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エッチなのはダメだと思います

 それから俺たちは旅を続けていた。村から歩いて2日たったころに村が見えたのでそこで1泊させてもらった。そこでは特に何事もなく、快く宿を提供してくれ、かなりのどかな村だった。もし俺がスローライフを望むなら、あんなのどかで穏やかな人たちと一緒に余生を送ってみたい。



 それから道沿い進んで今は野営の準備中だ。最初はかなり手こずったが、シリルに教えてもらいながら野営をマスターしていく。・・・死んだときは25でそこから修行して3年だから28歳の俺が俺の半分の年齢の子に教わる。情けなくて涙がちょちょぎれそうだ。


(まぁやったことがないのに見栄はるよりマシだよ!)



(確かにそれはそうなんだがな。なんていうか年上の威厳が・・・)



(威厳なんてその顔だけで十分だって!それ以上だしてどうするの!?)



(見た目の威厳なんざ意味ないだろ!?男はこういうとき頼りになるところを見せたいものなの!!)



(14歳の女の子に頼りにされてかっこいいとか思われたいってこと?このロリコン!!)



(ロリコンちゃうわ!!!)



 ついエセ関西弁が出てしまった。そんなときシリルが俺に話しかけてきた。



「準備終わった?」



「ああ。こっちは終わったぞ!」



 いつのころからか敬語はとれていた。それだけ打ち解けてきたのだろう。こんな強面な顔面凶器みたいな俺に気安く接してくれるなんて凄い子だ。



「それにしても旅をして私たちの村まで来てたはずなのに全然旅慣れてないんだもん。最初はビックリしちゃったよ」



「それについては面目次第もございません」



「まぁ私がナオトさんの旅の邪魔にならなくて良かったよ♪私なんかが一緒に行っても邪魔になっちゃうなぁって思ってたし、私も役に立てることがあって嬉しいよ!」



 この子メッチャ良い子!!!



「そういえば、シリルは成人の儀はどうするんだ?というかあの村ではどうしてたんだ?」



「あの村ではというか、私たちくらいの村では神官様が各地を回って成人の儀をするんだよ。冒険者を目指している子は小さな町から1か月に1回出てる定期便に乗って成人前に冒険者ギルドがある街まで乗せてもらってからそこで成人の儀をやるんだよ」



「なんでわざわざ成人前に?」



「成人前とはいえ、子供だけだと何があるかわかんないし、冒険者ギルドは成人になっていないと登録出来ない決まりになってるの。それと冒険者ギルドがある街で成人の儀を行うと、それを見に来た冒険者のスカウトの人の目に留まりやすいの。有用なスキルを手に入れた人をいち早くスカウトしたい冒険者と、早く冒険者になって成功者になりたい人の需要と供給が成り立ってるんだよ」



 なるほど。そういうことなら納得だけど、個人情報保護なんてこの世界にはないんだろうな。なんてオープンな世界。



「というか小さな町から馬車が出てるならそこを目指して乗せてもらった方が良かったんじゃないか?後はどこかで定期便を待つとか・・・は、まぁ流石に無理だっただろうけど」



 あの時はすぐにでも村を出ないといけない状況だったし、定期便も次いつ来るのか俺は知らないけど、1か月に1回の定期便がタイミングよく来ることなんてあるわけないしな。



「それが残念ながら、私たちがいた村の場所が悪くてね。その馬車が出ている町って言うのが、私たちが出た村から方角的に北東のほうにあるんだけど、問題はその間にある森でね。一度北に大きく迂回してから東に回り込むしかないから、歩いていくならそのまま冒険者ギルドがある街を目指したほうが結局速いんだよね」



「なるほど。そういうことなら仕方ないよな。ちなみにその成人の儀って絶対に皆の見てる前でやらなきゃいけないのか?こっそりとやってもらうこととかは?」



「お布施として銀貨数枚渡せばやってくれるらしいけど、それをやる人って貴族くらいしかいないって聞くよ」



 なるほど貴族か。平民の子と交じって貴族の子が一緒にやるわけにもいかないとかかな?まぁ皆の前で有用なスキルを貴族が手に入れたとなれば貴族スゲーとなるかもしれないけど、逆に何もなければスキルをもらった平民以下とみられる可能性もあるからな。それ以外にも貴族の子供ということは次期当主候補ということでもあるのだろう。下手に有用すぎるスキルを手に入れたら暗殺候補にあがるなんてこともあるかもしれないしな。こういう風に考えると貴族のほうが個人情報を大事にしているというのが分かるっていうのは情報はそれだけ大事だと思っているんだろう。逆に平民と交じって成人の儀を受ける貴族が居た場合、その当主はポンコツかもしれないな。



