第9話
風原 蓮は本来穏やかな人物だ。今までの人生で怒ったことなんてそうそう無いし、
恋人である瑠衣のことだって大切にしている。
それでも現状、理不尽な扱いを受け続けるこの状態に蓮はキレた。
「ふざけやがって…あのクソゴーレム……」
蓮は地面で転がっているゴーレムの残骸を掴む。
「ぶっ壊してやる!!!」
そのまま森の方から近寄ってくるゴーレムに向けて投擲した。
投擲したものは、あまりの速さに目で追いつけない。
着弾した瞬間、爆発したような音が辺りに響く、同じように後ろから迫ってきたゴーレムも
投擲して破壊した。
「え?蓮?」
怒りのままゴーレムの残骸を掴む。
そして、ヒュンフがいるであろう研究室…その上の地面目掛けて残骸を投擲する。
辺りに爆音が響く、蓮はヒュンフを生き埋めしようとしていた。
蓮は投げ続ける。
さっき破壊したゴーレムも投げる。
「死ねっ!!死ねっ!!!!俺が殺してやるっ!!!!」
「蓮!?もういいよ!落ち着いて!?」
「よく分かんないけど今ならやれる!!それにあいつをここで仕留めなきゃ!!!」
「いや!わかるけどさ!?落ち着いて!!」
俺たちは生きて、逃げる!!
だから殺すんだ!!つぶして生き埋めにしてやる!!!
蓮は投げ続ける、最後には近くにあった岩も担いで投げた。
瑠衣はそれを見て言葉を失った。普通の人間では持ち上げられない岩だ。
そして蓮は研究室があるであろう地面目掛けて岩を投げた。
ドオオオオオンッッ!ガラガラ!!
ズドオオオオオオオオオ……
ついに研究室は潰れた。あった場所には大穴が開いている。
「………ふぅ…やってしまった」
「………えぇー」
瑠衣がドン引きしたような目でこっちを見てくる…
俺は我にかえった。これ本当に殺しちゃったかな…?
そう思うとあんな奴でもゾッとする……
ゾッとするけど逃げるにはこれしかない
「とにかく今は逃げよう…後悔は後だ……」
「もう!!だから止めたでしょ!?でも逃げるのは賛成。後は知らぬ存ぜぬで…」
それでいいのだろうか?
「いやぁ…ひどい有様ですねぇ……」
ゾッとする声が聞こえた。
「それにしても想像以上ですねっ!!やはりマスターは正しかった!!!異世界人は研究に
ぴったりでした…」
ヒュンフ、生きていたのか!!
蓮はまたゴーレムの残骸を掴む。そしてヒュンフに向かって思いっきり投げる、
ヒュンフの身体の中央に穴が開いた。
「ほう!!もう魔法を使えるのですか?やはり異世界人の身体とゆうのは魔法と親和性が
高いのでしょうか…?ひひっ…研究のしがいがありますね……」
「え?あの人なんで生きてるの!?怖い…」
「……瑠衣は下がってて」
身体に大穴を開けて生きていられる人間はいないはず…
人間じゃない?血も流れていない。
そう思ったとき目の前に黒い服を着た人が現れた。
「「え?」」
『そこまでだ』
いきなり黒ずくめの服、仮面をつけた男の人が現れた。
状況についていけない……