表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

ゴロツキに絡まれました


「おい…聞いてんのか?」


低い重みのある声に今の状況を思い出し一気に思考が戻ってくる。



今日は珍しく仕事が早く終わりまだ陽が出ている時間に帰ることができたので、久しぶりに料理でもしようかと

足取り軽く買い物をして帰宅する途中だった。


買いすぎた食糧が入った紙袋を抱えて歩いていたら、おまけで貰ったリンゴが袋から落ちそうになり慌てて抱えなおそうとしたら、何かにぶつかり尻もちをついてしまったのだ。


何が起こったのかわからず声も出ない状況で耳に入ってきたのが、「おい、嬢ちゃん危ねえじゃねえか」だった。


慌てて視線を上げると、黒いふさふさの毛にするどい眼光の藍色の瞳、少し開いた口からは鋭い犬歯が見える。

服はあまり綺麗とはいえない格好で清潔感の欠片もない。


(最近噂になっている獣人のごろつき…?)


最近治療院でも注意喚起が出ている獣人のごろつき集団だ。

いろいろな街で好き勝手に暴れては捕まる前に別の街に移動を繰り返しているらしく、被害は多いのに捕まえられていないらしい。

そんな集団がこの街に来たと噂になってから1週間も経っていないが、被害者の数は少なくない。

酒場で酔っては暴れてお店を壊したり、暴力でお金を巻き上げたり、今私がされているように若い女の子を連れ去って傷物にしたりとやりたい放題だ。


(さっさと捕まえて2度と牢屋から出られなくして欲しい…切実に…。)


厳しいことを言っているかもしれないが現に今被害を受けているのだから許してほしい。



そんなことを考えていると、何も反応しないフィオナに業を煮やしたのかオオカミ獣人が座り込んでいたフィオナの右腕を掴み引っ張って立たせた。


「……近くで見ると可愛い顔してるじゃないか」


急に顔が近くなり緊張で身体が固まってしまったフィオナは何を言われたのかわからず、ただただ獣人の顔を見つめる。


「!!………ぶつかった詫びに酒の酌でもしてもらおうか!」



フィオナはやっと思考が追いついてきて、言われたことを理解した。



(近くで見ればって遠くから見ても可愛いのに!!)



自分でも今怒るところはそこじゃない気もするが、少しぶつかったくらいで酒の酌をさせようだなんて冗談じゃない。

そもそも酌だけでは帰して貰えないことは容易に想像がつく。


この状況を逃れる為にまずは掴まれている腕を力一杯振り解く。


「気安く触らないで!ぶつかったのはお互い様であなたは転んでもないじゃない!」


オオカミ獣人は腕を振り解かれたことにびっくりしたようで少しの沈黙が流れた。




「………ふざけんな」




(あっ………やばいかも…)


納得できないことを言われると黙っていられない性格が出てしまった。

悪い癖だと分かっていながら直せていなかったことに取り返しが付かない状況になってしまった。


するとオオカミ獣人が逆上してまた右腕を掴もうと手を伸ばしてきた。


咄嗟に避けようと腕やさを引いたが、少し遅かったのか鋭い爪が腕にかすった。



掠った所を見ると3センチ程の線が入っていた。

そこまで痛くないし浅い傷だと思ったら、時間差で血が垂れてきた。


「あっ!血が……」



「っ………!!」


オオカミ獣人はまさか掠ったくらいで血が出るとは思っていなかったらしく、動揺しているのかすぐに何かしてくる感じはない。



(力では絶対に敵わないし……どうしよう………)


フィオナが切り抜ける方法を思案していた時に急に大きな声が割り込んできた。



「あんたっ!!何してんだ!!女の子に怪我させてるんじゃないかっ!?」


「あっ……いや………」


「あんた最近やってきた獣人のごろつき集団の1人だろっ!?本当に碌でもないね。まだ去らないつもりなら自警団に突き出すよ!」


「違う!俺はごろつきなんかじゃ「嘘いうんじゃないよっ!」



(……救世主!?…)



「ほらっ!さっさと行きな!」



「くそっ…!!」



オオカミ獣人は名残惜しげに私を見つめてから街の方へ走り去って行った。



「あんた大丈夫かい?」


「すみません。本当に助かりました…」


「最近獣人のごろつきの集団が騒ぎを起こしている噂を聞いたことあるだろう?女の子は特に狙われやすいんだ。気をつけるんだよ。」


そう言うとおばさんは私が落とした食材を拾うのを手伝ってくれた。

拾いながらおばさんの話を聞いたら、おばさんは隣町に住んでいて娘さんの出産の手伝いに偶々この街に来ていたらしい。


(おばさんが来てくれて本当に助かったぁ……)


おばさんに何度もお礼を言っておまけでもらったりんごをお裾分けして別れた。

娘さんがりんご好きなんだそうで喜んで貰えたから少しは恩返しが出来たようで嬉しい。


今日はせっかく早く帰れたけどゴタゴタで疲れた。

料理するのは諦めて買ったパンをそのまま齧って寝てしまおう。


オオカミ獣人に付けられた傷は浅かったのか血はすぐに止まったし傷口を綺麗に洗えば2.3日で塞がるだろう。



いつもより早く布団に入ると疲れからかすぐに意識はなくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