フィンの舌がもたらす革命
絶対味覚の持ち主は、
灯火亭に馴染むことができるのか!?
ケインはフィンを連れて、灯火亭へと向かった。事情を聞いていたリサは、緊張した面持ちのフィンを、温かい笑顔で迎え入れた。
「フィンさん、はじめまして。リサ・ソルノです。ケインさんから、あなたの素晴らしい能力について伺いました」
「素晴らしい、なんて……」
フィンは俯いたまま呟く。
「いいえ、本当に素晴らしい力ですわ」
リサは、料理人としての真剣な眼差しで言った。
「料理の世界では、ほんのわずかな味の違いが、全体の印象を大きく左右します。私は、常に最高の味を目指していますが、自分の舌だけでは限界を感じることもある。あなたのその、誰にも真似できない繊細な感覚……ぜひ、私の料理のために、貸していただけませんか? あなたの力があれば、きっと、もっとたくさんの人を笑顔にできる料理が作れるはずです」
リサの偽りのない、真摯な言葉。そして、ケインが作り上げた、温かく、誰もが互いを尊重し合う灯火亭の雰囲気。それらが、フィンの頑なに閉ざされていた心を、少しずつ溶かし始めていた。
フィンは、おそるおそる、「味覚アドバイザー兼品質チェッカー見習い」として、灯火亭で働くことになった。最初の数日は、やはり緊張と不安から、なかなか自分の意見を口に出せなかった。しかし、リサが開発中の新しいソースの試作品を味見した時、事件は起きた。
「あの……リサ、さん……」
フィンがおずおずと口を開く。
「このソース、とても美味しいですが……隠し味に使われているベリー系の果実、おそらく『ルビーベリー』ですね? その熟度が、ほんのわずかに足りない気がします。あと0.2日……いや、0.3日ほど完熟させてから使えば、酸味と甘みのバランスが完璧になり、全体の深みが格段に増すかと。あと、香り付けのハーブ『風薫草』が、ほんの少し……0.1グラムほど多いかもしれません。後味に、微かな苦味が残っています」
フィンの口から淀みなく紡ぎ出される、信じられないほど的確で、具体的な分析。厨房にいたリサ、ケイン、アンナ、レオン、全員が、唖然としてフィンを見つめた。
「……すごい……! フィンさん、どうしてそんなことまで分かるんですか!?」
リサが驚嘆の声を上げる。
「え……? いや、だって、そう……味がするから」
フィンは戸惑いながら答える。
リサは、半信半疑ながらも、フィンのアドバイス通りに、より完熟したルビーベリーを使い、風薫草の量を微調整してソースを作り直した。そして、その味の違いに、再び驚愕することになる。
「……本当だ! 味が、全然違う! 深みが増して、後味もすっきりしてる!」
フィンの「絶対味覚」は、リサの卓越した料理の腕前を、さらに上の次元へと引き上げる可能性を秘めていたのだ。
リサの料理とフィンの舌、
最強タッグ誕生ですーー!!
明日も19時に。
どうぞよろしくお願いいたします。