新たな依頼! 識字率1%の国、ラゼルシアへ
グランセリオに平穏が訪れました。
ある日、ケインのもとに一通の手紙が届いた。差出人はエリアナ。
しかし、中に入っていたのは彼女からの短信ともう一通、見慣れない異国の装飾が施された封蝋で封じられた手紙だった。
エリアナの短信にはこうあった。
「ケイン様へ。
先日、隣国ラゼルシアの小さな書店の店主から、我が商会を通じてあなたに相談したいことがある、と切なる手紙が届きました。内容は同封の手紙に。
ラゼルシアは少々特殊な国ですが、もしご興味があれば、渡航の手配は喜んでお手伝いいたしますわ」
ケインは、興味を惹かれ、もう一通の封筒を開けた。
そこには、丁寧だが、どこか切実さが滲む女性の文字で、信じられないような依頼が書かれていた。
「はじめまして、ケイン・モリヴァン様。
私は隣国ラゼルシアで『ソルノ書房』という小さな書店を営んでおります、ティナ・ソルノと申します。
突然のお手紙、お許しください。
グランセリオでの貴方様の素晴らしいご活躍の噂は、遠くここラゼルシアにも届いております。
『マーケティング』という未知の力で、埋もれた価値を輝かせ、多くの人々を助けていらっしゃると。
もし、万が一にも可能性があるのなら、どうか、このラゼルシアに来ていただけないでしょうか?
そして、この国で『本を売る』手助けをしていただけないでしょうか?」
(ラゼルシアで、本を売る?)
ケインは眉をひそめた。
ラゼルシア王国。
グランセリオの隣国でありながら、交流はあまり盛んではない。伝え聞くところによれば、そこはグランセリオ以上にスキル至上主義が徹底され、特に「魔法スキル」を持つ貴族階級が絶対的な権力を持つ国だという。そして、最も特徴的なのは……。
「この国の識字率は、わずか1%ほどしかありません。
文字を読めるのは、貴族の方々、一部の富裕な商人、そして高位の魔法使いや神官など、ごく限られた人々だけです。
一般の庶民にとって、文字は縁のないもの、本は“高貴な者”だけが持つ“力の証”と見なされています」
(識字率1%!? そんな国で、本を売ってくれ、だと? 正気とは思えない依頼だ……)
ケインは手紙を読み進めた。
ティナ・ソルノは、この絶望的な状況下で、たった一人で民間書店を営んでいるという。
彼女の切なる願いは、ただ一つ。
「私は、この国の人たちに、“知ること”の喜び、物語の楽しさを届けたいのです。
文字が読めなくても、何か方法があるはずだと信じています。
どうか、ケイン様のお知恵をお貸しください」
手紙を読み終えたケインの脳内で、マーケティングスキルが鋭く反応した。
【依頼内容:ラゼルシア王国における書籍販売促進】
【市場環境:識字率極低 / 知識へのアクセス制限 / 貴族による情報統制】
【ターゲット(ティナの希望):一般庶民】
【潜在需要(知識・物語への欲求):レベルA(非常に高い)】
【最大の障害:文字の壁/文化的偏見/流通の壁】
【マーケティング的突破口:非文字媒体への転換(ビジュアル・体験・音声化)/既存概念の破壊】
【推奨アクション:依頼受諾、現地調査開始(成功期待値:中~高)】
(潜在需要レベルA! やはり、どんな環境でも、人は知識や物語を求めるものなのか……そして、突破口はある、か……)
ケインの心に、新たな挑戦への炎が灯った。
識字率1%の国で本を売る。
それは、灯火亭やガロン工房の再建とは、また次元の違う困難なミッションだろう。
しかし、もし成功すれば、それは単なるビジネスの成功ではなく、一つの国の文化や価値観にさえ影響を与えうる、大きな意味を持つ仕事になるかもしれない。
「……面白い。やってみる価値はありそうだ」
今日から、ラゼルシア編スタート!
ワクワクしてきました。
明日19時に更新します。
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




