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燃える怒りと深い絶望

ケイン流・プロパガンダ崩壊作戦が動き出すが・・・


そんな張り詰めた日々の中、ある朝、ケインの元にエリアナから緊急の魔法通信が入った。その内容は、ケインの心を凍りつかせるには十分すぎるものだった。


『ケイン様……残念なお知らせをしなければなりません。サルメディアのナディール様が、昨夜、ご自宅で亡くなられました』


ナディール――それは、先日の秘密会合に参加していた、改革派の中心メンバーの一人。貴族の家に生まれながらも、国の現状を憂い、強い正義感と熱意を持って奴隷制度改革を目指していた、聡明で快活な青年だった。


『表向きは、強盗による不意の襲撃、ということになっています。しかし、現場の状況から見て、明らかにプロの手による暗殺です。保守派の……おそらくは奴隷商人ギルドと繋がりのある連中の仕業でしょう!』


エリアナの声は、怒りと悲しみで震えていた。



ケインは、受話器を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。頭の中が真っ白になり、何も考えられない。ナディール。彼の、国の未来を語る時の真摯な瞳、時折見せる屈託のない笑顔、そして

「ケイン殿、貴方の力を信じている。共に、この国を変えよう!」

と力強く握手を交わした時の、手の温もり……。短い付き合いだった。しかし、ケインは確かに、彼と志を共有し、信頼関係を築き始めていた。


(俺のせいだ……)


その考えが、冷たい楔のようにケインの胸に打ち込まれた。俺が彼らを焚きつけたからだ。俺が、彼らに希望を持たせてしまったからだ。俺が、この無謀な計画を進めたから、彼は殺されたんだ……! 


激しい罪悪感と、志半ばで命を奪われたナディールへの深い悲しみ、そして、彼の命を奪った者たちへの、燃えるような怒り。様々な感情がケインの中で渦巻き、彼は立っていることすらできなくなった。



ケインは、その日から自室に閉じこもった。レナード卿やエリアナとの連絡も最小限にし、ただ暗い部屋の中で、膝を抱えてうずくまるだけだった。初めて経験する、自分の行動が招いたかもしれない、「近しい人の死」。その重さは、ケインがこれまで背負ってきたどんなプレッシャーよりも、彼の心を深く、そして容赦なく抉った。


(俺のやっていることは、本当に正しいのか?)

(改革なんて、ただの自己満足じゃないのか?)

(結局、俺のスキルなんて、誰も幸せにできないじゃないか! 人を死なせるだけじゃないか!)


深い苦悩と無力感が、彼を暗闇へと引きずり込んでいく。心配したリサやアンナたちが何度も部屋を訪ねてきたが、ケインは「一人にしてくれ」と繰り返すばかりだった。


心の扉を閉ざしたケイン・・・

立ち上がることはできるのか?


明日19時に更新します。

どうぞよろしくお願いいたします。

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