第七話 ハルを襲う悲劇
今回のお話は注意点がありますので、お読みになる際は、最後の後書きを必ずお読みください。
「ミカちゃん、諦めよう。スーは飼い主の元に帰るのが幸せなのよ」
聡子は諭した。
「スーがいなくなったら、わたし、今度こそ自殺するわよ」
聡子はミカの頬を叩いた。すると実日子はぐずついて泣き出し、聡子は実日子を抱きしめた。
「ごめんね、ミカちゃん。新しい猫なら、区役所の近くに野良さんがいるでしょ、あれ拾ってくればいいじゃない」
「…………」
すると、若い夫婦の夫の方が、
「息子が待っているんでね、なるべく早く引き取らせてもらいたい」
「……わかりました」
聡子は玄関に上がり、ハルを抱きかかえ、二人の前に持ってきた。
「ふむ。確かにうちの猫だ。ご迷惑をおかけしました。感謝します」
そうして、彼らは去って行った。
「……スー、ずっとわたしと一緒に寝ていたんだよ。チョコチップクッキーをあげると、食べるんだよ。すごくかわいいんだよ。無表情で、何を考えているかわからなかったけど、スーが幸せだと、わたしも幸せだったんだよ」
「ミカちゃん……」
もう一度、聡子は実日子を抱きしめた。
ハルは夫婦の家に着いた。表札には、「臼田」と書かれていた。臼田氏は、家に着くなり、なんと、ハルをためらいもなくぶん投げたのだ。ハルが全身の毛を逆立てて、臼田氏を睨み付けると、臼田氏は、
「このクソ猫が! 俺がてめえの本当の親かと思ったら大間違いだぞ!」
彼はハルの首根っこを捕まえ、壁に何度もぶつけた。
「ねえあんた、あたし、この猫の毛、ライターであぶりたいんだけど」
「へん、ちょっと待ってろや。会社でのうっぷんが溜まってんだ俺は。まったく、俺らに息子なんていないのに、あの馬鹿娘ども、信じやがって」
夫婦は下卑たくすくす笑いを立て、ハルを殴った。
「おい、クソ猫。餌が欲しけりゃせいぜい俺らのサンドバッグになることだな」
「ふふっ、あんた、そう言ってもう3匹猫殺してるじゃない」
この夫婦の夫は、前科はないが、痴漢や万引きをばれないように何回かやってきた男だ。妻は、これも捕まってはいないが、薬物を使用している。
(動物をいじめるなんて、許さない。僕に魔力があれば、こんな連中、いくらでも悲惨な目に遭わせられるのに……)
そしてこの後、ハルは風呂に溺れさせられたり、ライターで尻尾を焼かれたりした。餌は、この日、与えられることはなかった。
今回の話では、動物を虐待するシーンが出てきましたが、言うまでもなく、この作品は動物虐待を扇動する目的で書かれたものではありません。動物虐待は動物愛護法に触れる、犯罪行為です。絶対に真似をしないでください。動物にも心はあります。虐待は絶対に許されません。飼う以上は、愛情を持って最後まで責任を持って飼いましょう。