02 想定外
当作は、ずいぶんな大作になってしまいました。
ですがこれは、完全に想定外の事態となります。
2013年当時、自分は『3rd Bout ~We Are Atomic Girls~』以降の内容に着手してからぼんやりと最終回の構想を練っておりましたが、その構想は途中で完全に崩落してしまったのです。
当時の自分の構想は、以下の通りとなります。
・長期欠場から復帰したユーリがジジを倒して、王者になる。
・瓜子はコスプレ三銃士とひとりずつ対戦していく。
・瓜子とメイが対戦して、仲良くなる。
・格闘技とロックの合同イベントに参加する。
・パラス・アテナが乗っ取られて、《カノン A.G》の騒乱が起きる。
・その騒乱を終えた後、《アトミック・ガールズ》は衰退してしまう。
・この現状を打破するために、赤星道場に協力を仰いで、誰でも参加できる無差別級トーナメントを開催する。
・ユーリが『アクセル・ロード』に招聘されて、北米に旅立つ。
以上です。
当時の自分の構想において、当作の最終回はユーリが北米に旅立って瓜子とお別れするという、ビター・エンドでありました。
その後のユーリは北米で活躍し、瓜子はひとりで日本で頑張るという、そんな結末であったのです。
その構想がいつ崩れたのかは、記憶も定かではありません。
ただはっきりしているのは、各キャラクターの成長および交流というものが、想定以上であったということです。
瓜子はこんなに強くなる予定ではありませんでした。
また、余所の女子選手たちとこんなに交流が深まる予定ではありませんでした。
それらの2点が、初期構想を打ち砕いたものと思われます。
端的に言って、そんなさっくり終わらせてしまっては尻切れトンボになってしまうという状況に至ったのです。
なおかつ自分も、もっともっと瓜子たちの活躍を描きたいという心境に至りました。
それでまずは、赤星道場との共催であるトーナメント戦を4対4の対抗戦というものに変更して、描く予定のなかった『アクセル・ロード』もみっちり描ききることにいたしました。
その『アクセル・ロード』でユーリが重傷を負ったのも、想定外といえば想定外でありました。
自然の成り行きと申しますか、物語の力学と申しますか、心のおもむくままに筆を走らせた結果でございます。
そうしてユーリが長期欠場に追い込まれたことで、当作はまた延長を余儀なくされました。
ユーリが奇跡の復活を遂げたのち、すぐさまベリーニャと再戦してジ・エンドでは、やっぱり収まりがつかなくなっていたのです。
そしてその頃には、瓜子とメイの関係もきわめて込み入っておりました。
当初は瓜子とメイの三度目の対決などは構想になかったのですが、こうまで関係が深まったからには再戦させざるを得ないという状況に至ってしまったのです。
それで本編における瓜子の最後の対戦相手はメイに決定されたわけですが、それを決めたのはそこそこ近年になってからだと思われます。
ともあれ、ユーリとベリーニャ、瓜子とメイの再戦というものを最終回に設定したのちには、その舞台を整えるための助走が必要になりました。
そこで登場したのが、《ビギニング》です。
この《ビギニング》も、完全に想定外の事態でありました。『アクセル・ロード』のエピソードを執筆していた時代には、シンガポールの選手たちを再登場させることなど微塵も考えていなかったのです。
ということで。
もしもユーリが北米に旅立つところで完結させていたならば、『18th Bout ~Intense summe Ⅱ~』で終わっていたということになります。
体感としては、初期構想の倍から3倍ぐらいの分量に膨れあがったように思います。
自分はそれだけ、楽しい時間を長々と過ごすことができました。
思わぬ成長と交流を実現してくれた瓜子たちには、感謝の気持ちでいっぱいでございます。