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【完結済】INVISIBLE-インヴィジブル-(EP1)  作者: 高山 理図
第一節  The mystery of INVISIBLE and the story of Ground Zero
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第1節 第65話 Modification to the Fact

「本当に、やるんですの? まだ赤ちゃんではないですか、きっとすごく苦しみます」

「ひとりで苦しませはしない。できるだけゆっくりやってくれ」


 執務室に残った比企は、響 寧々に言いつけ、直ちに真空訓練装置を取り寄せた。

 それは神々が学生時代に真空耐性を身につけるためにアカデミーでカリキュラムとして訓練が義務化されているもので、3mの立方の強化ガラスのケースのような形状をしている。

 比企はレイア=メーテールを抱えたまま装置の中に入ると、寧々に向かって合図をした。

 寧々がバキュームのスイッチを入れるなり、不穏な音を立てて装置の内部の空気が排出される。

 その音もさることながら、吸引力も凄まじく、ぐいぐいと空気が排出されてゆく。


 すやすやと眠っていたレイア=メーテールは異変を察したのか、ひきつけを起こしたように身体を硬直させ、翠色の瞳をぱっちりと見開いてじたばたと暴れ出した。

 寧々が装置の外からガラスごしに、圧力計を示している。

 現在の空気の濃度は90%、まだ吸引するのかと訊いている。

 今日はこのくらいにしましょう、とスケッチブックに書いても。彼女らしくもないコミカルな動きでちょこちょこと動き回って、中止しろと進言する。

 だが比企はそんな寧々の努力を一蹴し、首を振った。

 空気の濃度はみるみる下がってもう80%だ。

 言うまでもなく酸素濃度は更に低く、もう15%を下回っている。

 79、78と針は滑らかに下降し円弧を描く。


 レイア=メーテールはもう我慢できなくなったらしく、先ほどまで機嫌のよかった顔を真っ赤にして歪めた。

 小さな身体のあちこちに負担がかかり、どこからともなく痛むのだろう。

 遂に泣き出してしまったが、その泣き声すら息苦しさのあまりか細くなり、聞こえなくなる。

 比企は何の計画もなくこの虐待を行っているわけではなかった。

 外部から、寧々にレイア=メーテールの生体反応をモニターさせている。

 モニター画面は比企が中から見やすいように内側に向けられていた。

 比企はリアルタイムで弾き出されている神体データをチェックし、鋭く彼女の全身状態に目を配る。

 確かに、血液中の酸素濃度が痛々しいほどの減少を見せる。

 手指の先が青ざめているようにも思われる。

 いや、酸素濃度は減って当然なのだが、酸素の枯渇と共に立ち上がる生体システム、無酸素呼吸が未熟な発達段階では身につかない。


 この環境に適応するまで幾許かかかるかもしれない、やはり突然は無理だろうと、比企は中止を決めた。

 不死身の神体を持つプライマリの女神だからといって、負荷をかけすぎては苦しみを与えるだけだ。

 比企は寧々に減圧を止めるよう指示を出すと、彼女は待ってましたとばかりレバーに飛びついて減圧停止した。

 子供好きの寧々はこの虐待に加担しなければならない事に、胸を痛めている。

 また、彼女が子供をかわいがる理由は別にあった。

 比企はモニターのみを信用せず念のため、彼の手で念入りに彼女の神体の診察を行う。

 神体機能に異常はない、衰弱はしているようだが。

 今日は70%まで減圧して、身体を慣らすだけで上出来だ。

 明日から彼女の身体を騙し騙し、徐々に酸素濃度を下げてゆく。

 彼女の肉体的な負担もだが精神的負担がよほど大きければ、比企は執務以外、彼女と共にこのガラスケースの中に入っていても構わないと思った。

 比企の老化も加速するが、たかだか12年ばかり歳を取るだけだ、何の事はない、と彼は思う。


 それより赤子である彼女が心細く思わないようにする方がよほど大切だった。

 恒はこの中に入れないが、ガラス越しにではなく誰かが彼女と同じ環境に在って、傍にいてやらなければならないと彼は考えた。

 彼女を苦しめる張本人である彼はまだ目にいっぱいの涙をためてむずがっているレイア=メーテールの頭を優しく撫でると、壁に背をもたせかけて座り込み、彼女を片時も放さず抱きしめていた。


