新たな挑戦の幕開け、支援プロジェクト始動
サルメディア編完結!
グランセリオでの日常を取り戻し、数日が過ぎたある日の夜。ケインは、リサ、そして信頼する仲間であるアンナ、レオン、ガロン、そして魔法通信で繋いだエリアナを集め、自身の胸に秘めていた新たな決意を語り始めた。
「皆さん、聞いてください。僕がサルメディアで経験したことから、改めて強く思ったことがあります」
ケインは、サルメディアの奴隷制度がいかに人の尊厳を奪い、可能性を閉ざしてしまうかを語り、そして続けた。
「そして、それは形こそ違えど、このグランセリオにも存在する問題だと思うんです。『ハズレスキル』、ただそれだけの理由で、本来持っているはずの価値を認められず、社会から疎外され、苦しんでいる人々がいる。僕は、その状況を変えたい」
ケインの瞳には、強い意志の光が宿っていた。
「彼らが持つ、ユニークなスキル、個性、才能……それらが正当に評価され、社会の中で輝けるような、そんな手助けをしたいんです。スキルだけで人の価値が決まる、この国の歪んだ価値観に、ささやかかもしれないけれど、一石を投じたい。それが、今の僕の、一番の目標です」
ケインの真剣な言葉に、皆、静かに耳を傾けていた。最初に口を開いたのはリサだった。
「ケインさんらしい。本当に、素晴らしい目標だと思います。人を見た目やスキルだけで判断しない、その優しい視点こそが、ケインさんの強さです。私にできることがあるなら、お店のことでも何でも、全力で協力させてください」
彼女は、ケインの手をそっと握り、力強く頷いた。
「面白そうじゃないですか! ハズレスキルって言われてる人たちの中にも、すごい才能が隠れてるかもしれないってことですよね? 私たちも手伝います!」
アンナが目を輝かせる。レオンも「力になれるなら」と、静かに、しかし確かな同意を示した。 ガロンは、腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。
「ふん、また厄介なことに首を突っ込む気か。まあ、お前さんがあのオンボロ工房を立て直したみてえに、世の中の役に立つってんなら、反対する理由はねえがな」
彼のぶっきらぼうな言葉の中にも、ケインへの信頼と期待が滲んでいた。そして、魔法通信の向こうのエリアナは、冷静な分析を加えてコメントした。
「『ハズレスキル』保有者の活用……それは、労働市場における新たな価値創造であり、非常に興味深い試みですわね。社会的な意義はもちろん、長期的に見れば、グランセリオの経済活性化にも繋がる可能性を秘めています。これは一種の『人的資源への投資』と言えるでしょう。クレスメント商会としても、このプロジェクトの意義を認め、可能な範囲での支援を前向きに検討いたしますわ」
仲間たちの温かく、力強い支持を得て、ケインの心は決まった。彼は、その場で「グランセリオ・ポテンシャル・ディスカバリー・プロジェクト (通称:ハズレスキル支援プロジェクト)」 (まだ仮称だが)の始動を宣言した。
国の歪んだ価値観・・・
正当な評価・・・
現代日本でも潰されないことを願います。