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第32章 運命は決して逆流しない


 「それはどういうことなのですか? メーケニッヒ将軍。 私は、あの二人に命を狙われていると?」


 ジョパルは彼の言葉聞いて焦りだした。


 なんの前触れもなしに、いきなり自分の存在が彼らにとって厄介なものであるとは、にわかには信じられなかったが、王に話してよいとの彼の忠告から、これは事実なのだと言う確信に迫られた。


 「命ですか。 少なくとも、彼らはあなたがこれ以上名声を高めて、二ヴェナに混乱がもたらされることを恐れている。 最悪の場合は…」


 メーケニッヒは彼の目の前で、自分の首を手で斬るしぐさをした。


 「そんな。 なにか方法はないの? 二人に分かってもらう方法が。 ジョパルはそんなこと考えてないのに。」


 「残念ですが、彼が考えていなくとも、自然と民が動揺してしまうに違いありません。 そうなれば、それを口実にべオコス将軍が王に、ジョパル殿を追放するよう提言するでしょう。」


 王に三年前、彼らが初めて謁見したとき、ウィンバートはできるだけジョパルの立場がぐらつかないように努力はすると言ったことを、彼は思い出していた。


 「きっと大丈夫さ。 ジェスナ。 陛下に相談してみよう。」


 そうと決まれば話は早いと、メーケニッヒは彼をできるだけ不自然にならないよう、王の間へと連れていった。


 すでに将軍たちが兵士たちに息をかけて、彼を殺そうと画策しているかもしれないためだ。






 王はそのとき、玉座に座り文献をあさっていた。


 そして、とある記事に目を止め、途端に立ちあがって、そうか分かったぞと叫んだ。


 「そうか! パレヴァンめはこれをねらっていたのか!」


 「陛下。 メーケニッヒでございます。」


 「ん? ああ。 入りなさい。」


 つい夢中になっていて彼らの声に気づかなかった王は、中に入るように言った。


 「どうしたのだ?」


 入ってくるなり、ジョパルは彼に膝をついた。


 「陛下。 私は、陛下にこれまで尽くしてきました。 しかしもうここにはいられません。」


 「何? まさかあやつら二人が? そうか。 予想はしていたが、ついにこの時が来てしまったようだな。」


 持っていた本を閉じると、ウィンバートはそれを彼に差し出した。


 「これは、禁書棚の深くに埋もれていたエデモルカ文献だ。 かの国の古い歴史と伝説について書かれておる。 持っていくがよい。」


 つまり、王の答えはこれ以上は、自分の力ではどうすることもできないというものだった。


 「待ってください。 ジョパルは何も悪くありません。 あなたは王なんでしょう?」


 ジェスナが彼の体を必死にゆするのを見て、メーケニッヒがそれを抑えた。


 「放してよ!」


 「いいか。 よすんだ。 陛下の前で失礼だぞ。」


 「ジョパルは、あなたに尽くしてきたのに、あなたは何もしてくれないの? 何とか言ったらどうなの?」


 そうこうしているうちに、ジェスナは将軍の手によって外に連れていかれた。


 「やっと二人になったな。 将軍がいない分、ゆっくり話ができる。」


 「陛下、私は…」


 「よい。 分かっておる。 ジェスナの言うことはもっともだと思っているが、そなたはどうしたいのだ? ここに残るのか? それとも…。 もはや将軍たちを止めることはできん。 一国の王となる人間が、活躍し、これ以上目立っては他の臣下たちも黙ってはいまい。 国のことを考えている彼らに、たとえ王である世であっても、それを止める権利はない。」


 エデモルカ再興のために、いかなくてはならない。


 しかし、どこへ行けというのだろう?


 「そなたなら王として、十分の器が備わっている。 いくのだ、ジョパル。 どこへいくのかはそなたが決めること。 その本を見るのだ。」


 彼が開いたページには、何やら一本の剣が文章とともに描かれていた。


 「それは、エデモルカに古代の森より伝わる剣。 それを手にした者はイムダイの大いなる力を得ると、書かれている。 パレヴァンの目的はそれだ。 探すのだ、ジョパル。 王となれ。」


 森といえば、エデモルカの宮殿にある西の森か、あるいは危険な東の森のどちらかだった。


 東の森には母が眠っている。


 「母上…」


 彼は、ふと胸にあるペンダントを取り出した。


 黒くつやめき、時折天井から差し込む光に反射して、赤くにじむそれは、彼にヘレネが祈っているようだった。


 「陛下。 私は、母に会いたい。 もう一度、あの森へといきます。 そして、王となった暁には、陛下のもとを、友人として必ずお訪ねいたします。」


「楽しみに待っておるぞ?」


 王の返事を聞くと、彼は無理やり視線を振り切るように、すぐにそこから出ていった。


 しかし、外に出た直後に、扉の前ですすり泣くサナと鉢合わせした。


 彼女はジョパルが出てきたことに気づいたが、顔をよそに向けて涙を流している。


 「サナお嬢様?」


 「こないで! 全部聞いてしまったわ! あなたは、私のもとを去ってしまうのですね。」


 「…」


 彼は何も言えなかった。



 突然ですが、急に多忙の身となりました。 そのため当分は連載を中断させていただきます。(今日までを除き)また更新可能のめどがついた際には活動報告という形でお知らせします。

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