ブチギレちゃいました
何も反応がないフィオナにオオカミ獣人が持ってた布袋をフィオナの横に乱暴に投げ、手を伸ばしてくる。
(襲われるっ!!)
やはり昨日のことを相当根に持って待ち伏せしていたのだろうか…ただ犯されて気がすんだら帰してもらえるのか…ひょっとして私はここで殺されてしまうのか…どんどん悪い方へ思考が流されていく。
目をつぶって身構えると優しくでも振り解けないくらいの力で右手を掴まれた。
襲いくるであろう痛みや衝撃に備えて身を固くしているが、いつまで経っても何もない。
(………あれ?)
「…傷がない……」
どこで怒りのスイッチが入ったのか分からないが、ずっと恐怖を感じ、その恐怖に備えようと力の限り警戒しているところに意味不明なことを言われブチッときた不安だったものが怒りに変わった瞬間だった。
すかさず手を振り解き、
「ほんとに何のつもり!?
女の子に相手にされないからって絡んだり攫ったりするのはモテないって自分から言いふらしてるって自覚ある!?
………それに私汚い姿の人とは付き合えないから!!」
色々と思ったことそのまま口からぶちまけてハッとなる。
(まずい…またやってしまった!)
昨日のように地雷を踏んでしまったかとオオカミ獣人をチラッと確認すると、一気に怒鳴り散らされたことで言われた内容が理解出来ていないようでポカーンとした表情のまま動かない。
少し冷静になった頭で今が逃げる最後のチャンスなのでは?と考える同時に行動を起こす。
体を起こす勢いそのままにオオカミ獣人を思いっきり押し倒す。
まだポカーンとしていたのにバランスを崩すくらいで倒すことは出来なかったが逃げる隙ができたと思う。
それと同時に横にあった荷物を引っ掴んでドアへと走り出す。
ドアに鍵はかかっておらず真っ直ぐに出口まで走り抜けた。
建物から出ると、攫われた時に見た景色を頼りに無我夢中で大通りを目指す。
オオカミ獣人との足の長さの違いか思ったよりも遠く感じたが大通りに出た。
大通りには数人の人がいることに少し安堵し後ろを振りかえる。
あのオオカミ獣人が本気で追って来ていたら大通りには辿り着けなかっただろうが、追ってくる気配はなく逃げられたことにホッと息をついた。
家に帰ろうかと思ったが流石について来られたら怖いので今日は治療所に泊まらせて貰おう。
治療院にはベットもあるし教会にはシスターもいる、家で1人でいるよりは安心だろう。
流れてくる汗を手の甲で拭いながら早歩きで治療院に戻る。
無事教会に着き、シスターに軽く事情を説明して治療院の鍵を貰う。
シスターにも心配をかけてしまったが仕方がない、別の言い訳を考える元気もなかったのだ。
治療院に入り鍵を閉めて、1番近いベットに倒れ込む。
「はぁ〜〜〜…」
まさか攫われるとは…やはり言い返したのが恨みを増長させてしまったのか…流石に反省する。
これからはイラッとしても少し考えてから話すようにしよう。
このまま考えることをやめて眠ってしまいたい。