正真正銘のごろつきが登場です!?
それから私とジンは私が仕事で遅くなる日は家でご飯を一緒に食べる日々を過ごしていた。
だいたい1週間に3〜5日はそんな感じだったと思う。
最初は手の込んだ料理を!と意気込んでいたけどほぼ毎日料理を作るのは結構大変だと気づいて、手軽な料理かしんどい日は屋台で買って帰ったりしている。
前はジンが迎えに来た時にはお肉を持って来ていたけど、何のお肉なのか帰ってからでないと分からないから、事前に献立を立てられないので、すぐにこのルールは変更した。
代わりに迎えに来たその足で食材を買って帰ったり、まとめて買って翌日や翌々日に回すようになった。
その時のお金は全てジンが払ってくれている。
どのくらい仕事をしているのかどのくらい稼いでいるか分からないが、食材の値段くらいは余裕で払ってくれている。
ジンは狼らしくお肉が好きで、野菜が苦手のようで絶対に買おうとしないので、私が買うのを止めてくる攻防は恒例になっている。
狼ならお肉だけでもいいかもしれないが、獣人だし栄養は必要だろうから毎回それなりの量をジンのお皿にのせている。
軽く文句は言うが毎回食べきっているから、本人も必要性を感じてるんじゃないかと思う。
そんな穏やかな日々だったのに、数日前ジンと買い物中に少し離れてしまった私が正真正銘噂のごろつき達が絡んできた。
やっぱりというか、ジンの時とは比べ物にならないくらい乱暴で話を聞かない奴らだった。
「おっ!可愛いねーちゃんがいるじゃねーか」
「なかなかだな…連れていこうぜ!」
不潔な見た目の多分イヌの獣人2人組に立ち塞がれて腕を掴まれ、路地裏に引き込まれてそうになる。
(!!??……やばい!薄暗い路地裏に連れていかれたら逃げ場はなくなる…ジンは…)
周りを見渡すが見つからず、仕方がないジンが来るまで時間稼ぎしないといけない。
大きな声を出そうと息を吸った瞬間、イヌ獣人の1人が横へ吹っ飛んだ…と思ったら腕を掴んでいたもう1人も後を追って吹っ飛んでいった。
状況についていけず、吹っ飛んでいるイヌ獣人を凝視していたら視界いっぱいにジンの顔が映った。
「フィオナ!!怪我は!?」
「っっ!?…怪我はないわ」
するとジンは優しく私の手を取った。
自分では気づいていなかったが掴まれた手首が赤くなっていた。
ジンはそれをとても悲しそうに見つめている。
「……すまない。俺がフィオナを見失ってしまったから危険な目に合わせてしまった…」
「そんな事ないわ!!私が勝手に離れてしまったのよ!それに…あなたがいなかったら今頃どうなっていたか……ありがとう。ジン」
ジンは少し考え込んだ後私の手を離した。
「…さっ!買い物のの続きをしましょう!これ以上晩ご飯が遅くなるのは勘弁よ」
「ああ…そうだな」
ジンはそう言うと手を差し出した。
「?」
「…手を…もうはぐれないように」
「!?」
確かにさっきも人が増えてきたところで、はぐれてしまった。私はジンが後ろにいると思っていたが、ジンは私を見失っていたらしいし手を繋ぐのが1番いい。
ジンの手に手を乗せて軽く握るとしっかりと握り返された。
いざ手を繋いで歩き始めると、ジンの温もりと安心感を感じると同時にデートしているようで意識し始めると少し気恥ずかしくなった。
それから残りの食材を買い終え私の家に帰り調理し、揃って晩ご飯を食べた。
いつもと変わらない状況のはずなのに、ジンが何かを考え込んで口数が少なくなっているのが少し気になった。
次の日からのジンはいつも通りだったが、迎えにきて一緒にご飯を食べる日常に手を繋ぐことが追加された。
買い物中少しでもジンから離れることは許されなくなった。
それを面倒くさいと感じながらも、言う通りにしているのは…まあ…そういうことだ。
勤務終了後、いつもジンが待っている治療院の門の前に向かう。この日は少し遅く20時頃に迎えに来て貰った。
「お疲れ」
「迎えに来てくれてありがとう」
いつものやりとりをして新しく増えた行動の手を繋いで歩き始める。
昨日の買い物の時に今日の分の食材を購入していたので、このまま帰って調理するだけだ。
いつものように料理して一緒に食べ、たわいも無い会話をし、後片付けまで終えるとそろそろジンは帰る時間だ。
見送りのため玄関まで着いて行くとジンは今まで見たことがない真剣な表情で私の手を取った。
「……すまんがしばらく送り迎えは出来なくなる」
「……えっ!?…どうしてなの?」
「大きな仕事が入った」
「そう…なのね………いつ終わるの?」
「分からない」
「その仕事が終われば、またご飯食べに来る?」
「…ああ。その時はあのオル鳥の料理を作ってくれ」
「……ふふっ!分かったわ!……怪我に気をつけてね」
「分かった……俺が迎えに行けない間は帰る時間は院長に言って調整してもらえ。…………あとは帰る時は近道だからと人気の無い道は通るな。家に着いたらすぐに鍵を閉めろ。…他には…」
「もう!分かってる!!…ジンがいない間は守るわ」
「…ふっ……出来るだけすぐに帰る…だから待っていてくれ」
そう言うと握っていた私の手を離して帰っていった。
離された瞬間手に感じた寒さが嫌に体温を奪っていった気がした。
次の日から宣言通りジンはフィオナの前に現れなくなった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
大変遅くなり申し訳ないです…。
ようやく終盤!年内には完結予定です。