「……幼子をこんな目に遭わせる、恥を知らぬ己を憎め」


 法と正義を司る“立法神”とはよくいったものだ、と比企は自嘲する。

 この幼子をどん底にまで突き落とさなければ現実的に、三階に未来はない。

 今更心を鬼にして、などという表現はおこがましいと彼は思う。

 比企の心は既に修羅となって久しかった。


 無邪気で無垢な女神に全ての重荷を負わせ、運命を託さなければならないもどかしさ。

 比企の力ではどうにもならならず、三年後、いたいけな少女を戦場に出さなければならないという恥辱。

 INVISIBLEは、そしてノーボディは何故比企を選んでくれなかったのだろうと思うと恨めしい。

 いかなる苦痛にも耐える覚悟は出来ていたし、比企は陰階神であった時も、陽階に入ってからもINVISIBLEの収束に備え彼の身体を苛め抜いてきた。

 その副産物として地位も権力も手にしたが、INVISIBLE殲滅以外の些事には目にもくれなかった。


 INVISIBLEを打ち滅ぼす為に生まれてきたようなものだ、その目的以外に彼という存在は生きる価値などない、と比企は思っていた。

 今更その身がどうなって引き裂かれて殺されても、どんな苦難を押し付けられようとも構わない。

 だからこそ何も知らず、何の覚悟も、まだ自己すらも持たない彼女の身代りになることができたなら。


 だがどうやら比企は、INVISIBLEと対峙する為の舞台に上がることを許されなかった。

 それでもINVISIBLEや他の創世者と戦わなければならない。

 それがどれほど屈辱的であろうと、INVISIBLEと同じ土俵に立つことの出来る彼女を送り込むしかない。

 そして準備を整える為の時間と彼女に覚悟を促す為の時間は、あまりに短すぎる。

 そのほんの僅かな時間を最大限に有効に使い、比企が彼女に与えてやれるありったけの武器、強靭な肉体と強靭な精神を持たせてやらなくては、勝算などない ――。



『何か変わったことはないか?』


 織図 継嗣は集まった桃源郷の住民たちの顔をぐるりと見渡し、声をかける。

 ようやくサーバーの拡張を終え、死者の記憶を蓄積するEVEの運営にバグやエラーがないかを丁寧にチェックして回っている。

 織図はこの3日間、飲まず食わずの睡眠もとらずでEVEのサイバースペースで過ごし、現実世界に戻っていなかった。

 織図は不真面目な陰階神達の中では、とりわけ仕事熱心な神だ。

 死者たちの集落をひとつひとつ回ると、彼らは彼らの暮らしに満足していると言い、織図の計らいに感謝していると声をそろえた。


 しかし織図が最後に訪問した、EVEのはずれに位置するこの集落では、誰も沈鬱な表情をしている。

 いつもは織図の降臨を歓迎する彼らが、誰ひとり目を合わせようとしない。

 何か疾しい事があるのか、お前が言え、いやお前が、と隣の者の肩を小突きあっている。

 織図に報告しなくてはならない事があるようだが、誰も切り出せないでいる。

 織図もこんな態度を取られるのは稀なので、何があったのかと訝しがる。

 もうかれこれ10分ほど彼等は口を割らないでいるが、織図も長々と待てないので報告を促す。


『誰でもいいから、言いたい事があるなら言えよ』


 するとまだ20歳ばかりの、鮮やかな民族衣装を着た若い女が、織図の前に飛び出してきた。

 平身低頭の姿勢である。

 この世界で冥王として君臨する織図に対等にものが言える人間など、EVEにはいなかった。


「冥皇さま、怒らないで聞いてください。実を申しますと、ゾラが……」


 ゾラというのは、彼女の孫娘だ。

 20歳の娘が孫娘を持つというのも、EVEのシステムならではの面白い現象だった。


『おいおい、怒られるような事をしたのか』

「来なさい、ゾラ!」


 祖母の言葉に引っ張り出されるように、集団の中から左半身に酷い火傷を負った4~5歳ほどの少女が前に進み出た。

 広範囲にわたる火傷は赤黒くただれて、彼女は痛みに耐えられないといった様子だった。

 成人とならないままに亡くなった死者の記憶は死亡時の年齢のまま再生されるので、たまに少女や少年の姿の死者もいる。

 進み出た彼女が誰なのか、織図は調べなくてもお見通しだ。

 織図の脳にはEVE内に在籍する全死者の死亡時の記憶があり、EVEと一体化しているからだ。

 ゾラという少女は幼い頃に流行病に感染して亡くなった、たしかあれは1872年10月1日だった。


 織図は彼女の痛々しい姿にきゅっと眉根を寄せた。

 EVEは仮想空間だ、怪我をしたり火傷を負ったり、病気になどならない。

 彼女の負傷は、EVEの住民達と冥皇、死神との間に交わされた禁忌を破った事を意味した。

 織図は膝を折り、怯える少女の視線に彼の視線を合わせると、ゾラにのみ聞こえるほどの小声で穏やかに問いただす。


『“最果ての谷“へ行ったのか?』


 それは、EVEのサーバー群の一角であり聖域として知られるブラックボックスだ。

 EVEの住民達からは、世界の果てのようなイメージで理解されている。

 織図にとっても不可侵の領域で、代々の死神すら手出しもできなかった。

 神々が人々の記憶を保管するために創り出したEVEという仮想空間に、いつの間にかブラックボックスが出来ていたと分かったのは今を遡ること三万年前、不具合が起こってEVEのハードディスクを全フォーマットしたときのことだ。

