第1話
ここは魔導国マギの町はずれにある墓地の地下。
そこには人知れず研究室があった。
「ひひ…遂に成功することが出来ましたよ。」
そこにいるのは一人の老人とゴーレム、そして魔法陣の上で気を失ったように眠る子供が二人。
「今回も失敗するかと思いましたが…私は運がいい、遂にマスターの夢が叶う…
ここまで多くの”贄”が無駄となりましたが、二人も手に入るとは」
老人はそばにいたゴーレムに声を掛ける。
「この二人を連れて行きなさい」
「……」
そしてゴーレムは命令通り二人を連れて行った。
牢屋へ…
風原 蓮 14歳 清水 瑠衣 14歳
彼、彼女は恋人だった。デートして帰るときに「また学校で」と言おうとしたときに世界が
ねじ曲がった。
気を失っていたのだろうか、次に気が付いた時は牢屋らしき所にいた。
蓮は隣を見ると瑠衣がまだ気を失っていたので起こすことにした。
「瑠衣、瑠衣…起きて」
「うぅん…」
見ず知らずの場所で蓮は瑠衣の声を聴いてホッとした。なんだか安心したのだ。
「私なんで寝て…?ここは…牢屋?」
あたりを見回すと鉄格子、そして少し高い場所にある窓から月の明かりが見える。
牢屋だ、なぜか牢屋にいる。
「俺たちは確か二人でいてお互いに帰ろうとしたら目の前が歪んで、その後何故か
ここにいる…」
「私も同じよ…何なの?人さらいかしら…そうだ!警察に電話…え?携帯がない?
待って!荷物もない…」
「俺もだな…」
先に瑠衣が慌てたせいか俺は少し冷静になれた。とはいえ何も解決にはならない。
その時だった
「ひっひっひ……目を覚ましたようですね…」
なんだか背筋がゾッとするような気味の悪い笑い方をする黒いローブを着た腰曲がりの
老人がいた。
「……お前が俺たちを牢屋に入れたのか?」
「えぇえぇそうですとも、いきなりここに連れてこられて不安でしたでしょう?なんなら
質問があれば答えますよ?」
「…ここはどこだ」
「ここですか?ここは魔導国マギの町のはずれにある墓地の地下ですよ?」
なにを言っている?すでに理解ができない
「あなた何を言っているの…?ここは日本でしょ?マギって何よ…」
「別に嘘ではありませんとも。信じずとも構いませんが…他に質問は?」
「…お前の名前は何だ?」
「名ですか……私の名前はヒュンフ。この世界にあなた達を呼び寄せたのは私ですからね…
保護はしますのでご安心を…」
「保護って…」
「牢屋に入れておいて保護か…ヒュンフって言ったか?お前は何が目的でこんなこと…」
滅茶苦茶だ。そもそもこのヒュンフという男は俺たちをここに置いて何が目的なのか?
おびえる瑠衣を抱きしめながら問う
「あぁ…それは私の研究に協力してもらいたいのですよ」
「「研究…?」」
俺たちに協力してほしい研究?
「えぇえぇそうでしょう?なぜならその為にあなた方を異界より呼び寄せたのですから…
これにて”実験”は完了、成功に十年とかかりましたが…まぁ良しとしましょうか」
勝手すぎるだろこいつ…
だめだ、さっきから質問してもまともな答えが返ってこない。仮にこれがまともな答えだと
すると頭がおかしくなりそうだった。
「研究って何をすればいいんだよ……」
「ん?研究の材料など…ですかね?」
「は?」
「だから簡単ですとも」
研究の材料?
「……俺たちはモルモットってことか?」
「…こいつヤバいんですけど……」
「まぁ明日からで構いませんよ。今日はゆっくりお眠りなさい……」
そしてヒュンフは去っていった。
後に残されたのは俺たちだけ…
「ねぇ蓮、どうしようかしら…」
「どうするかなぁ…」
俺は上についてる窓を眺める。
脱走かなぁ…