記憶の迷宮を整理せよ! ケイン式トレーニング開始
第2の才能発掘!
フィンに続き、新たな才能の原石、エミリーとの出会い。
ケインは、「ハズレスキル支援プロジェクト」が単なる理想論ではなく、現実に多くの人々の人生を変え、社会に新たな価値を生み出す力を持つことを、改めて強く確信した。 相談窓口の運営、スキルデータベースの構築と分析、協力パートナーの開拓、そして社会全体の意識を変えるための啓蒙活動……やるべきことは山積みだ。
しかし、ケインの心は、かつてないほどの情熱と使命感で満たされていた。
リサという最愛のパートナー、そして信頼できる仲間たちと共に、ケインは、グランセリオの片隅で埋もれていた「ハズレスキル」という名の才能を次々と発掘し、彼らが輝ける未来を創造するための、壮大なプロジェクトを、本格的に加速させていくのだった。
ケインの的確な指導と、灯火亭という温かい環境、そして何よりも自身の内に秘めた可能性への気づきによって、「絶対味覚」を持つフィンは目覚ましい成長を遂げた。今や彼は、灯火亭の味を支える重要な柱であると同時に、自信に満ちた一人の青年として、前向きに日々を送っていた。
その成功体験を、ケインは「グランセリオ・ポテンシャル・ディスカバリー・プロジェクト(ハズレスキル支援プロジェクト)」の次なるステップへと繋げた。彼は、フィンに続く第二の才能の原石として出会った、「過剰記憶」スキルを持つエミリーに対し、彼女の能力を制御し、最大限に活用するための独自のトレーニングプログラムを開始したのだ。
それは、ケインが元の世界で触れた情報科学の概念
――データベース理論に基づいた情報の「フォルダ分け」や「タグ付け」、優先度に応じた「階層化」――
を、エミリーが理解できるよう異世界風にアレンジして教えることから始まった。
さらに、瞑想を取り入れた訓練で、膨大な記憶情報と自身の感情と思考を切り離し、客観的にデータを扱う練習も重ねた。
最初は、情報の洪水に圧倒され、混乱することも多かったエミリーだが、ケインの忍耐強い指導と、彼女自身の必死の努力によって、徐々にその類稀なる記憶力と情報処理能力を、自らの意思でコントロールする術を身につけ始めた。
その才能の片鱗が示されたのは、エリアナ商会での「インターンシップ」でのことだった。エリアナは、ケインの依頼を受け、エミリーを商会の研究開発部門で、試験的にデータ分析のアシスタントとして受け入れた。
最初は、過去数年分の膨大な市場調査データの整理という、地味な作業を任されたエミリーだったが、彼女はそれを、人間業とは思えない速度と正確さで完了させただけでなく、そのデータの中から、これまで誰も気づかなかった、特定の商品の売上パターンと天候・季節要因との間に存在する微細な相関関係や、競合相手であるヴァルガス商会の残党と思われる組織の、非常に巧妙に隠された不審な資金の流れのパターンまでをも指摘してみせたのだ。
「……信じられない! この分析は、我が商会の熟練分析官チームが数週間かけても発見できなかったものよ!」
報告を受けたエリアナは、驚きを隠せなかった。エミリーの「過剰記憶」は、単なる記憶力ではなく、ビッグデータを処理し、洞察を得るための、まさに現代 (あるいは異世界)における最強の分析ツールとなり得ることを証明したのだ。
エリアナは即座にエミリーを「特別情報分析官」の試用期間とし、正式採用に向けて動き出した。自分の力が初めて社会に認められ、必要とされていることを実感したエミリーの表情からは、かつての不安げな翳りは消え、自信と意欲に満ちた輝きが放たれ始めていた。
誰に導いてもらうか?って
とてつもなく大切ですよね。
明日も19時に。
どうぞよろしくお願いいたします。