奴隷制度に挑む決意と二人の絆
国王の密命、危険な使命。
王宮へ呼び出された日の夜、灯火亭の閉店後、ケインはリサにだけ、国王から受けた依頼の内容を打ち明けた。静まり返った店内に、ケインの言葉が一つ一つ落ちていく。
「サルメディアの、奴隷制度の問題解決に、力を貸してほしい、と……国王陛下直々に頼まれたんだ」
予想外の言葉の重さに、リサは息を呑み、しばらく言葉を失った。彼女の脳裏には、以前ケインから聞いた、あの非人道的な奴隷市場の光景が蘇っていた。
「そ、そんな……危険すぎます!」
リサの声は震えていた。
「あの国に、また行くことになるかもしれないんでしょう? しかも、国の根幹に関わるような、そんなデリケートな問題に首を突っ込んだら……ケインさんの身に、何かあったら……私は……!」
彼女の瞳には、ケインの身を案じる深い不安の色が浮かんでいた。愛する人が、再び危険な場所へ、しかも今度は国家間の問題という、より大きな渦の中に飛び込もうとしているのだ。心配しないはずがない。
ケインは、そんなリサの不安を痛いほど感じながら、彼女の手を優しく握った。
「心配かけて、本当にごめん。僕も、正直に言って怖い気持ちがないわけじゃない。でも……」
ケインは、サルメディアで見た奴隷たちの虚ろな瞳、人間がモノとして扱われる理不尽さ、そして自分が感じた強い憤りを思い出した。
「でも、あの光景を、あの現実を知ってしまった以上、見て見ぬふりはできないんだ。それに、国王陛下や王女殿下は、僕の持つ知識や視点が、何かを変えるきっかけになるかもしれない、と信じて託してくれた。僕にできることがあるのなら、挑戦してみたい」
ケインの瞳には、恐怖を乗り越えた、静かだが揺るぎない決意が宿っていた。
リサは、ケインのその瞳を見つめ返し、彼の覚悟を悟った。不安が消えたわけではない。しかし、彼女はこの人を信じている。彼が正しいと信じる道を進むことを、全力で支えたいと思った。
「……わかりました」
リサは、涙をぐっと堪え、ケインの手を握り返した。
「あなたがやると決めたことなら、私は全力であなたを支えます。どんなことがあっても、私はあなたの味方です。でも、約束してください。絶対に、絶対に無理はしないで。そして、必ず私のところに帰ってきてくださいね」
その言葉は、ケインにとって何よりの力となった。リサという存在が、彼の心を支える最大の錨であることを、改めて強く感じた。二人の絆は、この新たな試練を前に、また一つ深まったのだった。
ケインは、どうやって国を変えるのか!?
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