 当時の死神は、何度ディスクフォーマット試みても全体の10%を超える記憶領域がまるごと、初期化できない事に戦慄したという。

 その時からどうやっても介入できないこのブラックボックスは、EVEの管理者である死神にも触れる事のできない聖域、あるいは禁足地として、不可侵の状態で代々の死神達に引き継がれてきた。


 仮想空間中のEVEの住民達の目には、その領域は底なしの谷のように見えるそうだ。

 住民達はそこを、”最果ての谷“と呼ぶようになった。

 織図は何があっても、”最果ての谷“にだけは近づくなと常々彼らに言い聞かせてきた。

 そこに行けば何が起こるか、歴代最長在位期間を記録している織図にも、想定できなかったからだ。


 織図は最近、そのブラックボックスにはノーボディが介入しているのではないかと考えるようになった。

 ノーボディがEVEに介入して何を行っているのか……それは織図が知る必要のない事なのかもしれないが――。


『何故、近づいた? 戻ってこられただけで奇跡だぞ』


 そうやって問いただしている時間にも彼女は苦しんでいるようなので、織図は身に纏っていた黒衣の下から金属光沢を持つグローブを取り出すと、両手に装着する。

 その手で彼女の両肩をさする。

 こうする事で、恐らく“最果ての谷“で蝕まれたゾラのプログラムを修正し、正常な状態に戻してやる。

 20歳の祖母は織図の傍で必死に孫の弁護をしている。


「“最果ての谷”の上の空から、何かが降ってきたんだそうです。この子はそれを近くで見たくて……私たちが目を離した隙に」


 ゾラの見た目は子供でもEVEで100年以上も過ごしているので危険だとされる地区に近づいてはならない、そのぐらいの分別はあってしかるべきだ、という理論は通用しなかった。

 幼くして亡くなった死者の精神年齢は、年月を経てもそれほど高くはならない。

 心の成長は身体の成長と連動している、それはEVEでの死者たちの観測によって明らかとなっていた。

 ゾラは100年以上もEVEの中で過ごしているにもかかわらず、まだ心はせいぜい10歳ほどの少女だ。

 知能も発達していないが、善悪の判断がまだついていない。

 織図はそのあたりの事情を慮って、ゾラに処分は課さないことにした。


『何かが、降ってきた?』


 織図はノーボディが何か介入を図ったのかと疑った。

 九重ものファイアーウォールによって阻まれているEVEに何者かが介入できるとすれば、それは創世者レベルの存在以外に思いつかない。

 死者の記憶になど、何の用があるものか……あるいは何かを、参照していたのだろうか。

 荻号 要は、確かにEVEに侵入した経験を持つ。

 だが、ノーボディとしての侵入には経験がなく対処方法が分からない。


『わかった、俺が調べておく。だから今後は何人たりともあの谷に近づいてはならん、いいな』


 きつくそう言い渡して、その集落の死者達を解散させた。

 住民達が三々五々、家々に帰る中、また別の死者が走って織図に近づいてきた。

 隣の集落の、日本人の女死者だ。


『何だ?』

「ところで、今年の慰霊祭の開催地はもう決まりましたか? ここ、Z3エリアはどうでしたか?」


 彼女が胸を高鳴らせながら訊ねているのは、年に一度行われている死者達の祭典の開催地の選定結果だ。

 慰霊祭には、陽階枢軸神たちがEVEに降臨して死者達と交流する。

 その開催地は毎年変わり、オリンピックの開催地候補を選ぶように各エリア対抗で激しい誘致合戦が繰り広げられていた。Z3エリアでも誘致には力を入れてきたが、何しろEVEの敷地は膨大なので当たる確率というのは絶望的だった。


『ああ、ここは外れちまってな。A8エリアでやることになった。お前らは今は誰を信仰してるんだ? 陽階枢軸も今年は少し顔ぶれが変わったからな……』

「今年は全ての枢軸神様が集われるのでしょうか」

『どうだろうな……今年はEVEに大量の死者が来たと思うが、生物階も色々と大変でな。軍神は多忙で降臨できんかもしれん。軍神はEVE住民には人気ないから別に来んでもいいんだろ』


