第8話
「…ねぇ蓮、いつからそんな怪力になったの?」
「………」
そんなの俺が知りたい…
「いや…ただ力強く握りしめただけなんだけど………」
「え?それだけで?」
「うん…両腕切り落とされて、人間辞めちゃったのかなぁ…」
だとしたら少し悲しい。
でもひょっとしたら柵を壊すことが出来るかもしれない!
今は自分の身体を信じる。
「ねぇ瑠衣。俺があの柵を壊せるか頑張ってみるよ」
「まぁ私にできることは無さそうだし…頑張って!」
「うん!」
そうしてベッドを足場にしてジャンプする。
柵に掴まりそのまま外そうと踏ん張る!
「ぐぬぬぅぅ~~~っっ!」
「頑張って!蓮!!ファイトだよっ!」
「ふんぬーーーっっ!!」
ミシッミシッ
「出来るっ!出来るっ!蓮なら出来るよ!」
「ぬぅぅぅっ…!」
くそっ!!これじゃ今までと変わらない!
ミシッミシッって音は鳴ってるけどなかなか外れない!!もう少しなのに!あと少しで…
「頑張って!蓮!!外れたら後でちゅーしてあげるわっ!!」
なんだとっ!?
その時、俺の両手がぼんやりと光った。
そして今までの頑張りがなんだったのかってくらい簡単に柵を壊してしまった。
俺の身体はベッドに転がる
「わぁ…本当に外れたわね……」
瑠衣が呆れた様に俺を見る。そんなにちゅーしてほしかったのかと…
とにかく俺は任務を達成した。確かにちゅーのパワーで俺は信じられない力が出たが今は…
「とにかく外れたし脱出しよう!ちゅーは後だ!!」
「はぁ…そうね。脱出しましょうか!」
先に俺が外に出て辺りを確認した。そして瑠衣を引っ張り上げて俺たちは脱出に成功した。
「やっと外に出られたけど、これからどうする?」
「そうだなぁ…でも町に行ってもお金もないし、離れながら野宿でもするしか…」
「そうね…それしか方法がないわ……」
「他に頼れるものが何もな…」
ガラガラ…
「……何の音?」
「…ねぇあれ」
瑠衣が顔を青くしながら俺たちが出てきた窓だったものに指をさす。
俺も見るとそこには
「ゴーレムの手…?」
気づかれた!
瑠衣の手を掴んでとにかく逃げる!
「くそっ!気づかれた!とにかく逃げよう!」
「っ!うん!」
辺りは墓地というだけあって周りは墓だらけ、ただ墓地の先には森がある。
とにかくそこまで走る。
瑠衣も森を目指していることに気づいたのか何も言わずについてくる。
「ビーッビーッビーッ!!」
「!?」
「な、なに!?」
(この音…まさかっ)
後ろにいるであろうゴーレムから警告音のような音が辺りに響き渡る。
思わず後ろを振り向いて確認した、さっき手だけ見えたゴーレムはこちらを見ている。
ゴーレムの身体の中央にある水晶のようなものが光っている、まさか仲間を…
「蓮っ!!」
「っ!瑠衣どうし…」
瑠衣が森の方を見ながら声をあげた。
俺も見ると森の方からゴーレムがこちらに近寄ってくる……
「さっきまでいなかったのに…どうして…?」
「なんだこれ…でもとにかく逃げ」
「きゃっ!?」「っっ!!」
瑠衣の足をゴーレムの手がつかんでいる。
何で突然現れたのか、土の中にいたからだ。
瑠衣が掴まった。助けを呼ぶか?一体誰に?
じゃあこのまま捕まる?ダメだ多分今度は逃げられない!
そうまでして俺たちを捕まえてモルモットにしたいのか?俺たちが何をした?何もしてない!
蓮は様々なことを頭の中で一瞬で考えた。だが解決策がないことに怒りを覚える。
「………ふざけるなああああああああっっっ!!!!!!」
蓮は怒りのまま瑠衣を掴んでいたゴーレムの手を殴り、
ゴーレムの手は壊れたのだった。