闇に芽生えたわずかな光
交渉は核心へ・・・
やはり、一筋縄ではいかない。
レナード卿は、ケインからの合図 (「焦らず、対話継続を」)を受け、穏やかに答えた。
「ハキム殿の懸念は、もっともだ。我々も、性急な変化を望んでいるわけではない。これは、あくまで未来に向けた『対話』の始まりだと考えていただきたい。見返りは、先ほども申し上げた通り、両国の安定と、長期的な共存共栄です。不安定な隣国は、グランセリオにとっても望ましいことではないからな。まずは、貴殿のような見識ある方々に、我々の考えを知っていただき、内密にでも、この提案についてご検討いただければ、それで十分だ」
レナード卿は、決定的な言質を与えることなく、ボールを相手に預ける形で締めくくった。
ハキムは、しばらくの間、値踏みするように二人を見つめていたが、やがて重々しく頷いた。
「……よかろう。今日の話、そしてこの資料 (レポートの要約)は、私一人の胸に収めておこう。そして、少し時間をかけて考えさせていただく。ただし、今日のこの会談は、他言無用だ。もし、この話が保守派の耳にでも入れば、私だけでなく、貴殿らの身も危うくなるだろうからな」
そう言い残し、ハキムは足早に部屋を後にした。
グランセリオへの帰路、ケインとレナード卿は、最初の接触の手応えについて話し合った。
「ハキム殿の関心を引くことには成功しましたが、彼の警戒心は依然として強い。彼一人を動かせたとしても、サルメディア全体を変えるには、まだまだ道は遠いでしょうな」
レナード卿は慎重な見方を示した。
「ええ。しかし、対話の扉は、確かに開かれました。それに、今日の交渉で、僕のスキルが外交の場でも有効な武器になることが証明できたと思います。相手の心理を読み取り、最適なアプローチを探る……これは、まさにマーケティングそのものです」
ケインは、困難な任務の中に、確かな手応えと、自身の役割の重要性を感じていた。
交渉チームは、ハキムからの次の反応を慎重に待ちつつ、他の改革派候補へのアプローチ戦略、保守派の動向監視、そして、もしサルメディア側が対話に応じた場合に提示できる、より具体的な協力案 (技術支援パッケージ、投資ファンド設立構想など)の準備を、水面下で着々と進めていくことになった。
ケインの異世界での物語は、ついに国家間の複雑な外交交渉という、未知の領域へと本格的に足を踏み入れた。
彼の持つ「見える化」スキルとマーケティング的思考は、この難局をどう切り開いていくのだろうか。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。
見える化スキル、異世界外交でも大活躍でしたね〜
明日も19時頃に更新します。
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まだまだ続けたいので、頑張ります!