 日本人の死者達には、日本由来の神であり天照大神の継承者であるとされる比企の人気がダントツだった。

 そして日本人死者に最も人気のない神が、日本に二発もの原子爆弾を落とし、日本を敗戦へと導いたユージーンだ。


「……そうですか。私、今年はユージーン様を信仰しようと思ってたんです」


 年によって信仰する神が違うという淡泊さが、日本人らしい。


『へ……お前、被爆者だっただろ?』


 ユージーンがEVEで疎まれるのも無理はない、織図はそう思っていた。

 特に戦争犠牲者達はユージーンに並々ならぬ憎悪をいだいていた。

 ユージーンは基本的に憎まれ役だ、彼は罵倒され、礫などを投げつけられても、死者たちの怒りを何も言わず受け止めてきた。

 それは戦争犠牲者に対する彼なりの償いだと考えているようだ。

 彼にとっては一年に一度の受難の日であり、EVEの戦争犠牲者にとっては年に一度の憂さ晴らしの日でもあった。

 だがどんなにEVEで憂き目に遭っても、ユージーンは毎年EVEの慰霊祭に参加したし、枢軸を外れさえすればEVEに来る必要もないのだが枢軸を降りる事もしなかった。


「“あの日”からもう、長い月日が経ちました。私はそろそろ私の中の混濁したものを、昇華しなければならないと思うのです。昨年、ユージーン様と直接お話しする機会がありました。あの方は私の怒りと悲しみを、正面から受け止めてくださいました。あの方だけが、私の声に耳を傾けて下さいました。本当の救いというものは、全てを奪った相手からによってのみ与えられるのだと分かったのです」

『なんというか、達観したんだな。あいつを擁護するわけじゃないが、あいつは誰も争い傷つくことのない平和な世界を望んでいるんだ。その思いは、なかなかEVEの住民には理解されんのだがな』

「ええ……では、来年のお越しをお待ちすることにします」


 陰階神である織図は人々の信仰の対象となることはないが、陽階神たちは信仰されることが仕事の一部だ。

 織図は陽階神が人々に負う責任の重さを、毎年のように見ていた。

 ジーザス=クライストのように敬愛と信仰を集める陽階神、ユージーンのように人々の憎しみを受け止める陽階神。

 だがEVE住民の中には、彼女のようにその神の演じる役目だけではなく、その神の本来の性格を見抜いてくれる者も少なからずいるようだ。

 織図は久々に晴れやかな気分で、EVEの空に飛翔した。



 現実空間にして3日ぶりに、すっかりEVEに溶け込んでいた意識をサイバースペースから現実空間に浮上させる。

 ぴくり、と腕の感覚が戻ってくる。EVEと現実空間を出入りするときに起こる片頭痛をこらえながら、ヘッドギアの中で織図は目を覚ます。

 目の前にデジタル表示されている室温は4℃を示している。

 身が凍えるようだ。床を走る無数の基盤の上に、無機質で重厚な黒い玉座がひとつ、大樹のようなコードに侵食されながらそびえている。


“体温:正常、酸素濃度:正常、脳波:正常、脊髄反射:正常、血圧:正常、血中DLT:適性値、Atmosphere:枯渇”


 織図の顔の上や手足に無神経に、青いレーザーが走ってゆく。

 加工音声が淡々と彼の神体をチェックしてゆく。

 EVEのマザーコンピューターに、全身状態をスキャンされている。

 死神は現実空間と仮想空間を往復する為、こういったバイタルチェックが常に行われている。

 意識が仮想空間から浮上しきれないという接続事故で命を落とす事も多い。


“誤差適正範囲内です”


「オッケー」


 織図はコンピューターに拘束を解かれて自由になった右手を後ろに回し、首筋のあたりをまさぐる。

 織図の頚部には精神インタラクティブケーブルを差し込むためのジャックポットがあけられている。

 脊髄から神経系を、EVEと接続する為に必要なものだ。

 織図が死神となる際にあけたもので、その時から冷血なサイボーグになったような気がして、彼はこのジャックポットを人目に触れないようフードで隠してきた。

 神経にまで深く差し込まれた太いケーブルを抜く。


「……っ」


 プラグを抜き差しするときは、相当な痛みを伴う。

 織図がようやく全ての接続を解いて一息ついたとき、主の覚醒を知った第一使徒、棟永 雷鳥がコンピュータールームに駆け込んできた。

 棟永は1300歳ほどのベテラン使徒で、織図以前の何代もの死神に仕えてきた。

 背も高くラテン系の派手な顔立ちで、大きな黒い瞳と彫りの深さが特徴的だ。

 開口一番、織図に投げかけたのはねぎらいの言葉ではなく叱責だった。


「おい! 大丈夫か? 3日もぶっ通しでDIVEしてんじゃねーよ! 死にてーのか!」

「大丈夫だよ」


 立ち上がろうとして、織図は足元がふらつく。

 棟永は織図が倒れる前に、踏み込んでその神体を支えた。

 これでいて棟永は、誰よりも織図を心配している。

 10柱以上もの死神を在位100年以内に失ってきた棟永にとって、450年以上も死神として執務している織図 継嗣はまさに死神となるために生まれてきたような神であり、陰階の至宝だった。

