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送り迎えは必要ですか?

10話目です。

終わりませんでした…。

もう少し付き合ってくださると嬉しいです!


そんな時グーっとお腹がなった。

紛れもなく私のお腹が鳴った。

昨日の夜も朝ご飯も食べてないから胃袋も限界だったのだろう。


(でも今は鳴って欲しくなかった!!かなり大きな音だったから絶対に聞こえているはず…。)


「…そこで待っていろ」


恥ずかしくて思考停止している間にジンは走って公園を出て行ってしまった。

あっという間のことで何も反応出来なかった。

攫われた時も思ったが足が速すぎる。


もし財布を取られても追いつけないなー…なんて考えていると2.3分程でジンが戻ってきた。


白くて丸いものを腕にたくさん抱えている。

ベンチに着くとジンは抱えている白いものをひとつ差し出してきた。

差し出されるままに受け取ると香ばしい香りをさせるホカホカの暖かいパンだった。


(…?これトルトだわ!)


受け取ったのはトルトと言って、この国のメジャーな朝ご飯だ。

柔らかいパンに香ばしいソースを塗ってお肉とレタスなんかを挟んだお手軽ご飯だ。

パン屋さんでも売っているし、露店でも売られていてお店によってソースや具材が変わるので食べ比べる楽しみもある。ジンは近くのお店まで走って買ってきてくれたのだろう。


「ありがとぅ!」


言い終わる前にかぶりつくと香ばしいソースと柔らかいお肉に感動する。


「これっ!すっごく美味しい!トルトはよく食べるけどこんなに美味しいトルトは初めてだわ」


「…そうか…まだあるから遠慮せず食べろ」


「!!…うん!」


せっかく買ってきてくれたんだから有り難く頂戴しよう。

ジンは私が食べる姿を見つめている。

気になるが今は食欲を満たす事を優先する。

黙々と食べ進め、ひとつ食べ終えるとスッと次のトルトが差し出される。

まだ食べ足りないと思ったところだし、お言葉に甘えていただこう。

空腹も相まって最高に美味しいトルトはいつもは考えられない量がお腹に入った。


(はあ〜…食べた食べた…。いつもは1個でお腹いっぱいなのに、このトルトは美味し過ぎて3個も食べてしまったわ…)


体重が増えるだろうが今は満足感に浸らせて欲しい。


「もう終わりか?…遠慮せずもっと食え」


「もうお腹いっぱいよ!食べられないわ。ありがとう…」


「…そうか」


ジンはそう言うと10個以上あったトルトを次々にお腹に収めていく。

そんなジンを眺めていると、だんだん眠気がやってきた。

食欲が満たされたからか、次は睡眠欲求に襲われる。


(我ながら欲求に正直な体ね…)


ジンは最後のトルトを飲み込むと口の周りについたソースを大きな舌で舐めとるとこちらを見た。



「…送る」


「え?あぁ…家に送ってくれるの?」


ジンはまたコクッと頷くとベンチから立ち上がった。

つられてフィオナも立ち上がるとジンは公園の出口に向かって歩き出した。


慌ててジンに着いていく。


治療院の前までくると、ジンはこちらを振り返って家はどちらの方行か聞いてきたので、簡単に説明するとすぐ分かったようだ。


歩き始めると先程のように前を歩くと思ったが、今度は速度を落として私の横を歩いている。

先程は早歩きをしてやっと追いつく速度だったのに、いつの間にか私が歩いても横に並べるくらいの速度になっていた。


早朝の物静かな時間帯から少しずつに人が起き出し、話し声や足音が少しずつ増えてきた。

いつもは今よりは2時間後くらいに出掛けるので、もっと人が増え活気があって賑やかな風景しか見たことがない。

いつもと違う街の様子を少し不思議な感覚で歩くと、ジンが話しかけてきた。


「仕事は…いつもあの時間に終わるのか?」


「あの時間?…日によって違うってかな。昨日は終了時間に患者さんが来て治療してたから遅くなったの。…でも1週間に半分くらいは似たような時間ね」


(本当は昨日の攫われ事件でシフトを夜にならないよう調整して貰うつもりだったけど、ジンはごろつきじゃなかったし、また攫われることは無さそうだ。別に変更して貰わなくても大丈夫かな)


「…これからもあの時間に帰る事があるなら、もっと近くに引っ越した方がいい」


「分かっているんだけど今の家にはお風呂があるから引っ越したくないのよねー…」


「………風呂?」


「うん。お風呂。」


「…確かに風呂のついている家は少ないだろうが、それよりも女の1人歩きは危ないだろう」


「ふふっ!あなたがそれを言うのね?」


「…………っ!」


「冗談よ」


少しからかったら通常でも鋭い目に睨まれてしまった。

でも不思議なくらい怖くなかった。


「あっ!着いたわ。ここが私の家よ」


「…ここか」


「ええ。ここまで送ってくれてありがとう」


「いや、元はと言えば俺の責任だ…だから」


(その通りだけど、そこまで責任を感じられちゃうと、ブチギレてしまった事がどんどん申し訳なくなってくるわ…ん?だから?)


「…だから…仕事が遅くなる時は俺が送り迎えをしよう」


「…………ん?」


「明日は何時に終わる?」


「明日は…19時くらいには終わると思うけど」


「では19時に迎えに行く」


「でもっ!遅くなる可能性もあるし、昨日より早いし、今まで襲われたこともないから大丈夫よ!」


「18時を超えたら暗くなる。これまでは運が良かったんだ。引越しが出来ないなら送り迎えされておけ。それに遅くなるのも構わないから気にするな」


「えー…」


「治療院の門の前で待っている。じゃあな」


そう言うとジンは颯爽と去って行った。







ここまで読んでくださりありがとうございます!

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