「貴族くらいしかやらなくてもお布施さえ払えば貴族じゃなくても平気なんだよな?じゃあシリルはお布施を払って成人の儀をやってもらう」



「えっ!?いやいやいや!?私なんて何処にでもいる村人の子供だよ!?スキルなんてそれこそ10人いたら3人いれば良いほうで、逆に10人居ても0人なんてこともあるんだから!?」



 ということはスキルの獲得は多くて3割。悪くて1割よりも低いって感じか。そんな希少なスキル持ちを大公開しながら喧伝するなんてアホだろ。



「シリルは信じられないかもしれないが、俺には人がどんなスキルを持っているかわかる鑑定のようなスキルがあるんだ。それをシリルに使ってみた結果、シリルには潜在的にスキルがあることがわかった。これからどんなスキルが付与されるのかわからないが、もし俺とこのまま旅を続けるつもりなら俺を信じてお布施を払って成人の儀をしてくれ」



「鑑定・・・それに私にスキルが・・・」



「もし街に着いた後、もともとやりたいことがあったのなら俺は無理強いはしないけど、スキルは出来る限り隠した方が無難だ。だから成人の儀は個人で受けた方がいいと思っている」



「私は・・・私はナオトさんの旅について行きたい!私に何が出来るのかはわからないけど、出来る限り足手まといにはならないようにするのでよろしくお願いします!!!」



「そうか。仮に聖魔法のスキルを手に入れたら聖女になれるかもしれないんだろう?それはいいのか?」



 というか、正直俺は彼女は聖魔法のスキルが発現するんじゃないかと十中八九思っている。というのも最初に感じた気配とあの悪魔に胸を貫かれたときに出た光の膜だ。あの光の膜は間違いなく聖属性で覆われた膜だった。あの光の膜を発動させたのは間違いなくシリルの両親だろうが、シリルの両親からは聖属性の気配は何も感じなかった。ということはシリルの中にある聖魔法の潜在能力を使って、無意識にあれを発動したんじゃないか。正直、荒唐無稽な気もするし、それが全て正しいとは思わないが、大筋では正しいとは思う。気になるのはシリルから感じる聖属性の気配が日を追うごとに薄れていること。これは彼女の体に聖魔法のスキルが定着していっているからと考えるべきか、もともとあの2人がシリルの傍にいたことで何かしらの現象が発動して、彼女の体から聖属性の気配が発せられていたのか。正直、仮を考えればキリがないことだ。



「確かに聖女になるのは夢だけど、それは夢のための過程だから。今はナオトさんの旅について行く方がずっと大事なんだよ!それに受けた恩も返さなきゃね♪」



「恩とか別にいいって言ってるのに。まぁでも、そういうことならこれからもよろしくお願いします」



 そういって俺は改めてペコリと礼をする。



「こちらこそ、改めてよろしくお願いします!」



 シリルも俺を真似たようにペコリと礼をする。



「ぷっ!あはははははは!」



 それはどちらの笑い声だっただろうか。俺たちはお互い大いに笑いあった。








 シリル視点



 最近ナオトさんと話すと緊張しちゃう!だってナオトさんってどう考えたって強面の勇者様ですよね!?あの人全く隠す気ないんですもん!!旅慣れてないし、戦闘は右に出る人は居ないんじゃないかってくらい物凄く強くて、いろんな魔法使いまくるし、なのに剣も扱えるなんてそんな超人、普通居ませんよ!!!



 かと思えばこの世界のことについてほとんど知らないし、なのに私なんかのことをいつも気にかけてくれるなんて!!そりゃもう私も、もうすぐ成人になろうかというのにいつまでも夢ばっかり見てちゃいけないっていうのもわかるけど、無理無理無理!!!意識しちゃうに決まってんじゃん!!!