 避けられる過失で、その命を失うわけにはいかなかった。

 それに、盲目だった両目がやっと見えるようになったばかりだ。

 織図は光を取り戻してから飛躍的に能力が高まり、これまでは盲目であるため文系(XX)神としてしか生きてゆけなかったが、AXを名乗ることも不可能ではないレベルにまで身体能力も高まった。

 これから成長してゆく可能性があるというときに、無理をしてほしくはなかった。


「大丈夫じゃねーじゃねーか。俺の給料をどうしてくれる! もう1ヶ月ももらってねえぞ」

「ああ、ヤニが切れたからな。一服したらやるよ、コーヒーでも淹れてくれ」


 織図は棟永にコーヒーを一杯注文しながら執務室に戻ると、端末を起動しここ3日間の動向を確認する為GL-ネットワークに入る。

 織図の目はヘッドラインニュースを縦に追っているが、最後までページをスクロールさせると、左手で額を押さえ、深刻な顔で肘をつく。

 あれだけ楽しみにしていた煙草に火をつけないままコトリと煙管を執務机に置いたのは、GL-ネットワークの記述を読み、この3日間に起こった変化に勘付いたからだ。

 とびきり上等の豆を挽いてコーヒーを淹れて出した棟永に、織図はこんな質問を投げかける。


「最近どうも、忘れっぽくていけねえ。ちょっと聞きたいんだが……陽階の7位には誰が就いている?」


 棟永は怪訝な顔をし、織図から視線を外さないまま白い陶磁のコーヒーカップを置いた。

 遂にボケたかと思われているのだろうな、織図は重々承知の上で尋ねている。

 織図は早速それをいただいて、冷え切った身体を温めた。

 凍りついていた思考回路に血液が巡る音が聞こえた。


「しっかりしろよ。ずっと空位だったじゃねーか」


 織図は、浦島太郎になっていただろうか。

 この棟永という第一使徒は、口こそ悪いが優秀なプログラマであるとともに、織図にとっては物足りないほど冗談を言わない堅物だ。

 だからこそ信頼がおけた。

 彼が空位だったといえば、事実空位だったのだ。

 それを織図がどれほど否定しようと。


「いねー訳ねーだろ、空位なんてあるか。空位が許されるのは至極位だけだ。何で繰り上がらない」


 織図は反論する。空位など意味がないので神法で認められていない。

 その位階が不在となれば必ずすぐ下の位階が繰り上がる、これは大原則だ。

 したがって、棟永の説明そのものが間違っているというか、織図の記憶とかなり矛盾している。

 棟永は恐ろしさのあまり、わなわなと震えて、織図の黒衣にしがみ付く。


「おい……! まさかイカレちまったんじゃねーだろーな。先代も死ぬ前にはそんな事を言い出したぜ、しっかりしてくれ! あんたがやらなきゃ、誰に死神が務まるんだ!」


 棟永が顔面を蒼白にしながら織図の正気を疑うのも無理はなかった。


“おいおい、マジかよ。遂に出やがったぜ……モディフィケーション(事実の修飾)が……”


 織図は苦笑する。

 神は脳の疾患にはかからない。

 幻覚や妄想など精神疾患などを患う者も実は稀だ。

 織図の記憶があやふやになっているというより、織図が現実世界にいない間に何か異変が起こったという方が、確率的には高い。

 ひとまず棟永を落ち着かせるために彼は思い出した振りをすることにした。


「……あー、思い出した、思い出した。ちょっとEVEの中に長く居すぎたようだ」

「コーヒーもう一杯いるか? 頼むから気分転換してくれ。しばらくEVEには入るな、長くいると頭がヤラれるんだ」

「ああ」


 ああだこうだ言いたがる棟永を無理やり退出させて、織図は煙管に火を入れる。

 妙な言動があったということで、今日中に精神科医を呼ばれるだろう。

 だが織図は狂ってなどいない。

 織図以前の歴代の死神達に思いを馳せれば、代がわりして100年もたたないうちに、次々と命を落としてきた。

 EVEの内部にダイヴしている機会が多い死神は現実空間と非現実空間の境界を見失い、事実と異なる、あるいは錯誤した言動を行うようになるのだという。それらは彼らの狂気の始まりで、一度その症状をみとめた死神はみるみるうちに心神耗弱状態となり、精神崩壊して亡くなった。


