②.最期の恐怖【中編】
その一人の男性が心霊写真を再び、懐のポケットの中にしまってから、山小屋の扉のドアノブに手をかける。
「よーし、行くぞっ…!」
だがしかし、山小屋の扉のドアノブに手をかけて開けようとするも、その手が震えていて動かせず、なかなか扉を開けられない。
…いや、できない?
「…ちっ、もう…来やがったのかぁ…っ!?」
その彼の―――男性のすぐ背後には、黒いトンガリ帽子に黒いマントとローブを身につけた、かなりお歳を召した―――あの老婆が…いつの間にか…現れていた。
その名前を『ダッギ』と呼ぶのである。
そいつが―――男性のすぐ背後をぴったりとマークして、警戒しているからである。
…だから、動けない?
「ヒヒヒ、この私の邪魔をしに来たのかい? 邪魔するヤツは容赦しないよ!」
「……ちっ!」
老婆のこの発言に、その男性が思わず舌打ちをしており、顔からは凄く汗を流していて、かなり緊迫した状況であることが、よくわかる。
「ヒヒヒ、さぁ…まずはお前から先に殺してやろうかぁ~? どうやら邪魔するつもりなんじゃろうしのおー!」
するとそこで、ダッギの萎れた両手が突然…鋭い刃に変化して、その男性の背中めがけて、地面を蹴って勢いよく走り出してきた。
ダッ、ダダッ!
「ヒーヒヒヒーーッ! 死ねえぇーーっ!!」
「クソォッ!!」
その男性のすぐ背後から、モノ凄い速度で迫ってくるダッギを、その男性が右側に避けて難を逃れていて、ダッギの両手の鋭い刃が扉に虚しく突き刺さっている。
グサッ、グサッ!
「…ヌオウッ!? よくも避けおったなぁーーっ!! この私の攻撃を…よくも避けおったのおーーっ!!」
「ち、ちくしょう!!」
ダッギが凄く悔しそうな顔をして、扉に突き刺さった両手の鋭い刃を引き抜こうとする。
ガサッ、ガササッ!
その男性が右側に避けた拍子に、そのまま木々の中に姿を隠していく。
「…ヌオウッ!? そのまま逃げる気かい!? そうはさせんぞい!! 逃がさんわい!!」
両手の鋭い刃を扉から引き抜くと、ダッギがモノ凄い速度で慌てて、その男性の後を追う。
ガサッ、ガササッ!
「ち、ちくしょう!!」
その男性が木々の森の中を何の目的もなく、ただ全力で走り出し抜けていく。
「はぁはぁはぁはぁ……」
タッタッタッ!
「ヒャアアアァーーッ!!」
ダッギがモノ凄く怖い形相をして、モノ凄い速度で走って、その男性のすぐ背後を追ってきた。
「待てえええぇーーっ!!」
ダッ、ダダッ!
そこで男性が、そこから急に右側に曲がって走り出し、ダッギは男性が急に右側に曲がったので、思わず対応できずにバランスを崩して転びそうになった。
「な、なぁにぃっ!!?」
ザザァッ!
ダッギはなんとか体勢を立て直し、地面に転ばずにすんだけど、その隙に男性との距離がどんどんと離されていく。
「はぁはぁはぁはぁ……」
「…ヌオウッ!? なかなかやりおるようじゃのおー!!」
ガサッ、ガササッ!
その男性が薄暗い木々の間の物陰に隠れて、老婆をやり過ごしており、ダッギの方も完全に男性の姿を見失っていた。
「…ヌオウッ!? この私が見失ったじゃとっ!? そんなバカなぁ!?」
「はぁはぁはぁー、よし!」
その男性が少しだけ時間が稼げそうなので、ダッギに見つかる前に、早速なにやらガサゴソと準備をしている。
ちなみに、その男性の名前を『サカキ』(仮)と言う若者で、職業は弁護士をしている。
その男性が手持ちのカバンから漆黒の拳銃を取り出した。 えっ、弁護士なのに拳銃……なんで……?
さらにカバンから白銀の弾丸を取り出して、拳銃に弾を込めて発砲できるようにした。
「よし、できたぞ。 これであとは、あのババアの眉間をぶち抜けば倒せるはずだ。」
「…一体何処に隠れたんじゃぁ!? あの男はぁ…っ!?」
突然…老婆の声がして、その声が聞こえた方を見てみると、まだダッギがそこら辺をウロウロと探し回っている。
「………」
そこでサカキが茂みの物陰から、拳銃をダッギの方に向けて構えた。
実はこのサカキ、弁護士でありながら射撃の免許資格を持ち、以前オリンピックにも出場したことがある、一流の腕の持ち主である。
「……くっ!」
そのサカキの拳銃の銃口が…遂にダッギの眉間を捉えた。
「行くぞぉ! くらえぇ!」
ズドォン!
「グガアァッ!?」
その漆黒の拳銃から発射された白銀の弾丸が…見事にダッギの眉間に命中して撃ち抜いた。
「な、なんじゃとっ!?」
ドサッ!
