スキル至上主義との対立の幕開け
「ハズレスキル」は、「宝物」かもしれない!
しかし、光が強まれば影も濃くなる。
ハズレスキル支援プロジェクトの活動が目立ち始め、ハズレスキルの価値が見直され始めると、それを快く思わない勢力からの反発もまた、顕在化し始めた。
「ケインとかいう男は、スキル至上主義という我が国の根幹を揺るがす危険人物だ!」
「ハズレはハズレらしく、分をわきまえるべきだ! 彼らが我々の仕事を奪うなど、あってはならん!」
特に、特定の専門スキルを持つギルド (例えば、高度な計算能力を独占してきた計理士ギルドなど)や、スキルによる身分秩序を重視する保守的な貴族や役人たちは、ハズレスキル支援プロジェクトの活動を公然と非難し、協力企業に圧力をかけたり、悪質な噂を流したりといった妨害工作を再び仕掛けてくるようになった。
ケインは、これらの抵抗を予測しつつも、その根強さに改めて社会変革の難しさを感じていた。しかし、彼はもう一人ではなかった。リサという最愛のパートナー、フィンやエミリーのように輝き始めた仲間たち、エリアナやレナード卿、ガロンといった強力な支援者、そして、希望を見出し始めた多くの「元ハズレスキル」保有者たち。彼らとの絆こそが、ケインの最大の力だった。
灯火亭は、時にハズレスキル支援プロジェクトの会合場所となり、リサはケインと相談しながら、新たなスキルを持つ見習いを店で受け入れることも始めていた。彼女は、ケインの目指す未来を、自身の夢の一部としても捉え始めていたのだ。
ハズレスキル支援プロジェクトは、個人の才能を開花させる段階から、社会全体の意識を変革し、スキル至上主義という巨大な壁に挑む、新たなステージへと進もうとしていた。
それは、ヴァルガス商会との戦いとはまた違う、より複雑で、根深い問題との戦いになるだろう。
しかし、ケインの胸には、揺るぎない確信があった。多様な才能が認められ、誰もがその人らしく輝ける社会こそが、このグランセリオを真に豊かにするのだと。彼は、仲間たちと共に、その未来を実現するための、次なる戦略を練り始めるのだった。
ケインが練り始めた「次なる戦略」。
それは、単に個々のハズレスキル保有者を支援するだけでなく、グランセリオ社会全体の「スキル」に対する価値観そのものに揺さぶりをかける、より大胆なものだった。
フィンやエミリーの成功は、そのための確かな布石となったが、社会の根深い偏見を変えるには、もっと大きなうねりを作り出す必要があった。
価値観を変えるのは、本当に難しい。
偏見という巨大な壁を超えろーー!!
明日も19時に更新します。
どうぞよろしくお願いいたします。