なろう学園 〜ブクマ、ポイントが全てを支配する学園〜
僕の名前は【異世界修行生活】。
高校一年生だ。
父の仕事の都合で、学校を転校することになってしまった。
僕は転校が嫌だったけれど、そんな僕を見て父が僕にピッタリな学校を見つけてくれた。
『なろう学園』
なんとこの学園の生徒は、全員なろうに投稿した経験があるらしい。
僕もやっと最近底辺作家を卒業したところ。
学園に入れば、小説についてたくさんの勉強ができるはずだ。
僕は転校初日からワクワクが止まらなかった。
◇
「みんな、席につけ。
今日は転校生を紹介する。
【異世界修行生活】君だ。
彼は、お父さんの仕事の都合で転向してきた。
仲良くするように」
「今日からこの学校でお世話になります。
【異世界修行生活】です。
よろしくお願いします」
「おぉぅ!
よろしくな!」
「ひゃはは!
よろしくちゃぁん!」
なんだろう。
ガラが悪いな。
みんな本当になろうに投稿している人なんだろうか。
今日は始業式ということで、授業も無く、午前中で学校が終わった。
「おい新入り、挨拶がねぇぞ?」
「ぇ?」
ガラの悪い二人組が絡んできた。
片方は鼻にピアス。
もう片方は腰からチェーンが伸びている。
一体そのチェーンは何に使うのだろうか。
「あぁ、こんにちは。
よろしくね」
「あぁん?
よろしくお願いしますだろうが!」
鼻ピアスが怒りだす。
「まぁ待てよ。
ここの学園のルールってもんを俺様が教えてやんよ」
チェーンが言う。
「ルール?」
何か特別なものがあるのだろうか。
「あのなぁ、この学園ではブクマ、ポイント数が全てだ。
ブクマが少ないやつに発言権なんてねぇ。
ポイントが少ないやつに人権なんてねぇんだ。
だから、ポイントが少ないやつはポイントが多い人間に絶対服従ってわけだ」
なんだその訳のわからないルールは……
せっかく期待していたのにがっかりな学校だな。
「フハハ!
聞いて驚け!
俺様はブクマ60!
ポイントはなんと110!
3桁だぜぇ!」
鼻ピアスが大声で言う。
ぇ……
そんなでもなくない?
「どうだ?
ビビったか?
てめぇのブクマはいくつだよ?」
「123だけど……」
「バ、バカなぁ!」
ドガンッ!
鼻ピアスは吹っ飛び黒板にめり込む!
ぇ?
なにこれ?
どういうこと?
「すげぇ攻撃だな。
まさか中流作家だとは……」
チェーンは額に汗をにじませ後ずさる。
「こりゃ俺たちの手に負えないぜ……
アニキ!
アニキィ!」
走って何処かへ行ってしまった。
鼻ピアスは大丈夫だろうか。
……気絶している。
なんなんだよこの学園……
「アニキ!
あいつです!」
「おぅ!
中流作家の転校生とはてめぇのことか?」
金髪ロン毛のオールバックがやってきた。
眉毛が恐ろしく細い。
「うん、今日転向してきた【異世界修行生活】っていうんだ。
よろしく」
「ほほぉ。
悪くないタイトルだな」
「早速だが、中流作家なんだって?
ブクマを聞かせてもらおうか……」
「123だよ」
「フグッ!」
金髪は軽く後ろへ吹っ飛ぶ。
別に攻撃はしていないんだけど……
「やるな……俺のブクマも123だ!」
「そうなんだ、一緒だね。
中流作家同士、仲良くやろう」
「バカな!
ノーダメージだと!」
「アニキの攻撃が効いてないのか!」
「いや、攻撃してないよね……」
「フハハ、おもしれぇヤツだ。
いいだろう。
くらえ!
俺のポイント数は520!
奇跡の500オーバーだ!」
「おぉ、ポイント数も近いね」
「バカな!
貴様!
何故立っていられる!
ま、まさか……」
「僕は昨日600ポイントを越えたんだ」
「フォォォ!」
バリン!
金髪は血を吐きながら吹っ飛び窓ガラスを突き抜ける。
えぇ〜……
どういうこと?
「ちょっと、大丈夫?」
僕は金髪に駆け寄る。
チェーンは腰を抜かしてガタガタと震えている。
「おい、【異世界修行生活】とか言ったな。
やられたよ、俺様の完敗だ。
だがな、ここは1階。
一年生だけしかいない。
2階の2年生はバケモノ揃いだ。
1000ポイント越えが何人もいるって話だぞ。
更に3階の3年生は魔王だ。
上流作家ってのがいるらしい。
俺は見たことがないがな……」
「……そうなんだ」
「俺はまだ下っ端だ。
お前は上に行けるかもしれねぇ。
まぁ頑張れよ……」
「ぇ?
……忠告ありがとう」
僕は一年生だし2階や3階には用がないので、そのまま帰宅した。
【異世界修行生活】をよろしくお願いします。