④.ハッキングの恐怖
彼が自慢のパソコンさばきで、あるスマホをハッキングする。
このスマホとは女性のスマホであり、その女性のスマホを盗聴・盗撮する。
彼女の部屋が見える。
彼女が仕事から帰宅して、制服から私服に着替える時にも、スマホから盗み見する。
彼女がシャワーを浴びたり、パジャマに着替えたり、ベッドの中に潜り込んだりするのを見た。
就寝により消灯。 (一日目の夜)
……………………?
彼女が部屋の電気を消した時に、ある違和感を覚えた。
だけど特に気にしないで、その日は終了した。
翌日も彼女の部屋が見える。
彼女が仕事から帰宅して、制服から私服に着替えていて、スマホから盗み見する。
また彼女がシャワーを浴びたり、パジャマに着替えたり、ベッドの中に潜り込んだりするのが見える。
就寝により消灯。 (二日目の夜)
……………………?
彼女が部屋の電気を消した時に、またある違和感を覚えた。
それでも特に気にしないで、その日も終了した。
さらに翌日も彼女の部屋が見える。
彼女が仕事から帰宅して、制服から私服に着替えるのが、スマホから見てとれる。
それと彼女がシャワーを浴びたり、パジャマに着替えたり、ベッドの中に潜り込んだりするのが見える。
就寝により消灯。 (三日目の夜)
……………………?
彼女が部屋の電気を消した時に、またある違和感を覚えた。
何だ……アレは……?
アレは一体なんだ?
それは部屋の奥に見える。
消灯して、部屋が真っ暗なハズなのに、黒い人の輪郭が見える。
明らかに、アレは人影だ。
そこで彼が顔を青くして、声を失った。
何故なら、部屋が明るい時には、そんな人影など見えないのに、部屋が真っ暗になった瞬間に見えて、女性からは何も見えていないからだ。
つまり、スマホを通して、彼だけが見えてる訳だ。
アレはこの世のモノではない。
アレは生きた人間ではない。
ヤバイッ!
このまま見続けるのはヤバイッ!
彼がパソコン画面から目を離そうとする。
『見えるんだろ?』
………………ッ!?
『俺の事、見えるんだろ? お前』
………………ッ!?
『俺の事、見えてる奴が見つかった』
するとスマホの中から声がする。
正確には、彼女の部屋からヤバイ男の声がする。
彼女の部屋には、彼女一人だけ。 男などいない。 ましてや、その彼女ももう寝ている。
彼女の部屋に起きてる者などいないハズ。 なのにヤバイ男の声が聞こえる?
すると部屋の奥にいるハズの、その男が突然前へ歩き始めて、どんどんパソコン画面に近づいてくる。
………………ッ!?
その男がどんどんこっちに近づいてくる。
……………ッ!!?
その男がどんどん彼の所・彼女のスマホまで近づいてくる。
うぅっ!!?
もうすぐそこまで近づく。
うわっ!!?
そこでパソコン画面いっぱいに、その男の顔が出てきた。 その男の顔とは、アザだからけの青白い顔に、鼻や口から出血したバケの中年男性の顔である。
『俺の事、見えてる人間、初めて見た』
うわぁぁぁーーーっ!!
そのあまりの衝撃・驚愕に、思わず身体をのけ反り後方へ転倒して、椅子から転げ落ちる。 もう既に男の顔が消えていて、彼は唖然・絶句するだけ。
明らかに人間じゃあない。
もしかして、幽霊―――
これは『自業自得』・『因果応報』なのか?
この日を境に、彼はもうハッキングを止めた。 初めて幽霊を見たが、もう見たくないらかだ。 部屋に住む彼女には見えなかったけど、スマホをハッキングした彼には見えた。
これは『ハッキングされた側の恐怖』ではなく、『ハッキングした側の恐怖』である。