第二話 買い物
この日は初めて街に出ることになった。
消耗品の貯蔵がなくなったらしい。
「ついでにネフの服も買う予定だよ。」
「え?」
「『え?』じゃないよ。ずっとその服着続けるつもり?いくら男の子でもそろそろ私のおさがりはいやでしょ?」
「…まぁ、どっちでもいいけど。」
ネフがこの世界に来てから着てる服はチークのおさがりだった。
「んー。じゃあ、もう少し成長したら胸の部分が伸びたかわいらしい服着たい?」
「…。」
「あはは、冗談冗談。ネフがよく転んで破れるからもう服がないんだよ。」
…というわけで僕の服を買うことが決定した。
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町に降りる準備が終わり屋敷を出た。
「ん。」
「ん?」
「手を出して。」
「こう?」
いわれるがまま屋敷の前で手を伸ばした。
その手を握られてすぐ目の前がゆがんだ。
感覚としてはこの世界に来た時に近い。
あと、この屋敷に来た感覚にも近い。
…空間移動か。
これには嫌な思い出がある。
もともと、山奥の屋敷に住んでいた魔法使いのチークの下で生活していたので麓にある町までかなりの距離があるはずだがチークはその距離を無視した転移を行った。
この世界の町に出るのは初めてではないけれどどこも故郷とは空気が違う。
田んぼはないし、ビルも見えない独特の空気がある。
嫌いではない。
でも…気持ちが悪い。
「…。」
「ごめん。酔った?」
首を縦に振った。
空間をゆがめた座標の圧縮は人によっては酔ってしまう。
僕はは三半規管が弱かった。
これは、体が再生成されても変わることはなかった。
できれば治っていてほしかった。
「…どう?」
僕にに手を伸ばしたチークが聞いた。
どうやら、回復系の魔術を使用したらしい。
グルグルしていた頭の中がスッキリした。
『よくなった?』と聞かれて首を縦に振った。
「よかった。…じゃあ、行こうか。」
「…うん。」
あとで、酔い直しに使った魔術を教えてもらおう。
「買い物が終わったらお菓子でも食べよう。」
「いいの。」
前いた世界と違いこの世界で砂糖は貴重だ。
そのため、かなり高いと聞いていたが…。
「…私が仕事をしているように見える?」
「見えない。」
「少しはしてると思っててほしかったなぁ。まぁ、ほんとに何もしてないんだけど。」
ネフは一度もチークが仕事をしている場面に出くわしていない。
食料は山で採れた植物や獣の肉などでお金を必要としていないので仕事も必要ないと思っていた。
「少し前までは仕事はしててすごく稼いだんだよ。」
「へぇー。」
それは知らなかった。
「昔はねぇ、生きるのに必死だったからいろいろと頑張って仕事してたんだけどねぇ。」
「今は?」
「今はゆっくり余生を楽しんでるよ。」
チークは歩きながらいろいろと話してくれた。
魔術大国でいろいろとやらかした話、冒険者という仕事で仕事をしていた話、冒険者のパーティー3人組で魔竜を倒した話。
「さぁ、じゃあそろそろ服を買うよ?」
「…。」
「急に黙り込んだね。」
僕は服を選ぶことが苦手だ。
服を着ること自体は嫌ではないが服に興味があまりないのだ。
ならば適当な服を選べば逆にチークに怒られた。
「もっとちゃんと選んだら?お金ならたんまりあるんだよ?」
どうやらお金を気にして質素なものを選んだらしい。
確かに値札はかなり高い値段を示している。
「動きやすそうな服を選んでる。」
「じゃあ、これは?」
「いいんじゃない?」
「…もっとさぁ、可愛いとかカッコいいとかないの。」
「それは僕にはわからないよ。」
「じゃあ、私が選ぶ。」
「…お任せします。」
少しの間、着せ替え人形になる代わりに動きやすい服が大量に選ばれた。
多分、同じ量を僕が選んだなら数種類しか買わなかっただろう。
「じゃあ、次はネフの防具を買おう。」
「…防具?」
「武器も買うよ?」
「?」
「あれ?言ってなかった?そろそろ冒険者業を再開しようと思うんだけど。」
「…聞いてない。」
「じゃあ、今言った。」
「遅くない。」
「まぁ、学校に行くんでしょ?小遣い稼ぎ位はできなきゃね。」
「…そうだね。」
ネフはチークに連れられるがまま鍛冶屋に赴いた。
「いらっしゃいませ。」
店主と思しき男にいろいろと測られて防具の依頼を行った。
武器は僕には少し長めにはなるが刀を選んだ。
刀を選んだ理由はお試しとして素振りをした中で一番手に馴染んだからだ。
それ以外に特に理由はない。
ロングソードや双剣などは合わなかったし。
「では、日を開けてからまたご来店ください。ご子息様に合わせるための調整をいたします。」
「わかった。じゃあ、お金はその日に?」
「はい。」
「ありがと。」
あまり理解できないまま話は進み、店を出た。
どうやら、僕が刀をもらえるのはまだ先みたいだ。
「よし、じゃあお菓子食べに行こう。」
その後、足りない消耗品を買ってすぐチークは言った。
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