丘の上で交わした未来への約束
見晴らしの丘にやってきたケインとリサ。
丘の頂上に着くと、そこには息をのむような絶景が広がっていた。眼下には活気あふれる街並みが広がり、遠くには雄大な山々が連なっている。心地よい風が吹き抜ける芝生の上にシートを広げ、リサが腕によりをかけて作ったお弁当を広げた。
「うわあ、すごい! 全部美味しそうだ!」
ケインが感嘆の声を上げる。彩り豊かなサンドイッチ、特製ソースがかかったミニハンバーグ、新鮮な野菜のサラダ、そしてケインが大好きな卵焼きもたっぷり入っている。
「ケインさん、いつもお店のために頑張ってくれているから、今日は私からのささやかなお礼です」
リサは少しはにかみながら言った。 青空の下、美しい景色を眺めながら、隣にいる愛しい人と美味しい食事を共にする。それは、ケインにとって、これまでの人生で経験したことのない、満ち足りた、幸せな時間だった。
食事が終わり、二人で食後のハーブティーを飲んでいると、ケインが少し改まった様子で、リサに小さな包みを差し出した。
「リサさん、これ、よかったら受け取ってください」
「え……私に?」
リサが驚きながら包みを開けると、中から現れたのは、繊細な細工が施された銀色の髪飾りだった。よく見ると、それは灯火亭のシンボルである「灯り」をモチーフにしたデザインになっている。
「これは……!」
「ガロンさんに、こっそり頼んで作ってもらったんです。いつもお店と、そして僕のことを明るく照らしてくれるリサさんに、感謝の気持ちを込めて」
ケインの言葉に、リサの頬がぽっと赤く染まった。彼女は、震える手で髪飾りを受け取ると、宝物のように大切そうに胸に抱きしめた。
「ありがとう……ございます! すごく、すごく嬉しい!」
早速、ケインに手伝ってもらいながら、その髪飾りを髪につけてみる。銀の灯りが、彼女の栗色の髪によく映えていた。
髪飾りをつけたリサの嬉しそうな横顔を見ながら、ケインは、このかけがえのない笑顔をずっと守っていきたいと、心の底から思った。二人はしばらく、並んで景色を眺めていた。
心地よい沈黙の後、リサがぽつりと呟いた。
「いつか……お店がもっともっと落ち着いたら、こんな風に、二人でゆっくり過ごせる時間がもっと増えるといいですね」
「ええ、そうですね」
ケインも頷く。
「いつか、街から少し離れたところに、小さな家を借りて、庭でハーブをたくさん育てて、それを料理に使う、なんていうのもいいかもしれませんね」
「まあ、素敵! ケインさんと一緒なら、どんな夢も叶えられそうな気がします」
リサが屈託なく笑う。その笑顔を見ていると、ケインの胸の中にあった、転生者としての孤独や、未来への漠然とした不安が、温かい光に溶かされていくような気がした。
(そうだ……俺はこの世界で、リサさんと生きていきたい。そのためなら、どんな困難も乗り越えてみせる)
ケインは、内心で強く誓った。いつか、自分の秘密を彼女に打ち明けなければならない日が来るかもしれない。その時、彼女を悲しませないためにも、自分はもっと強く、そして何よりも誠実でなければならない、と。
夕暮れの優しい光が丘を包み始める頃、二人は手をつないで、ゆっくりと丘を下り始めた。
行きの時よりも、握られた手の温もりは、より確かに、そして愛おしく感じられた。言葉は少なくとも、二人の間には、確かな愛情と信頼が満ちていた。
街から少し離れたところに
小さな家を借りて
庭でハーブをたくさん育てて
それを料理に使う。
願わくば、愛する人とーー
昔からの夢を盛り込んでみました。
明日も19時に。新しい章になります。
どうぞよろしくお願いいたします。




