第二夜・『ふなっしー』(ゆるキャラ)
ふなっしーが好きだ。
熱狂的なブームは去ったが、それでもいまだに彼が好きだ。テレビCMで初めて見たときは、「なにこのジャンプ力! すげえ!」とか感嘆した。
それからいろんな番組に出てくるようになったが、アップで見たときの感想は「なんか顔が怖い!」だった。はっきり言ってキワモノに近いキャラだったが、目になじむほどに何だか可愛く思えてきた。何でそう思えるのか、母としゃべっているうちに結論が出た。
性格が良いのである。中のひとの性格が。
たいていこういうキャラって言動もキャラになりきるものだが、ふなっしーはちょいちょい『素』が出てくるのである。キレッキレのしぐさに見え隠れする、中のひとのナチュラルさ……。た、たまらん。
たとえばある雑誌にのっていた、ふなっしーのインタビュー。
Q『梨は好きですか?』A『大好きなっしー!』
Q『好きな果物は何ですか?』A『みかん、りんご、桃、ぶどう、すいか』←(うろおぼえ)
おい梨はどうしたぁ! とか思いながら、そのナチュラルさがおかし可愛かった。
また、あるテレビ番組で『牛丼屋によく行く』という話題になったとき。『何を一番よく頼むか』と訊かれたときに、彼はすかさずこう答えた。『ねぎ玉牛丼!』
何のてらいも思惑もなかった。正直にすっと答えた感じ。それが逆にものすごくおかしくて、ウケも何も狙わなかった彼は、相当良いひとなんだなぁ……と何となく思った。
それくらい好きなので、ふなっしーのマスコットなんか発見した日には、それだけでテンション上がってしまう。私は見ていないが、母いわく『前を走っていた車にステッカーがついていた』そうだ。なんでもふなっしーがボードを持っていて、そこに何か書いてあったらしい。が、文字が見えない。
母が文字を読むために車を近づけると、ボードにはこう書かれていた。
『車間距離をあけてなっしー!』
お前のせいじゃあぁあぁああ!! とか思いながら、母は思わず吹き出してしまったそうだ。
ちなみに怖いくらいのブームが去ったことを、私は内心喜んでいる。テレビをつけるとどこもかしこもふなっしーが出ていたとき、私は(そのうち過労で死ぬんじゃないか……)と危ぶんでいたのだ。
ブームが去りきって消えてしまうのは淋しいが、あんまり売れすぎるのもどうかと思う。
そんな訳で、私は今日もテレビの中に、薄くなった彼の面影を探すのだ。
(了)