 しかも鑑定なんてスキルの存在を私に教えてくれて一体私をどうしたいの!?



「シリル?上手くいかないか?」



 そうやってナオトさんは心配そうに聞いてくる。



「すいませんナオトさん!ちょっと難しくて・・・」



 そう言って私は謝る。いけない。集中しないと!



 今私は旅をしながら、ナオトさんに魔術を習っている。というかその前段階の魔力感知と魔力操作を習っている最中だ。まずはこれを習得しないと魔術は使えないらしい。魔術と魔法は違うのかと聞いたらナオトさん的にはかなり違うようだ。魔術構築がどうとか言っていたけど、魔力感知が出来ていない私にはチンプンカンプンだった。



「そうか。まずは魔力感知が上手くいかないと操作する魔力も分かんないからなぁ。そうだ!手を出してみてくれるか?」



「手?」



 私は言われるがまま自分の右手をナオトさんに向かって差し出した。そしてナオトさんはその手を握る。



「ナ、ナ、ナ、ナオトさん!?急に何を!?」



 私はナオトさんの手の感触を感じながら軽く混乱する。ナオトさんが求めてくれるならやぶさかではないが、まさかこんな外でなんて・・・



「いや落ち着けシリル!!これは1つの修行方法だ!」



「え?修行?」



「そうだ!魔力感知するなら自分の体内魔力を感じるのが1番分かりやすいんだ!だから俺が手を介してシリルの体内魔力をゆっくり操作する!特に問題はないと思うが異常が出たら教えてくれ」



「あ、なんだそうだったんですね。修行か。なんだ・・・」



 私は露骨にガッカリしてしまった。そんな私を見て訝しんだナオトさんは不思議そうな顔をしていた。



「そんなガッカリしたような顔してどうしたんだ?問題なさそうなら始めるが大丈夫か?」



「は、はい!大丈夫です!」



「なんで急に敬語になってるんだよ。よし始めるぞ。まずはゆっくり動かしてみるからな」



 そう言ってナオトさんは私の体の魔力を操作し始める。するとしばらくすると私の体の中を右手右足、左足左手と順番に何かが流れているような感覚がある。これが魔力?



「どうだ?今左腕を経由して右腕に戻ってきたがわかるか?」



「はい!なんだか魔力が動いていくたびに体がポカポカしてきました。それとマッサージされているみたいでちょっと気持ちいいです!」



 なんかこれはクセになりそう。



「それじゃあちょっとずつ循環スピードを上げてみるからな?そのスピードに感覚がついていけば魔力感知も問題なく出来るようになるはずだ!もし体にちょっとでも異常があればすぐに言ってくれ」



 そうしてナオトさんは私の体内魔力を操作し始める。だけどこれはちょっと()()()()()()()



「ナ、ナオトさん・・・ハァハァ・・・これはちょっとダメ・・・んあぁ!」



 その声を聞いたナオトさんはすぐに手を離した。



「ご、ごめん!大丈夫だったか!?」



 そう言ってナオトさんは凄く慌てていた。



「いえ・・・ハァハァ・・・ちょっと気持ちよすぎただけなんで・・・」



 これはすっごくクセになりそう。次からの修行のときは毎回やってもらわなければ!!





 ナオト視点



 俺は非常に焦っていた。シリルが少しでも強くなれるように魔術を教えることになり、まず魔力感知の修行に入ったのだが・・・



「ナオトさん!また魔力感知の修行お願い!」



「いや、魔力感知ならある程度出来るようになってるだろ?」



「でもナオトさんほど魔力感知出来ないし、ナオトさんが私の魔力を操作するのも勉強になるから!」



「いや、でもなぁ・・・」



 そう。あの日初めてシリルの体内魔力を操作した日からシリルは俺にシリルの体内魔力の操作を頼んでくるようになっていた。



(マスターがロリコンのセクハラ野郎になって私は非常にドン引きです)



 ドン引かれた!?



(いや違うんだって!?お前も一部始終見てたんだからわかるだろうが!?)



(でも女の子の手を無遠慮に握ったセクハラ野郎なのは間違いないよね?)



