寂れた「ガロン工房」と頑固な職人
どんなに良い物でも、
知られていなければ価値がない・・・
ケインが剣を手に驚いていると、店の奥の作業場から、ガラガラッという音と共に、一人の男が出てきた。筋骨隆々とした、いかにも鍛冶職人といった風貌の中年の男だ。しかし、その目の下には深いクマが刻まれ、表情には諦めにも似た疲労の色が濃くにじみ出ている。
「……客か? 悪いな、ちょうど今、もう店を閉めようと思ってたところなんだ。見ての通り、売れるようなもんは何もねぇよ」
男は、ケインを一瞥すると、自嘲気味にそう言った。
「ちょっと待ってください!」
ケインは思わず声を上げた。
「この剣……いえ、ここにある武器、どれも素晴らしい出来ですよ! 特にこの剣なんて、バランスが絶妙だ! これほどの腕がありながら、全然売れてないなんて……どう考えてもおかしいじゃないですか!」
ケインの熱のこもった言葉に、男――ガロンは、少し驚いたような顔をしたが、すぐに苦笑いを浮かべた。
「……ほう、あんた、少しは見る目があるらしいな。まあ、わかってるさ、自分の作ったもんが良いってことぐらいはな。だがな、坊主、いい武器を作る腕と、それをうまく売る腕ってのは、全く別もんなんだよ。残念ながら、オレには前者しかねぇ」
ガロンの声には、長年の苦労と諦観が滲んでいた。
「だったら!」
ケインは、迷わず一歩前に出た。
「僕が、後者をやります」
「……は?」
ガロンは怪訝な顔でケインを見た。
「僕はケイン。『マーケティング』っていうスキルを持っています。要は、あなたのような素晴らしい技術を持っているのに、それをうまく世の中に伝えられていない人の代わりに、その価値を広め、売れるようにするのが僕の仕事です。あなたは、これまで通り、黙って最高の武器を作ることに集中してください。売るのは、僕に任せてください!」
「マーケティング……? 聞いたこともねぇスキルだな。それに、あんたみたいな若造に何ができるってんだ」
「試してみる価値はあると思いませんか? このまま店を閉めてしまうよりは」
「……だが、コンサルタントだか何だか知らねぇが、雇う金なんざ、ウチには一銭もねぇぞ」
ガロンは疑いの目を向けた。
「お金は要りません」
ケインはきっぱりと言った。
「成功報酬で結構です。僕が関わったことで武器が売れたら、その売上の一部を少しだけください。それまでは無償です。あなたにリスクはありません」
「……成功報酬? ますます胡散臭ぇな。あんた、どうかしてるぜ」
ガロンは呆れたようにため息をついたが、その目には、ほんの少しだけ、興味の色が浮かんでいた。
「……まあ、それで良けりゃ、好きにやってみな。どうせ失うもんはもう何もねぇしな」
こうして、ケインにとって第二のクライアントとなる鍛冶職人、ガロンとのプロジェクトが、半信半疑の中でスタートした。
鍛冶職人のガロンさん登場です!
安く売ってしまうのは、もったいないぞ〜
明日も19時に更新します。
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




