奴隷市場で見た、この世界の暗部
エリアナさんからの依頼で
現地調査に旅立つケイン。
灼熱の太陽が照りつける砂漠を越え、ケインがたどり着いたサルメディアの首都、アル・カザールは、まさに混沌としたエネルギーに満ちた交易都市だった。
様々な人種が行き交い、異国の言葉が飛び交い、スパイスや家畜の匂いが混じり合う。活気あふれる市場には、見たこともないような商品が溢れていた。
しかし、その華やかな賑わいのすぐ隣には、厳しい身分差と貧困、そしてこの国の暗部が存在していた。
ケインは、エリアナから与えられた情報を元に調査を進める傍ら、この国の実態を知るために、悪名高い「奴隷市場」へと足を踏み入れた。そこは、ケインがこれまでの人生で経験したどんな場所とも異質な、人間の尊厳が完全に踏みにじられる空間だった。
広場には、様々な年齢、人種の男女が、家畜のように檻に入れられたり、鎖で繋がれたりして、「商品」として並べられている。買い手である豪商や貴族たちが、品定めするように彼らを眺め、時には歯を調べたり、筋肉に触れたりしている。
一人一人には、「評価シート」なるものが付けられており、そこには年齢、体力、特技、スキルがあればそれも、そして容姿などが記され、それに基づいて値段が決められていくのだという。中には、「売れる奴隷」を効率的に育てるための育成施設まで存在するという話も耳にした。
「こいつは体力A評価だ、鉱山労働に最適だな」
「この娘は容姿が良い、屋敷のメイドか、あるいは……高く売れるぞ」
飛び交う会話は、ケインにとって吐き気を催すものばかりだった。
ここでは、人間は完全に「モノ」として扱われ、その価値は能力や見た目、そして買い手の都合によって一方的に決められる。違法ではないどころか、この国の経済を支える基盤として公に認められているという事実に、ケインは愕然とし、激しい嫌悪感を覚えた。
(なんだ、この国は! これが、この世界の現実の一部なのか……?)
ケインは数週間、サルメディアに滞在し、調査を進めながら、この国の歪んだ価値観を目の当たりにし続けた。それは、彼の心に深い衝撃と、自身の持つ常識がいかに特殊であったかを痛感させる経験となった。グランセリオにもスキル至上主義という差別はある。
しかし、ここまであからさまに人間を「商品」として扱うシステムは存在しない。
リサのいる、あの温かい灯火亭のある日常が、いかに尊く、守られるべきものであるかを、彼は心の底から再認識した。
そして同時に、強い葛藤がケインの中で大きくなっていった。
自分は、奴隷制度など存在しない、人間の自由と尊厳が(少なくとも建前上は)保障された世界で生きてきた。その「当たり前」を、リサは知らない。
この根本的な価値観の違いを隠したまま、彼女と愛を育むことは、果たして誠実なのだろうか? 彼女への想いが深まれば深まるほど、その秘密は重く、苦しいものになっていく。
(帰ったら話そう。俺が何者なのか、どこから来たのか。怖がられるかもしれない。拒絶されるかもしれない。それでも、リサには、本当のことを伝えなければならない)
サルメディアの灼熱の空の下で、ケインは固く決意した。
同じ国に生まれ、同じ国で暮らしていても
価値観の不一致は多いですからね・・・
平和で安全な国に生きていること、感謝です。
明日も19時に、よろしくお願いします。
※誤字脱字修正しました。