(ぐっ!?それを言われると反論出来ないけど、あの時はあれが1番効率がいいと思ったんだよ!)



(はいはい効率厨乙!)



 拝啓、父さん母さんそれに朱莉。お元気ですか。俺はもうダメかもしれません。俺は現在異世界に居るんですが、俺の専属サポーターが絶賛グレておりまして手に負えません。あと俺のサポーターは一体どこでこんな言葉を覚えて来たのでしょうか。



(は~!もうしょうがないなぁマスターは!とりあえずシリルちゃんの体内魔力を操作するときはゆっくりやること!確かにシリルちゃんの魔力を操ったあとは成長率が速いし効果はあるんだろうけど、あんなエッチな声出させるまでスピード上げるのは禁止!!!シリルちゃんにせがまれてもそこはマスターがなんとかしてよね?)



(はい・・・善処します・・・)



(なん!とか!して!よね!)



(はい!精一杯拒否します!)



(よろしい!)



 あれ?彼女って俺の専属サポーターなんだよな?なんでこうなった?



「こほん。シリル。魔力を操作はしてやるが前みたいにスピードを上げることはしない。ゆっくりやるからそれでなんとか感覚を掴んでくれ」



「え~!?どうして急に!?そもそもあの修行法をやってきたのはナオトさんでしょ!?」



 それを言われるとこっちも厳しい・・・が!



「そもそもあの修行方法は魔力感知が出来ないときに、少しでもヒントになるようにとやったんだ!それに俺の魔力感知は俺の師匠も認めるほどの才能だから、流石に今の俺ほどの魔力感知にまで極めようとしたら下手したら人生全部使う必要があるぞ!」



「む~!!!わかったよぉ・・・」



 ほっと一安心。とまぁこんな風にシリルに魔術を教えつつ最初の村を出て1週間が過ぎた。



 俺は現在シリルを背中に背負い街へ向かって道なりに進んでいた。



 何故シリルを背中に背負っているのかって?それはシリルが魔力を全て使い切ったからだ。本来魔力を使い切るのは動けなくなる関係上寝る前が一番効率がいいんだが、野営メインのとき昼間は俺が魔力を使い切ったシリルを背中に背負って運び、夜はテントの前でシリルが見張りをする。正直、俺たちのテントに近づいてくる気配がすれば分かるのだが、シリルが私も見張りをすると言って聞かなかったので最初の数時間を任せて、残りの数時間を俺が見張りをしたあと、起きてきたシリルに魔力を空っぽにさせて出発というのがここ数日のルーティーンだった。



 そんなとき俺たちの前に数人の女の冒険者っぽい人たちが立ちふさがる



「お前!こんな昼間からそんな少女を背負って何処にいこうと言うんだこの人攫いめ!」



 山賊の次は人攫いかと、この後の展開を予想しつつ俺は今にも切りかかってきそうな3人の女の人たちと対峙するのだった。

シリル「あんなに気持ちよかったのに何がダメだったんだろう」



アカリ「はじめましてシリルちゃん♪」



シリル「え!?あなた誰ですか!?」



アカリ「私はアカリ!よろしくね♪ちなみにここは本編とは特に関係のない場所。まぁ夢を見てるようなものだからあまり気にしなくてもいいよ」



シリル「はぁ・・・何を言っているのか分かりませんが、私に何かようですか?」



アカリ「なんでマスターが魔力操作してくれなくなったか聞きたくない?」



シリル「マスターってナオトさんのことですか?聞きたいです!!」



アカリ「それはね。シリルちゃんがあまりにもエッチだったからだよ!」



シリル「エッチ?」



アカリ「そうエッチだったの!マスターが魔力操作するたび物凄くエッチに見悶えたり、エッチな声あげたり終わった後なんてそれはもう恍惚とした表情してたんだから!」



シリル「そ、そんな!?」



アカリ「まぁシリルちゃんは気づいてなかったみたいだけどね」



シリル「これから私どんな顔してナオトさんの顔を見たらいいの!?」



アカリ「まぁマスターはそこまで気にはしてないから普通に接すればいいんじゃん?」



シリル「それはそれで複雑っ!?」



アカリ「気持ちは分かるけどあまり羽目を外さないようにね♪」

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