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待ち伏せされました


「ふぁ〜……」


早朝に起き出したフィオナはまだ眠りたい気持ちを押し殺して帰る準備を始める。

治療院に皆が出勤してくる前にシスターに鍵を返して家に帰る為だ。


今日休みの私がここにいたらきっと凄く心配をかけてしまう。

それは望んでいないし、勤務変更に関しては院長に直接頼むから明後日出勤した時で良いだろう。



顔を洗って、使ったベットを整えたらほぼ準備万端だ。


あとは、持って来てしまったオオカミ獣人の荷物を持って治療院を出る。


(この荷物どうしようかな…)


とりあえずドアに鍵を掛けてシスターへ返却しに行く。

昨日鍵を渡してくれたシスターに鍵を渡してお礼を伝えてから、私が襲われたことを他の人には言わないよう、もう一度頼んでおく。頷いてくれたから大丈夫だろう。


昨日攫われたばっかりで1人でまた歩くことに少し恐怖心もあるが夜よりは明るいし人通りもある。

最初の最悪な印象とは違う可能性も出てきたし、

それにもし悪人だったとしても昨日の夜のように昼間から堂々と攫ったり出来ないはずだ。

そう思いながらも、もう会えないことにやっぱり少し残念に思ってしまう。



(早く帰ってお風呂に入って二度寝しよう!)


考え込んでも仕方がない!昨日は色々頑張ったのでとっておきの高級アロマオイルを湯船に入れて癒されよう。

高級アロマオイルはネロという花の香りで、前世ではスイートピーのような甘くて優しいお花の香りがする。私が大好きな香りだ。

花はスイートピーとは全然違って小さな白い花がたくさん咲く、とても可愛いのでネロの花の季節になるとしょっちゅう買ってきて家に飾ってるくらい大好きだ。

アロマオイルより生のお花の方が香りも良いのだが、ネロの花は春にしか咲かないのでその時期しか香りを楽しむことができなかった。


でもつい最近ネロのアロマオイルが開発され販売されるとなったのですぐに買いに行った。

手に入ったけどアロマオイルには高すぎる私の給料3分の1を掻っ攫っていった。

とても高級だから特別な日限定にしていたが今日は特別だ。



少しだけ上がった気分のまま治療院を背に歩き出す。

治療院を出ると、門の前に暗めのシルバーの毛を持つオオカミ獣人がこちらに背を向けて立っていた。


(診察時間を間違えてるのかな?後3時間は誰も来ないし、ずっと立って待つのも大変だろうな…軽く声だけ掛けておこうかな)


「あのー、治療をご希望の方ですか?すみません。治療開始は10時からなんです。」


振り返ったオオカミ獣人は私を見るなり、手に持っているものを差し出してきた。

目の前に差し出されて視界いっぱいに広がったのは無くしたと思っていたお気に入りの鞄に書かれたお花の模様だった。


「すまなかったっ!」


とオオカミ獣人は頭を下げる。


「!?」



とりあえずよく分からない状況を整理しよう。

私が昨日無くした鞄を持っていて、私に謝っている。

これは目の前に立っているオオカミ獣人が昨日のごろつきで間違いない可能性が高いのだろう。いや、それしか考えられない。


ただ毛の色が全然違う。

ごろつきは毛が黒だった。

今目の前にいるのは同じオオカミ獣人でも毛が暗めのシルバーだ。

陽を浴びてキラキラと輝いていて、あの汚いオオカミ獣人とは似ても似つかない。


「えっと…昨日の私を攫ったオオカミ獣人で合ってます?」



「……………………………そうだ」



(合ってた!!どうしてこんな早朝から待ち伏せしてるのよ!?…毛の色だってどうやって変えたの?聞きたいことが多すぎるっ!)



「すまなかったって…?」


「…………………怪我を…させた」


(これは…昨日の私の推理が当たったのかな…?)


オオカミ獣人はずっと頭を下げたまま質問に答えている。

まだ警戒を解くには早いので頭は下げさせたまま次の質問をしよう。


「昨日私を攫ったのは何故ですか?」


「それは………………………手当てを……」


私が聞きたかった答えに少し心が浮ついた。


(やっぱり悪人じゃなかったみたいね)


少し力んでいた肩の力を抜くと今私達がいる場所を思い出した。

ここは街の端の方とはいえ人通りがある。

つまり通りすがりの人からのすっごく見られている。


(そりゃあ見るよね!大きな獣人に深々と頭を下げさせてる女がいたら、私も気になって見るわ!)


ここは治療院の前だし知り合いも近くを通る可能性もあるし、シスターだっていつ出てくるかわからない。

こんなところを見られたら変な噂になるかもしれないし、とりあえずオオカミ獣人に頭を上げさせて、場所を移動しないと…。


「とりあえず!頭を上げて下さい!!」



「しかし……まだ許して貰えていない………」


「ぶつかって絡んだり、攫ったり、ぶっとんだ行動をする癖になんでそこは律儀なの!?………許すから頭をあげて!」



必死に頼むとようやくオオカミ獣人はおずおずと頭を上げた。


「とりあえず場所を移動しましょう!着いてきて」




フィオナはオオカミ獣人の返事を聞く前に歩き出した。





気づけばもう8話。

10話で終わらない可能性が出てきました…。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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