気を取り直して出勤します!
「うーん……まぶしぃ……」
昨日疲れて適当に閉めたカーテンの隙間から容赦なく朝日が顔を照らす。
早く眠ったからかいつもよりスッキリ起きることができ身体も軽い。
伸びをして縮こまった身体を伸ばして気合いを入れる。
「んーっ!今日も頑張るぞー!」
昨日の晩食べ残したパンを丸齧りしてお腹を満たす。
サッと着替えて薄く化粧をしたら出勤準備完了だ。
少し早いが今日はやることが多いので家を出る。
気分も軽く職場へ到着すると、先に出勤していた先輩に声を掛ける。
「ローゼさんおはようございます!早いですね!」
「おはよ〜。フィオナはいつも元気ね〜」
この人は先輩のローゼさん。
普段はおっとり優しい先輩なのに仕事中はテキパキと仕事をこなすし、後輩への指示が的確で知識も豊富な尊敬する先輩だ。
「フィオナは今日一般診療担当だったよね?」
「はいー…そうなんです」
ちなみに私がなんの仕事をしているかと言うと、教会の一角で治療士として働いている。
治療士は前世でいうと医者のようなものだが、私たち治療士には治療できないものはない。
前世の医者や研究者が聞いたら発狂するよね。
死んでさえいなければ病気や怪我、腕がなくなっても元通りに治療できる。
治療士がいれば全てなら怪我や病気を治せるのだが、治せる範囲は魔力量に比例する。
少しの切り傷や軽い風邪なら少量の魔力を数秒当てるだけで治すことができるのだが
怪我や病気の重症度によって消費する魔力量が上がって、魔力を当てる時間も長くなるので、無くなった部分を一から作り直すのは相当な魔力が必要になる。
当たり前だが治す為に必要な魔力量がなければ治すことはできない。
そこそこ魔力の多い私でも魔力が満タンの状態で腕を1本生やすのが精一杯だ。
この治療院では治療士が5人いるため、1人で治療不可能な場合でも複数人で治療することが可能だ。
魔力量は生まれた時に決まっているのでいつ重症な患者が来ても対応できるようにするには治療師の人数が重要になってくる。
多ければ多いほど良いが治療士になれる人は魔力量が平均以上である事ともうひとつの条件をクリアしないといけない。
もうひとつの条件とは光属性を持っていること。
火、風、水、地の4属性と光と闇の2属性がある。
皆さんならお気づきだろうがこの光と闇が少ない。
光属性であること、魔力量が多いこと、この2つが絶対条件なので治療士の数は圧倒的に少ない。
なので治療士は求められる存在であるが、いつも人材不足だ。
そのせいで治療費は高めの設定になっている。
基本的に擦り傷や軽い風邪くらいは比較的安く手に入る薬師が作った薬で治し、薬ではどうしようもない病気や怪我は治療師に頼むのが一般的だ。
なので治療院に来る人はお金持ちや下級貴族もしくは、薬では治らない重症の患者のどれかになる。
働き始めた頃は重症で運び込まれた骨や肉ひどい時は内臓が飛び出た人を見て半泣きで時には吐きながら治療していたが、今では内臓が飛び出していても顔色変えずに元の位置に戻せるし、なんなら飛び出した内臓で損傷が1番酷い場所がどこかわかるようになった。
慣れって恐ろしいね…
そんな私が治療士になったのは、
10歳になる頃にこの国の子供たちは魔力測定をして属性と魔力量を調べたことが始まりだった。
私はこの測定で光属性でしかも魔力量がそこそこ多いと分かり、とんとん拍子に学校卒業後治療士になった。
前世からの社畜気質と、どうせなら前世ではできない仕事がしたかった私にとっては天職だった。
やっぱり感謝されるのは気持ちがいいし、少し治療士であるプライドなんかも芽生えてきた気がする。
お給料も良いし職場の人間関係も良いので辞める理由が見つからなかった。