 死神の一柱である織図も、死神となる際に全てを捨てる覚悟、特に死を覚悟しなかったわけではない。

 だから彼は、彼の記憶、そして正気をEVEにとどめようとした。

 彼は定期的に、彼が人間の死の直後にそうするようにメモリスティックをこめかみに宛がい記憶を回収してEVEのフォルダにバックアップを作っておいた。

 バックアップがあるからといって、人間のように神体に再インストールはできない。

 あくまでもそれはバックアップだ。

 織図がどのような悲惨な変化を経て、死が避けられない場合はどんな死に様となるのかを次代の死神にありありと見せなくてはならないと思ったからだ。


 出来れば助かりたいという気持ちもあった。

 在位から100年を経ずして死ぬなどごめんだ、当時はそう思った。

 だが幼少の時分より荻号 要から教育を受けていた織図はこれまで命を落とさずに何とかやっている。

 思うにノーボディは死神達の死の連鎖を止めるべく、彼の教育を叩き込んだ織図を死神として育てたのだろうと今にしてそう思う。

 しかし織図は今でも、まじないのような気持ちで織図の記憶のバックアップを定期的に取り続けている。

 正常な記憶のバックアップを取り続けるこの試みは何も織図の代からのものではなく、織図の先代の死神の遺産からも発見されている。

 先代死神、満井 宵(みついよい)は、織図とは違うやり方で記録を残そうとした。

 EVEという絶対不可侵のサーバーに、彼の生きた記録を日記形式でおさめていたのだ。

 満井は彼の死の1ヶ月前、身の毛もよだつ体験をしたと記している。

 それは彼がたった2日、EVEに潜っていた間に起こったのだという。彼はEVEのサーバーに、こう記していた。


“この私の記憶と、現実がほんの僅かな間にすっかり乖離してしまっている”


 それを彼は、“事実への修飾”という言葉で表現した。

 現実が偉大なる筆者による加筆修正によって書き換えられたようだと、彼はそう表現していた。

 満井の記憶と、彼の前にあった現実……どちらも信用に足る。

 だからこそどちらが正しいのかを判断する事ができなくなり、満井は心身喪失状態になり発狂して、EVEから戻る事ができず亡くなった。

 発狂した状態でEVEに潜るとどうやら、現実空間に戻れなくなるらしい。

 満井は、恐らく“正しかった”彼の記憶を疑ってしまったのだ。

 だから織図は、自分自身を信用する事ができなくなるという事は死を招き寄せることだと肝に銘じていた。

 織図は先ほどEVE住民がこう言わなければ、あるいは彼が間違っていると思ってしまったかもしれない。

 しかしEVEの住民は確かにユージーンを知っていた。

 織図はEVE住民の記憶に絶対的な信頼を置いている。

 何故なら、生体ハードディスクである脳よりずっと、EVEのハードディスクは壊れないからだ。

 たとえ現実空間の神々、人々の生体ハードディスクが全て、何者かによって書き換えられてしまっていたとしても――!


“やべえ、やべえ……これは黙っていないと、こっち側の記憶も消されるな”


 いまやユージーンの記憶が残っているのは、織図と同じく仮想空間と現実空間を出入りするファティナ・マセマティカ。

 彼女が忘れているならば織図だけだ。しかし敢えて、もうファティナにも訊かない方がよい。

 そしてこれは誰にも話さないほうが身の為だ。

 荻号 要から秘密を持ちたいときに使えと言われ、双繋糸そうけいしという、看破遮断のためのアイテムを、実は織図は持っている。

 だが双繋糸を身に帯びれば、全神からあらぬ疑いをかけられる。

 実質的に彼は今後、織図のマインドギャップを5層以上上回る、堅固なマインドギャップを持つ者……つまり荻号、比企、極陽らとは接触できないと判断した。



 恒は飛翔して水天井を抜けると、難なく朱音を抱えたまま大温室に降り立った。

 地に足が着いても、朱音は恒にしがみついて離れなかった。

 朱音の腕に鳥肌が立っているのに気付いた恒は、彼女の気が紛れ落ち着くように腰に手を回していた。

 長い時間が流れ、彼女はようやく恒から離れた。


「……ありがとう、恒くん。本当に、神様みたいだね……」

「そんな、おだてても何も出ないよ。ずぶ濡れだな……服乾かして帰らないと、おばさんびっくりするぞ」


 恒は彼女が風邪をひいてはいけないと、比企の執務室に戻ろうとしたが、先ほど空中庭園に入ってきた周辺には出口が見当たらない。

 恒が出口を見失う筈がないので、執務室側の出口が消えたのだ。

 これでは比企と連絡の取りようがない、あまり朱音を濡れたままにしておくと風邪をひかせてしまう。


「……どうしよ」

「おい、朱音。帰るぞ」


 計ったようなタイミングで温室の上空から現れたのは荻号だった。

 セキュリティの厳しい比企の隠れ家的スペースにあっさりと侵入してくる荻号はやはり油断がならない。

 どうやら彼は、殆ど何も発していないかに思える朱音の気配を、いや正確に言えば彼女に染み付いた荻号自身のアトモスフィアを追ってきたようだった。断じて恒のそれを追ってきたのではない。


