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神官に行ってきます2

「こちらが大聖女様の神殿になります」

「ありがとうございましたルウェル神官様」

「アリア様のためなら私は何でもしますよ」

「もう用ないのでさっさと消えてくれますかね。クソ野郎」


メイ……。


このまま二人を一緒に居させたらまた喧嘩が始まってしまうから、私はメイを引っ張って大聖女様の神殿に入って行った。


大聖女様の神殿の奥に入ると、天井や壁には様々な宗教画が描かれていた。

創世の物語や滅びの物語…様々なものがある中で私はふとある宗教画の前で足を止めた。


それは大罪を犯し罰を与えられた女神の物語。

魔獣に羽を食いちぎられ地に落とされた女神は二度と神には戻ることも出来ず絶望の中をただひたすら生きると言うものだった。

涙を流しながら魔獣により神の象徴である白い翼を食われる女神は何を思って涙を流したのだろうか。




「この神殿には沢山の宗教画がありますが、この絵は唯一神が神に罰を与える話なのですよ」


廊下の先から歩いてくる聖服の年老いた女性はそう教えてくれた。


「大聖女様ですか?」

「ええ」

「ご、ごめんなさい!!遅くなってしまいましたよね?」

「かまいませよ。私のところに治療に来る方は信仰がありませんからこの様な宗教画にさえ目を向けないのです。だから貴女のように興味を持ってくださる方がいることを嬉しく思います」


私もそこまで信仰はないのだけどこの絵だけは何故か目が離せなかった。


「この女神が与えられている絶望とは何なのでしょうか?」

「さぁ、それは私にも分かりません。地に落とされた女神がどうなったのかも詳しくは記されていないのです」

「記されていない?」

「ここにある宗教画は全て歴代の大聖女が神様から聴いたお話なのですよ。それを絵師が絵にしたのです」


そうなんだ…。

胸の奥がきゅーっと苦しくなった私はそっと自身の胸に手を置いた。


「それはそうと、この神殿までよく辿り着けましたね?中々入り組んだ道の先にあるので迷う人が多いのですが…」

「あ、ルウェル神官様に案内していただきました」

「…ルウェル?」

「はい、とても良くしていただいて。また後でお礼を言わせていただきたいです」

「そ、そう…」


何処か歯切れの悪そうな大聖女様を不思議に思ったが、時間も限られているため私は早速本題に入ることにした。

自身の不運な体質や魂が呪いによって穢れてしまっていることを話した。


「少し見せてくれるかしら」

「はい、お願いします」


大聖女様は私の胸に手を当てると呪文を唱えた。

そうすると金色の光がその手から放たれた。


「……これは…」

「どうでしょうか?」


大聖女様は汗をかきながら言葉を詰まらせた。


「貴女の魂には邪悪な気を放つ鎖が何重にも絡まっているわ」

「浄化すれば消えてくれるものではないのですか?」

「これだけ複雑に絡まっているのを無理矢理浄化したら魂が不安定な状態になってしまいかねないわ」

「そんな…。少しずつとかはできないんですか?」

「絡まっていると言ったでしょ?一つ解こうとすると他の鎖も解かないといけなくなるわ。それはその度に魂を危うい状態にするとい事になるわ」



そんな…どうすればいいの…。

私の不幸は一生このままなの…?


「お嬢様…」

「大聖女様…見ていただきありがとうございました…診療代はウチのメイドから受け取ってください。それでは失礼します」


心配するメイの声を無視して私はその場を後にした。



*・゜゜・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゜・*

何処へともなく私は歩いていた。

神殿の敷地は広くて正直な話迷子になっていた。

まあ今は一人になりたかったしいいか…。


綺麗な中庭らしきところにたどり着き、私はそこにある噴水に腰掛けた。

ふぅと溜息を吐き出すと、目の前に誰かが立ったのか自身に影ができた。


顔を上げるとそこには美しい銀色の髪に深紅の瞳の少女が立っていた。


「天使が本当にいるならこんな姿なのかな」なんて考えてしまうほど神秘的な少女…。


聖服を着てないってことは迷子かな…。


「どうしたの?お父様やお母様は?」

「あたしにはそんなのいない」

「え…」

もしかして孤児なのかな?


「えっとお名前は?」

「アカーシャ」

「どうやってここに来たの?」

神殿にこんな小さい子一人で来れるわけがない。

誰か付き添いがあるはずだけど。


私の言葉に少女は何故か俯いてしまった。


「……ア、やっぱり……からないの…?」

「……ごめん、何て言ったの?」


そう言うと少女はいきなり私に抱きついてきた。


びっくりして固まっていると、少女は私の耳に口を近づけて囁いた。


「———…」


「何で」…そう問おうとした瞬間には少女の姿は消えていた。



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