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第41章 歴史を照らし出す光


 「分かりました。 では、パレヴァンのほうは、このラミダンの提案を受け入れるという方向でよろしいのですね?」


 「もちろんであろう。 エデモルカは我々の国境に最も近く隣接していた地だ。 陛下がまさか見過ごすとでもお考えか?」


 ギョムチャクがラミダンに向かって不機嫌ながら同意の姿勢を見せていたころ、話し合いの場となったガルベ城に来る予定の二ヴェナの要人の姿はなかった。


 一体何が起こったというのであろうか。


 「失礼だが二ヴェナはどうされたのですか?」


 「さあ、あの国とは付き合いきれんからな。 それにジョパルを長年保護していた国だ。 私から言わせれば…」


 ギョムチャクは薄笑いを浮かべて首を軽く横に振った。


 「二ヴェナを味方に引き入れるのは、無謀だ。」


 「それでも我々はやらなくてはならない。 私は本気だぞ将軍。 ゼムヘイオは必ずしもあなた方を出来損ないの国家などとは思っていない。」


 少しばかり彼の口調にギョムチャクは腹を立てたものの、続きを黙って聞くことにした。


 「わがゼムヘイオの皇帝陛下が、ジョパル包囲網の同盟に協力するなら、以後数年にわたり経済協力を惜しむことはない。 約束しよう。」






「では、やつらはここに来るな。どうするんです王子様?」


ハルヴェルトが木の実を片手にかじる横で、ジェスナがそれを彼が食べる寸前で取り上げた。


「ニヴェナも信用できない状態だわ…。」


同盟は無理。


恨みを抱く敵と組むなど、考えられない。


「しかし、いずれか一国でも味方につけねば、分が悪すぎますぞ殿下。」


ドバンザもあまりにもそれは無謀と見た。


「いいや、無理だ。 奴らにとって我々はもはや何の利も生まない災いそのものだ。 もし同盟をしても、後々都合良く利用されるだろう。」


彼の決意は固かった。


たとえどんなに困難でも、立ち上がらなくてはならないときが来る。


帝国の歌をジェスナと一緒に歌った夜から、心の隅に常に宿ってきたものが…。


「考えよう! 今からでもすぐに! 皆考えてくれ! 一国でも困難に立ち向かう方法を!」


‐月が陰るとき、それは黒き炎がむしばんでいるようであった。‐


ふと頭の中でムィンダンテの声がよみがえった。


「あれはエデモルカの伝説だった。 はるか昔、この世を支配したのは初代イムダイの王、ヘムロン。」


なぜ彼は伝説となったのだろうか?


「伝、説…」


そうかわかったと本能が告げた。


「モルモゼロ! モルモゼロを呼べ!」


「はい、ただいま。」


彼が王の間に入ってきた途端、ジョパルは目を輝かせてそのローブのすそをつかんだ。


「エデモルカの書庫へ行くぞ! 皆も呼ぶのだ。」






「危険です。 以前の宮殿は帝国領なのですぞ!」


だが、ヘムロンが伝説となった背景に何があったのかを探らなければ、他に他国の攻撃を防ぐ手はない。


「これは賭けだ、モルモゼロ。 もし、ヘムロンの伝説が史実に基づくものであるなら、彼の強さの秘密を探るしか、この国を敵から守りきることはできない…」


「しかしながら…」


だがその老人の声は止められた。


「他に方法がない以上は、たとえ根拠のない伝説であってもすがらないよりはましだ。 いや、すがるしかないときなんだ。 悲しいことだが、分かってくれ…。」


王子の命令で、騎兵たちが次々と用意してきた馬に乗る。


きっと今頃は、ニヴェナも、帝国も、ジョパルたちの動きに気付いたことだろう。


他国が装備を整える前に、一刻も早くエデモルカの宮殿に行かなくては、せっかく叶いかけた願いが消え失せてしまう。


「心配ない。 護衛隊も一緒だ。 不安ならお前もついてくるかと言いたいところだか…」


「分かっております。 私は都の留守を預かります。」


全て分かり切っていたことだ。


幼少の頃から何でも大臣たちに任せきりだったが、王になってからは、それもいよいよ最後にしようとジョパルは密かに思っていた。


不吉な考えだった。


彼には死が見えていたというより、むしろ自分から死を見つめているような、そんな勇ましさが感じられたのだ。


少なくともモルモゼロは他人を除いてそう解釈した。


ゆえに、彼はあっさりと留守を引き受けるのを拒もうとしたが、死んだはずの命を長らえることができたことを、人々に助けてもらった恩返しに都を守ることを選んだ。


王子を敬っていないのではなく、ただ純粋な心の現れである。


「行くぞ! ティペス、メーケニッヒ、ハルヴェルト、トヴァンザ!」

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