「何だこの庭は。なかなか珍しいもん植えてやがるな」


 荻号は興味深く温室を見渡している。元薬神である比企と、自宅の庭でいわゆる趣味の園芸をやっている荻号とはセンスが似ている。

 荻号は着地するなり珍しい植物から手当たり次第、種を取りはじめた。


「それで何するんですか?」


 恒は嫌な予感がする、持って帰って種を食べるのなら構わないが、こんな妙な植物を庭に植えるのはまずい。


「持って帰って植えるに決まってるだろ」

「決まってるだろ、じゃないです! 日本では遺伝子組み換え作物とか、外来種の植物にうるさいんですから! 逮捕されて村に住めなくなっちゃいますよ。まさか、ケシとか育ててないでしょうね」


 荻号はそれを聞いて渋い顔をすると、パラパラと名残惜しそうに種を捨てた。

 折角借家暮らしで気ままにやっているのだから、警察の厄介にはなりたくない。

 荻号は日本の法律に疎いので、恒も彼の行動に気をつけてやらなければと思う。


「それで、さっきの謎の神について何か分かりましたか?」

「いいや……やられたな。記憶を書き換えられとるな。俺等の方のだ。創世者レベルの介入があったんだろう。どの創世者がやらかしたのかは分からん。とっとと帰るぞ、朱音。俺は帰って寝る! お前も家に帰れ」


 彼はどうやら自宅に戻り、ふて寝をするようだった。

 恒はその様子を見て、荻号はさっぱり何も掴めなかったと言っているが、何か気付くところがあったのだろうなと思う。

 そうでなくて荻号があっさりと調べるのを諦めて、家に帰るとは言わないだろう。恒はすぐに詮索をしてしまう疑り深い性格がつくづく嫌になるが、保身の為に幼いころから身につけた癖だった。

 朱音は濡れたスカートを、雑巾を絞るように絞っている。


「ずぶ濡れなので、服を何とかしたいんです……」

「んなもん、俺の家でやれ。風呂も服も貸してやる」


 恒はその、“風呂と服を貸してやる”というのでぎょっとしたが、相手が荻号であるため警戒には値しなかった。

 彼はあらゆる意味で安全だった。

 荻号の奔放な行動に付き合わされる朱音は大変だろうが、何とかうまくやって欲しいと恒は思う。

 風岳村に残った神はもう、荻号しかいないのだから。

 本当は恒が彼女を養ってあげられるほどの甲斐性があればよいのだが……。


 荻号は強引に、恒に何か言葉をかけようとしていた朱音の手を取ると、超空間転移で消えてしまった。

 恒は相変わらず、出口のない大温室にひとり残された。


 濡れた白衣の上着を脱ぎ、小枝にかけて乾かす。

 腹部にはまだ包帯を巻いていたが、びしょぬれになったのでそれも外してしまった。

 ひとりになったのは、久しぶりだ。

 比企は自分を監視していなくてよいのだろうか、と思うが比企も比企で忙しいのだろう。

 恒は遠慮なく例の白いベンチにごろりと寝そべり、うたた寝をはじめた。


 ノーボディに会いたいと願いながら寝たのですぐに黄昏の草原に繋がると思っていたが、いつもの草原は月もない真っ暗闇の夜だった。

 ゴッと、風が強く草原の上を吹き渡っている。

 あの美しく絵画のように印象深い黄金の場所が、途端にその様相を変えて怖ろしくすら感じられた。


『何か、いつもと違う……』

[……来たのか]


 突如黄金の光が差し、恒の背後から現れたのは、ノーボディだった。

 改めて述べる必要もないが、今日は白衣にサンタクロースのような髭の長い老人の姿をしている。

 まるで仙人そのものだ。

 どうやらノーボディの姿は循環しているようだ。

 子供からおとなへ、そして老いてまた子供へと還る。

 輪廻転生を繰り返すかのように、彼は何度も生を経験し、常に諸行無常を体現している。

 恒はスケッチブックを忘れたが、彼の言葉は光の文字となって字幕のように恒の前を走る。

 それは暗闇の中で、イルミネーションのように幻想的に見えた。


『教えて下さい、俺は何かとんでもない事を忘れてしまったような気がするんです。脳死状態になっていた、金髪の青年神は誰なんですか?』

[彼はもはや“誰でもない者”となった、汝らの記憶からも消えておる]

『何故! あなたがそうしたんですか? 記憶を戻してください!』

[そうではないのだ。それは何より、彼が望んだ。彼は汝と縁の深い神だった、だが……汝等に忘れて欲しいと願ったのは彼だ]


 恒は頭を殴られたように感じた。

 そんなことを願う者がいるのだろうか? 

