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孤独な書店主、ティナ・ソルノとの出会い

いざ、識字率1%の国へ!


ケインはリサやガロン、そしてエリアナに事情を話し、しばらくグランセリオを離れてラゼルシアへ行くことを告げた。


リサは寂しさを隠せない様子だったが、

「ケインさんが決めたことなら、応援します。でも、必ず帰ってきてくださいね」

と笑顔で送り出してくれた。


エリアナは、ラゼルシア国内での活動に必要な手配や情報提供を約束してくれた。



ケインは、手紙の住所を頼りに、ティナ・ソルノが営む「ソルノ書房」を探し当てた。ラゼルシアの首都は、グランセリオとはまた違う空気が流れていた。スキルと貴族が全て、というだけあって、街の中心部は壮麗だが、どこか閉塞感が漂う。


一方で、グランセリオではあまり見かけない魔法技術の応用も見られた。夜道を照らすのは、油のランプではなく、淡く神秘的な光を放つ魔石を使った街灯だ。貴族が乗る豪華な馬車には、離れた場所と話せるという『伝声盤』のような魔道具が取り付けられているのも見かけた。


ただし、それらの恩恵は明らかに一部の特権階級に限られているようだった。


ソルノ書房は、そんな首都の喧騒から少し離れた、忘れられたような街の外れに、ぽつんと建っていた。建物自体はしっかりしており、看板も(読める人は少ないだろうが)掲げられている。


店の中に入ると、ケインは少し驚いた。外観の寂しさとは裏腹に、店内は驚くほど整理整頓され、立派な木製の書棚には、様々な種類の本がぎっしりと並べられていた。床は磨き上げられ、清潔感に溢れている。


ただ一つ、決定的に欠けているものがあった。


それは、「客」の存在だった。広い店内に、人の気配は全くない。


「いらっしゃいませ」


カウンターの奥から、少し緊張した面持ちで現れたのは、手紙の主、ティナ・ソルノだった。年の頃は20代半ばだろうか。質素な服を着ているが、知的で、芯の強そうな瞳をしている。


「あなたが、ティナ・ソルノさんですね。グランセリオから来ました、ケイン・モリヴァンです」


「まあ! ケイン様! 本当に……本当に来 てくださったんですね!」


ティナは感極まったように声を詰まらせた。


「手紙、読みました。大変な状況で、素晴らしい夢をお持ちだと感銘を受けました」


「ありがとうございます。でも、現実はこの通りです。この店を開いてもうすぐ一年になりますが、本が売れたのは、ほんの数えるほど......。貴族の方が気まぐれに買っていかれるか、物好きな旅人が立ち寄るくらいで、街の人は、誰も来ません。『文字なんて読めないから、本なんて必要ない』って……」


ティナは俯き、悔しそうに唇を噛んだ。


「でも、私は諦めたくないんです。物語の素晴らしさ、新しいことを知る喜び、それを、この国の人たちにも届けたい。文字が読めなくても、何か方法があるはずだって...…」


その強い眼差しに、ケインは改めて心を動かされた。


「やれるかもしれませんよ、ティナさん」


ケインは、スキルが示した突破口を確信し、力強く言った。


「文字が読めないなら、文字を使わない方法で本を届けましょう。常識にとらわれず、全く新しいやり方で」


常識にとらわれるな。

がんばって、ティナ!


明日19時に更新します。

どうぞよろしくお願いいたします!

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