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傷薬は何のために?


疲れもピークだしこのまま寝てしまいたい。

そんな欲に負けてしまいそうになるが、清潔感のないオオカミ獣人に触られたし、これから治療院のベットで寝かせてもらうつもりだからこのまま寝るのも気が引ける。

既にベットに飛び込んでしまっているがそこは大目に見てほしい。


欲を言うならお風呂に入りたいが、治療院にはないので濡らしたタオルで拭くだけで我慢しよう。


(絶対に明日は朝一で帰ってお風呂に入るぞー!)


とりあえずタオルを出そうと自分の鞄を探す。

荷物を持ったままベットに飛び込んだので近くにあるはず…出来るだけ体を動かしたくなくて顔を上げずに手探りで鞄を探す。

手に袋の感触があたったがいつもと感触が違う…おかしいと思って目で確認しようと重い体を起こし見たのは見慣れない布袋だった。


「あれっ!?」


手に持ってしっかりと確認するがどう見ても私の鞄ではない。

嫌な予感がするが、私の鞄がないかベットの周りを隈なく探したがどこにも無かった。


「そんな…」


そういえば鞄をどこまで持っていたのか記憶がない…

オオカミ獣人に攫われた時に落としたのかもしれないし、連れ込まれた部屋で無くしたのか、分かるのは私の鞄と中身が戻ってくる可能性がほぼないという事だけだ。


逃げる時に焦っていたとはいえ全然違う荷物を引っ掴んで持ってきてしまうとは…自分でも呆れてしまう。


(あの鞄お気に入りだったのに…)


私が持っていた鞄は1年前にあったお祭りの出店で行商人のおじさんから買ったもので、クリーム色の生地に色とりどりのお花の模様が書いてあってとても可愛い。


遠い国で作られたものらしく仕入れが困難で、もう手に入らないと言われ衝動買いしたものだったが、

この国には無いデザインと軽い布なのにしっかりした造りで重いものを入れても破れなくて使い勝手が良くお気に入りだったのに、無くしてしまったことがショックだしできれば探しに行きたいくらいだが、流石に1人で夜出歩く気にはならない。


鞄は諦めるしかないかと視線を下ろすと目に入る私のものではない荷物。

逃げ出す時に掴んだものだから、オオカミ獣人のもので間違い無いだろう。


(そもそもあの犬が攫ったりしなければ鞄を無くすこともないし、今頃ゆっくりお風呂に入って心地よく寝ていたのに!)


ムカムカする感情のまま腹いせに、どんなものが入っているのか気になった布袋を開けて中を見る。


中には小さな袋とギルドカード、あとは色々な形の小瓶が大量に入っていた。


(ごろつきなのにギルドに所属できるの…?)


ギルドに登録するには年齢や性別関係なくできるが揉め事を起こすと除名され、2度と登録することができない。

ギルドから除名されると信用がなくなって個人でも仕事を受けることが出来なくなるのはこの世界の常識だ。


ギルドは仕事の受注から紹介、素材の買取や依頼主との揉めごとも間に入って解決してくれるので戦うことを仕事にしている人はそこまでやってくれるギルドから見放されたくないだろうし、どんな荒くれ者達でもルールを守って無駄な揉め事は起こさないと聞いていた。


ギルド内での暴力沙汰や喧嘩でも除名されると聞くので、かなり厳しいと思っていたが…揉め事だらけのごろつきが登録できているのだからそこまで厳しくないのだろう。


でもギルドに訴えたら注意くらいはして貰えるかもしれない明日このカードを持ってギルドに行くことも考えないと…。



一旦ギルドカードのことは置いておいて袋の中身の続きを見ていこう。

小さな袋は財布のようでコインがたくさん入っていた。

かなり稼いでいるのか羽振りが良さそうだ。


(こんなにお金があるんならそういうお店に行けば良いのに…)


やるせない気持ちを紛らわす為に袋の中をみる。

財布とギルドカードを取り出したら袋の中に入っているのは大量の小瓶だけだ。

小瓶を全部ベットの上に広げてみると、中にはクリームや液体が入っていて、それぞれラベルがついていた。

ひとつ小瓶を手に取ってラベルを読むと傷薬と書かれていた。


(薬…?)


あのオオカミ獣人は怪我でもしていたのだろうか?

別の小瓶のラベルを読んでみると、こちらにも傷薬の文字が。

全部で20個近くある小瓶全てのラベルを読んだが全て傷薬だった。


(全部傷薬なの?どんだけ怪我してるのよ…ってあれ?)


そういえば前に治療に来たクマ獣人のおじさんが、獣人は傷薬を使わないって言ってた。

毛があって塗りにくいし獣人の厚い皮膚は人間の皮膚ほど浸透しないので塗ってもそんなに意味がないらしい。少しの傷なら舐めて自己治癒力で治してしまうそうだ。


(そんな獣人がどうしてこんなに傷薬を買うの…?)



そういえばベットに降ろされた後右手をすごく見てた気が…右手は昨日オオカミ獣人に手を握られた時に傷が出来た場所だ。



「…いやいやいや!まさかねー!!」


でももし傷をつけた事を申し訳なく思って、こんなに傷薬を買ってきたのだとしたら?そういえば右手を見て傷がないとか何とか言っていた気がする。


(攫われたのは怖かったけど手当ての為に連れ去って、いざ傷を確認しようとしたら傷が消えていて驚いていたの?)



そう考えると今までの悪人の印象からの物凄いギャップだ。

しかもそんな良い人にモテないやら暴言を吐いたことに少し罪悪感が湧いてくる。




少し傷付けただけでここまでする?

噂のごろつき達が怪我をさせたとしてここまでするとは思えない…。



「いやいや!良いように考えすぎよ!怪我させられて攫われたんだし!………もう今日は疲れたし体を拭いてもう寝よう…」


自分の荷物がないので、治療院のタオルを借りて体を拭く。


体を拭きながら別の事を考えようとしても、何故かあのオオカミ獣人のことを考えてしまう。

ごろつきは悪人なのに気になって仕方がない。


傷薬も全然違う理由で持っていて、次会った時には乱暴される可能性だってあるのに、傷薬は私の為に買ったの?って聞いてみたいと思った。


でもまた夜に待ち伏せされない限り会うことはないだろうし、しばらくはシフトを変えて貰って夜に1人で帰らないようにするつもりだから聞くことはないだろうな…。


(会ったばかりのそれも汚いごろつきの事が何でこんなに気になるんだろう?)


悶々と考えていたが、体を拭き終えベットに入って目を閉じるとすぐに意識は眠りに落ちていった。


書きたい事が多くてなかなか展開が進まず申し訳ないです、、、ここまで読んでいただきありがとうございます!

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