 死ぬより尚辛いのは、自分が生きたという証を残された者達に否定される、あるいは忘れられてしまうことだ。

 それなのに……忘れられる事を望んだ、だと――?


『記憶を、消した? 忘れられたかったってことですか?』

[悪くは思うなよ、彼がそう望んだ以上もう吾には記憶を戻す事はできんのだ]

『俺は彼が誰なのか知りません、でも、絶対に忘れてはいけなかったような気がするんです。何とかなりませんか、何とか!』


 ノーボディは知っている、ならば昔話のようにでもいいから、彼が何だったのかを語って欲しいと思う。しかしその一方で恒にも分かっていた。

 昔語りに植えつけられる記憶に意味があるのかと。


 何の意味もないのだと。恒自身が思い出さなければ、その記憶には意味がないのだと。


[彼を忘れることだけが、彼への弔いとなる]


 それは――どんな心境なのだろうか? すっかりその存在を、生きていたという事実そのものを、消去してしまいたかったという彼の心境は……。

 想像を絶する壮絶な覚悟のもとに、決して後戻りの出来ない決断をしてしまった彼の心境は――。

 何という悲しい選択をしてしまったのだろう。

 恒が名も知らぬ彼は、誰だったのだろう――。



 解階の女皇、アルシエル=ジャンセンがルシファー=カエサルとの決闘に敗れ、生きながらにして捕囚となって辱めを受けているというニュースは、伝令使やルシファーの使者たちにより瞬く間にABYSS全土に広がった。

 解階の母とも呼ばれてきた最強の女皇を、武力での敗北によって失ったことにより、ABYSSの民は抵抗する気力を根こそぎ奪われた。


 皇居に立てこもっていた帝都の民は貴族も庶民も、女皇の事実上の失脚により、新帝国ゲヘナ軍への無血開城を迫られることとなった。

 兵糧攻めと、U.I.への感染のリスクを負わされていては長期間の抵抗など不可能だった。

 開城とともにアルシエルの98名の息子や娘達の中には、彼等の誇りと母への忠誠のために自害した者達もいた。

 アルシエルの側近達は彼女の名を賛美しながら、互いに撃ち合って果てた。

 惨劇のわずか1週間後、GEHENNAはメファイストフェレスという謎の新女皇のもとにアルシエルの9つの御料地を侵し一大帝国を築き上げるに至る。


 GEHENNAに降らない国家は全て、U.I.により老若男女、赤子に至るまで全滅することとなった。

 これとは反対に、新女皇に忠誠を誓った者はU.I.の感染から免れることが出来た。

 不思議なものである。

 その頃にはABYSSの住民たちは薄々、新女皇こそがU.I.の感染を操っている、あるいは感染源に違いないと勘付いていたが、アルシエルの直系の子孫が惨殺されてより、誰も女皇に逆らう者はなくなった。

 いや、正確に述べると、いなかった訳ではない。

 たったひとりだけ、女皇の暴走を止める為果敢にも立ち上がった者がいた。


 それは彼女の唯一の肉親、メファイストフェレス=セルマーだ。

 GEHENNAの恐怖政治を止めさせる為、そしてアルシエルの忠臣として、あるいは狂気に堕ちた娘を救うため彼は単身GEHENNAの中核の城に乗り込み新女皇の説得に赴いたが、その翌日には城の門扉にセルマーの首がむなしくはりつけられて晒し者にされた。

 こうして、ABYSSにはメファイストフェレス=メリーを止めることができる者はいなくなった。

 民には決して姿を見せないこのGEHENNAの謎めいた女皇が、帝都をエーリューズニルと定めた事から、疫病と死の国を支配する女神ヘルになぞらえたのか、いつからか彼女と彼女の帝国を示す隠語としてヘルと呼ばれるようになっていた。

 この政変を神階は知るすべなく、ひっそりと解階はブラインド・ウォッチメイカーの支配の前に陥落していた。


 そして、彼らの暗黒のうちに2年の月日が経った。


【INVISIBLE 第一節 完】

第一節終了です。物語の時系列では2007-2008年ごろです。

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