国家を救ったケイン、ついに帰還!
一人の人を通して、歴史は変わるーー
数ヶ月後。
サルメディアの改革が、多くの課題を抱えながらも、確かな一歩を踏み出したことを見届けたケインは、ついにグランセリオへの帰還を決意した。出発の日、サルメディア国王やハキムをはじめとする改革派のリーダーたちは、ケインに対し、最大限の感謝と敬意を表した。
「ケイン殿、貴殿がいなければ、この国の夜明けは永遠に来なかったかもしれん。貴殿は、我が国の歴史を変えた恩人だ。この御恩は、サルメディア国民一同、決して忘れぬ」
ケインは、表彰や爵位の授与といった申し出は全て丁重に固辞し、
「改革の主役は、あくまでサルメディアの皆さん自身です。私は、ほんの少しお手伝いをしたに過ぎません」
とだけ答えた。彼は、改革が今後も継続され、真に人々の生活が向上していくことを見守りたい、とだけ伝え、継続的なアドバイスを約束した。
最後に、ケインは一人、ナディールの墓を訪れた。静かに花を手向け、改革が始まったことを報告し、彼の志を継いでいくことを誓った。友の死という悲しみは消えない。しかし、その死を乗り越え、一つの大きな使命を果たしたという確かな達成感が、ケインの心を静かに満たしていた。
そして、ケインはグランセリオへと帰路についた。心身ともに削られた激務だったが、その経験は彼を大きく成長させ、新たな視点を与えてくれた。彼の心は、すでに次なる目標――グランセリオに存在する「ハズレスキル」を持つ人々が、その個性的な力で輝ける社会を作ること――へと向かっていた。サルメディアで得た教訓と、社会を変えることへの確信を胸に、ケインは愛するリサの待つ場所へと、希望と共に翼を広げるのだった。
サルメディアでの外交という、心身ともに削られるような激務を終えたケインが、数ヶ月ぶりに「灯火亭」の温かい木の扉を開けた時、彼は心の底から「帰ってきた」という安堵感に包まれた。
「「「ケインさん!!!」」」
彼の姿を認めるや否や、アンナ、レオン、そして他のスタッフたちが、満面の笑顔で駆け寄ってくる。厨房からはガロンの野太い「おかえり!」という声が響き、そしてカウンターの向こうから、瞳を潤ませたリサが、少しよろめきながらも、ケインの元へと歩み寄ってきた。
「おかえりなさい、ケインさん! 本当に、無事で……良かった!」
リサは、ケインの胸に顔をうずめ、安堵の涙を流した。ケインも、彼女の温もりと、仲間たちの変わらない笑顔に、サルメディアでの過酷な日々の疲れが溶けていくのを感じた。ここが、彼の帰る場所なのだ。
ケインが不在の間も、「灯火亭」はリサを中心に、素晴らしいチームワークで運営されていた。売上は安定し、新しい常連客も増え、店には常に活気があふれている。リサは、ケインが驚くほど経営者として成長しており、自信に満ちた表情で店を切り盛りしていた。
一方、リサもまた、ケインが国家間の難しい問題を乗り越えて帰還したことで、彼の瞳の奥に宿る深みと、どこか以前よりも増した落ち着きを感じ取り、その存在の大きさを改めて実感していた。離れていた時間は、二人の絆をより成熟させ、穏やかで、しかし確かなものへと変えていた。
ずっと待ってる方も大変ですよね(汗)
灯火亭メンバーが出てくるとホッとするなぁ〜
明日19時に更新します。
よろしくお願いしますm(_ _)m