
表紙には、農作物の収穫をしている人々を誘導しようと、女神が指で遠くを指す。
朝日に女神の頬が照らされ、その指の先には砂漠が広がる。
その頃の地球は緑豊かだったらしい。
そんな世界が本当にあったのかは分からない。
少なくとも、今は、地球のほとんどが砂漠で覆われていると聞く。
神話では、当時の農作物は砂漠では育たなかったという。
砂漠が急速に広がり、飢餓も全世界に広がっていった。
だけど、この女神が砂漠でも育つ農作物を全世界に展開する。
トウモロコシから、穀物、野菜、フルーツへと。
そして、この世界から飢餓を根絶する。
この女神のおかげで私達は今豊かに過ごしているというお話し。
神話には遠く離れていても話せる機械や空飛ぶ乗り物も出てくる。
そんなものは空想の産物だと思う。ありえない。
ただ、農作物の交配で品種改良することは、私達もやっている。
だから、私は、この神話は実話をもとに書かれたものだと信じている。
しかも、この世界を豊かにしたいという、この女神の揺るぎない信念を。




