最初の成功事例! 絶対味覚の本領発揮
驚異の味覚判定!!
フィンは少しずつ自信を取り戻し始めた。
リサが作る料理の試食、仕入れた食材の品質チェック、ソースやドレッシングの味の微調整……彼の能力は、灯火亭の味を維持し、向上させる上で、なくてはならないものとなっていった。
彼のアドバイスによって完成した新メニューは、客から
「これまでにない洗練された味だ」
「複雑なのに、完璧なバランス!」
と絶賛された。
「俺の舌が、役に立ってる……?」
初めて自分の能力が人から認められ、感謝された経験。フィンは、厨房の片隅で、人知れず嬉し涙を流していた。彼の表情からは以前の陰りは消え、少しずつ明るさを取り戻し、他のスタッフたちとも打ち解けていくようになった。
アンナやレオンたちも、最初はフィンの能力に驚き、少し戸惑っていたが、彼の真面目な仕事ぶりと、時折見せる (味覚以外の話題での)少し天然な一面に触れるうちに、大切な仲間として自然に受け入れていった。
フィンの活躍は、ケインが思い描いていた「ハズレスキル支援プロジェクト」の、輝かしい最初の成功事例となった。スキルには優劣はなく、ただ特性が違うだけなのだ。その特性を正しく理解し、適切な場所で活かすことができれば、誰もが社会に貢献し、輝くことができる。ケインは、フィンの変化を目の当たりにし、その信念をさらに強くした。
(よし、この成功事例をまとめよう。そして、フィンに続く第二、第三の才能を発掘し、彼らが輝ける社会の仕組みを作るんだ!)
ケインは、フィンの物語を、具体的なデータと共に報告書としてまとめる準備を始めた。それは、グランセリオのスキル至上主義という厚い壁に、希望という名の楔を打ち込むための、次なる一歩となるだろう。ケインと仲間たちの、社会を変えるための挑戦は、確かな手応えと共に、本格的に始まろうとしていた。
ケインのサポートと、リサや仲間たちの温かい受け入れによって、「絶対味覚」スキルを持つ青年フィンは、灯火亭に欠かせない存在へと成長していた。彼の繊細かつ正確な味覚は、リサが生み出す料理の味を安定させ、時に驚くような新しい味の組み合わせを発見するきっかけを与えた。新メニュー開発のスピードと質は格段に向上し、店の評判はさらに高まった。
何よりの変化は、フィン自身だった。長年抱えていた劣等感と諦めから解放され、自分の能力に自信を持ち始めた彼の表情は、以前とは比べ物にならないほど明るく、生き生きとしていた。そのポジティブな変化は、アンナやレオンをはじめとする他のスタッフたちにも伝播し、灯火亭全体の雰囲気をより一層良くしていた。
スキルに優劣はない。
ただ特性が違うだけ。
みんな違って、みんないい。
明日も19時に〜