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天性の魔導士は愛されて  作者: wise
出会い(プロローグ)
4/13

仏像と煩悩と電脳

「じゃあ、次!2人目だぞ」


「って、え!?紹介終わり?それに、明らかに録音的な音声だったよね?」


「何言っちゃってんのさ!あんまり時間も無いことだし。次だよ、次!!注目度No2は……じゃじゃーん。コロセオなのだ!」


 私の疑問など無視して、話は先に進むようだ。もしや、あれ以上の情報が無いのか!?


「…で、どんな人なの?」


「一言でいえば、変態、かな?」


 おそらく、あいつだ。私の第六感がそう告げている。遠巻きに露出度9割5分のおっさんが見える。……そして、私は視界からその存在をデリートした。


「あはは、そいつの説明はいいや。次は?」


「プログラムは知ってるよね?」


「もちろんよ。魔法、いわゆるマジックは世界のエネルギーを利用して無から有を生み出す技術。対してプログラムは、ものの有限の在り方を、操作することで無限の在り方に変える技術、だったわよね?」


「そーそー。でね、そんなプログラムの名門大学、MIPを飛び級で卒業した天才がいるんだよ!」


 ののと暫くの間会話をしていたが、入学式の時間がやってきたので、私達は体育館へと案内された。ここは、この学校で一番大きな体育館だ。模擬試合を行うことも出来るし、四方を囲む多くの観客席もあり、その観客皆が見れるようにと大きなモニターも設置されている。


 整列して、ドキドキする胸の鼓動を感じながら、学校長の挨拶を待った。目の前に現れたのは、いかにも魔法使い風な老父ではなく、インテリやくざのような人だ。


「私は校長。好調です。以上」


 しかし、発せられたのはあまりにも淡泊であった。てかふざけてる。真顔だけど。そして、それは未だ私達が正式なここの生徒では無かったからだと、すぐに知ることになる。


「これから、入学最終試験を始める!」


 舞台の裾に下がった校長と入れ替わりに登壇した、若い女教師が放ったその言葉に、私は愕然とした。驚きを隠せないでいる私に、ののが話掛けてきた。


「あれ?テネシー。知らなかったの?……どうりで」


「どういうことか知ってるの?」


「やっぱ、あんた表のパンフレットしか読んでないの?裏、というか実質的な入学案内がこっそりというかはっきりと発行されているのだよ。生徒会によってだねー」


 私は、ののからそれを受け取った。そこには、今日の予定が書かれていた。


 入学式において、新入生から選ばれた代表3名と在校生から選ばれた代表1名で模擬試合を行う。そして、この内容によっては新入生全員の入学許可を取り消す場合もある。以下、今年の代表である。……


 事細かに代表のプロフィールが書かれている。なんだ。ののは取材でもなんでもなく、ただこれに書かれていることを言ってただけらしい。まあそんなことより、……


「なっ!?取り消し、ですって!」


「そうなんだよねー。この最終試験だとか、あんまり良くないことは、学校発行のパンフには載ってないんだな」


「もしかして、この学校って結構ブラック?」


「うんうん。るんるんで来てるのって、テネシー位のもんだよ。皆、ガチで戦闘訓練受ける為に来てるからねー」


「へ、へぇ~。……ち、ちなみに、この試験で実際に入学取り消しってあったのかしら?」


「もー、良く周り見なよ!3年生、居ないでしょ?」


 血の気が引くとはこのことなのか。寒気がしてきた。どうなるのかしら。不安でたまらない。けれどあがくことも出来ない。私は、観客席へと移動を促されると、素直に従った。


 そしていつの間にか、実況と解説席が設けられていた。ノリノリのDJみたいなのと、秀才っぽい解説役の2人みたいだ。


『おいらは今日の進行と実況をつとめる、ハチマキだ。皆、よろしくねー!』


『僕は、僕。解説を仰せつかった』


 皆で話し合って決めた訳でもない代表に、これからが託されるなんて、不満しかない。


『新入生代表の、登場だー。まずはこの人。この年でこの色のオーラを纏う奴なんて今まで存在しただろうか?超高校級の才能!青の召喚士、乙女うららー!』


 あの仏像はどうやって歩いているのだろうか?謎だ。でも、進んでる。それにどうやら私だけのようだ、彼女が仏像に見えるのは。………謎だ。


『続いてはー、ハットとネクタイと純白のブリーフのみを愛する変態紳士。いや、防御など要らないという自信の表れなのか?というかこいつおっさんじゃね?黄の魔法剣闘士コーローセーオ!』


 彼の顔は真っ赤だ。おそらく緊張じゃない、いや絶対そうだ。彼は悦んでいる。皆の視線に。 


『最後はこの子だあー!彼女と組めばどんな落ちこぼれも大魔導士になれる?完全無欠の天才少女、無のプログラマーネロ!』


 この子の肌は透き通るように白い。そして青色の瞳もまた透き通っている。少女としては、不健康というレッテルを貼られてしまうかもしれないが、その姿は神秘的で美しい人形のようだ。


 本当に大丈夫なのか?確かに彼らは有能なのかもしれない。マジック、アタック、プログラム、三大武器と呼ばれるこれらの使い手だ。しかし、見た目は、仏像、変態、幼女なのだ。


『対するは、在校生代表、2年!彼に敵う奴はいやしない。平凡で天才、黒の侍、沖田ァ!!』


 なになに、裏パンフによると、……。彼には魔法の才能が無い、平凡もいいとこだ。けれど、卓越した剣術と戦闘センスは天才というしかない。最大炎圧の魔法でさえ、彼は剣の一振りでかき消してしまう。やばい、不安が更に。


『試合はこの中で行ってもらうぜ!カモーン!!』


 そうハチマキ先輩が叫ぶと、アクリル板のような透明な板で囲まれた直方体が出現した。


『ここでは、ダメージは一切ない!思う存分、キルってくれよー!』


 そのリングの中で代表者4人が対峙した。そして、沖田先輩が口を開いた。


「お前らはさ、才能の塊、だよね。でもな、才能っていう飛行機でぶっ飛んで来ただけの奴は、一度墜落したら最後もう歩けねーんだよ。お前らの皮を残らず剥いでさ、搾りかすみてーな面、拝ませてもらうよ」


「ぷぷぷ。おっさんの嫉妬なの?才能云々関係ないよ。事実はこう、ネロはデバイス一つで世界でも宇宙でも異世界でもひとっとびなのです」


「ネロ殿!貴殿はワープを扱えるのか?」


「違うよ。初老。例えだよ、まぬけー」


「だ、断じて、初老ではない。皆と同じ15だ」


 割とどよめく。


「ネロは9歳だから」


 しょうもないことで2人は喧嘩を始めてしまった。


 チームワークは大丈夫なのだろうか。


「ブーン。ふたりとも、ケンカせず、頑張ろう」


 うららの一言、いやうららからの音声で、2人は喧嘩をすぐにやめた。


「うららが言うなら、ネロは従うよ」


「吾輩もである」


 いや、なにゆえの信頼なんだよ!本当に、胡散臭い仏像に見えてるのは私だけ?なら、その魔法を私にもかけてよ!!!


『そろそろ、試合始めるぜー!!』

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