第九夜・『オリオリスープ』(まんが)
これもお料理まんがである。
しかし、前回紹介させていただいた『紺田照の合法レシピ』とは、だいぶ趣が異なっている。主人公は美人の女性(26歳)。本の装丁を扱うデザイナー・織ヱ《おりえ》である。
アマゾンのレビューなどをのぞくと、『織ヱのキャラが受けつけない』という意見も結構あるが、個人的には気にならない。わりと天真爛漫に生きているようで、それなりに考えたり悩んだり、過去の重荷を抱えこんだりしている人物像は、私としては好感が持てる。
織ヱの周りを囲むキャラたちもなかなかに良い顔ぶれである。自分としては中国系ハーフの努力家男性、弥燕がお気に入り。初めの方は織ヱをライバル視して、挑むように接していたが、だんだん織ヱの良いところやナイーブな面なども知るようになり、ちょっと良い感じになってきたのが微笑ましい。このままうまいこと二人くっつけば面白いのに……なんて思いながら読んでいる。
そして何より、お料理まんがの醍醐味である料理の描写が素晴らしい! タイトルに『スープ』とついているだけあって、スープの登場回数が断トツだが(主人公はスープの定義を『汁気の多いもの全般』としているので、たまに梅酒やカキ氷なども出てきたりする)、これがまたどれも美味しそうなのだ。
その中でも特にツボにきたのが、第二話の『春キャベツと豚肉のミルフィーユ』。ざっくり言うと春キャベツと豚バラ肉を重ねていって(バラ肉の上に塩こしょうで味つけする)、水少々とローリエを入れて鍋で煮こむだけ。煮上がったら包丁で十字に切りこみを入れて、レモン汁をちょっとかけていただきます、という料理。
あまりにも美味しそうなので、春キャベツの時季は過ぎたにもかかわらず、家で作ってみてしまった。ちょっとばかりアレンジして、『茅の舎だし』でだしをとり(ローリエは入れない)、最後にレモン汁ではなくしょう油を回しかけて出来上がり。春キャベツでないのがつくづく惜しかったが、それでもなかなか美味しかった。
あと作ってみたのが、二巻に収録されている、第三十話の『焦がしネギの中華風スープ』。焼いたネギと肉団子の入ったスープなのだが、これも和風の味つけにアレンジしてみた。肉団子の中に入っているのは、本来卵やシイタケなのだが、これも家にある材料(エシャロット、玉ねぎ、シソなど)を刻んで入れてみた。出来上がりは上々! 織ヱさんの言っている通り、ネギが甘くて美味しかった!
でも、やってみて失敗だったのは『ゴーヤのひき肉詰め丸煮』。とにかく苦い! ゴーヤの苦味を愛する人にはたまらんだろうが、家ではわりと不評だった。作中ではとても美味しそうに描写されているので、少し拍子抜けしてしまった。
でも、他にも美味しそうなレシピはたくさんあるので、これからもちょこちょこアレンジを加えつつ、真似して作っていこうと思う。
本屋でジャケ買いしたのだけれど、私としては大当たりだった『オリオリスープ』。現在二巻まで出ているけれど、三巻の発売が楽しみだ。
(了)