その場でダッギが、そのまま後方に倒れた。
「や、やったのか……?」
だがしかし―――
「そ、そんなバカなぁ!?」
拳銃を撃ったサカキが…ある光景を見ていて凄く驚愕している。
なんと…なんと…眉間を撃ち抜かれて、普通ならとっくに死んでる筈なのに出血もしてないし、まるで何事もなかったかの様に、ムクリと起き上がった―――このダッギは―――まさか……効かないのか……? 否、このババアは本当に不死身なのか…っ!?
「ま…まさか、この私を撃ち抜く者がいるとはのおー! さすがに少し驚いたぞい! お陰で力が減少してしまったわい!」
「そ…そ、そんなはずではぁ……っ!?」
このダッギがかなり悔しそうな顔をして立ち上がり、そのサカキの方は「とても信じられない」ような顔をして、激しく動揺しているようだけど…。
「ち、ちくしょう!! これでも…くらえぇ!!」
ズドォン!
なおもそのサカキが、さらに拳銃の銃口をあのダッギの方に向けており、再び発砲した。
「グガアァッ!?」
その漆黒の拳銃から発射された白銀の弾丸が、今度はダッギの左胸―――心臓のあたりに命中して撃ち抜いた。
「今度こそ、やったのか…?」
だがしかし―――
「そ、そんなバカなぁ!?」
再度拳銃を撃った男性が "また" ある光景を見ていてかなり驚愕している。
「ヒヒヒ、これは残念じゃったのおー! どうやら私はまだ死ねないらしいのおー!」
確かに、左胸に命中したはずなのに、ここでも出血してないし、今度は倒れもしない。 なんと…なんと…平然と普通に立っている。
「ヒヒヒ、無駄じゃよ、無駄! さあ、おとなしくくたばってしまえぇーーっ!!」
このダッギが左手の鋭い刃を切り離して、サカキの方めがけて、シュッと投げつけた。
「クソッ、まだだぁ!」
そのサカキの方も、負けじと拳銃の銃口をダッギの方に向けて発砲する。
ズドォン!
「グガアァッ!?」
その漆黒の拳銃から発射された白銀の弾丸が、次にダッギの右脇腹に命中して撃ち抜いた。
「…ヌオウッ! お、おのれぇーーっ! よくも…この私の身体にまた傷をぉーーっ!」
ジュザァン!
「うわあっ! クソッ!!」
一方のサカキは、ダッギが投げつけた左手の鋭い刃が、左腕に命中して切断してしまった。 左手の鋭い刃は、そのまま後方の森の闇に消えていき、サカキの左腕の切断面からは、大量の血液が噴き出している。
「クソッ! まだだぁーっ!」
ズドォン!
なんと…こんな状態になりながらも、そのサカキが右手だけで、拳銃の銃口をダッキの方に向けて発砲するが、その直後にブーメランのように返ってきた左手の鋭い刃が、サカキの右腕に命中して切断してしまった。
ジュザァン!
「…ウゲエェーーッ! よくも…よくも…やってくれたねぇーーっ!!」
そこでダッギの右太股に命中して撃ち抜いたものの、そのサカキの方も右腕の切断面から大量の血液が噴き出している。
「ふふふ、これで俺は…もう拳銃を撃つことができないけど、これでヤツも…アレを使うことができない。 ふっ」
「これで終わりじゃよ!」
このダッギが右手の鋭い刃も切り離して、サカキの方めがけて、シュッと投げつけた。
「…ぐぅあっ! こ…これで…終わりだと…思うなよ…!」
ジュザァン!
なんと…そのままサカキの胴体が腰部から真っ二つに切断してしまい、さらには左手の鋭い刃もブーメランのようにUターンして、サカキの首に命中して切断した。
「…こ…れ……で―――がはぁっ! …役目……おわ―――」
「ヒヒヒ、ザマァミロじゃのおー! やっと、くたばったかぁーーっ!!」
男性は左腕・右腕・胴体腰部・首を斬り裂かれ切断してしまい、遂に死亡。 この辺りには彼の大量の血液が噴き出していて、まさに血の海と化している。 また彼のカバンやライトや漆黒の拳銃や白銀の弾丸などの持ち物も、そこら辺に散乱している。
老婆は眉間・左胸・右脇腹・右太股に、それぞれ白銀の弾丸を撃ち抜かれており、左手の鋭い刃もひび割れている。 だがしかし、ダッギにはこれらの大ダメージにより、力が急激に減少しており、のちにこれらがもとで―――
「ヒヒヒ、さーて、また山小屋に戻るかのおー!」
そのままダッギが、あの三人の女性がいる山小屋の方へ戻っていった。
そして、ある夜の山奥
『…ここか? 悪魔が巣食う山というのは……』
その山小屋の近くにある、真っ暗な山道の『高坊主』がただ突っ立ってる、すぐ隣であの遠藤氏が遂に、その姿を現していた。
【現在の状況】
1.サカキ(男性)……死亡
① (見事に目的を果たし、散って逝った)
2.ダッギ(老婆)……危険
② (本人はまだ、そのことに気づいていない)
3.遠藤氏(主力)……登場
③ (ようやく現場に到着した)