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天性の魔導士は愛されて  作者: wise
出会い(プロローグ)
10/13

ジークハルド

「おい!これは、どういうことだ!!」


 担任の女教師が、鬼気迫る表情で私に詰め寄ってきた。かなり動揺した様子だ。


「え!?こ、これは……」


 私にも分からないのだ。そう言われても困る。


 ナタリーは軽く放心状態で、周囲のクラスメイト達はざわついている。戦闘シミュレーションで、あわや死人が出たかもしれないので当然だ。


「ネ、ネロのせいなんだ!」


 ネロが泣きそうな顔で、そう叫んだ。


「ネロがお姉さんにプログラムしたんだ。魔法強化のプログラムを」


 先生は少し考えるような仕草を見せ、暫くすると平静さを取り戻した。


「成程。プログラムによる暴走、かもしれんな」


 周囲のざわつきは収束の兆しを見せていた。ネロのプログラム能力の異端ぶりは既に、周知の事実であったからだろう。


「オーッホホホー!」


 ナタリーはまた甲高い声で笑った。私の実力ではなくて、ネロのせいだと知った途端に元気を取り戻した。凄いな、この娘。死にかけた恐怖で放心していた訳じゃなくて、私がいつの間にか強大な魔法を身に着けていたんじゃないか、ということに驚いて腰を抜かしていたらしい。


「ごめんね、ナタリー」


「あらテネシー、あなたに非があって?上手く魔法が使えないのは悪い事では無くてよ」


 嫌な奴だけど、大事に至らなくて良かった。


「皆、一旦教室に戻れ。後のことは教師陣でやっておく」


 先生のその言葉を受け、生徒たちは教室へと移動を始めた。


「待て」


 肩に、誰かの手が触れた。


「スタオラの妻、お前からしたら母親は、魔法適正皆無の人物だと聞く。それは真実ほんとのことか?」


 私にだけ聞こえるような声で、先生が話しかけてきた。


「え?何故、そんなことを。………そうです。母は魔法を一切使えません」


「そうか。ならいい」


 不思議なことを聞くものだ。


「お姉さんーー」


 ネロが駆け寄ってきた。そして、小さな手で私の手を握った。


「ん?どうしたの?」


 私はネロの方を向いて問いかけたのだが、ネロの顔は見えない。うつむいているからだ。


「………ごめんね」


 蚊の鳴くような声だった。


「ううん。ネロは悪くないよ」


「………」


 ネロは、私の手を放すと、ナタリーの元へと駆け寄って行った。


 あの歳であんなに凄いのに、素直な子なんだな。



 十数分すると、先生は教室へと現れた。そして生徒全員に着席を促した。


「まあ色々あって、皆疲れてるだろうが、本日最後のイベントだ」


 先生の荒々しい字で、黒板にはこう書かれている。


 仮チーム結成


「4人で1チームだ。ここに紙がある、これに自分の扱う武器、そして自己PRを書け。それを見て判断するも良し、書いてない部分から判断するのもありだな」


 あんな醜態を晒したのだ。私に近づこうとするものは居ない。もしかしたら、って期待もあったのに、ののさえ見当たらない。


 うららやネロの周囲には人だかりが出来ている。まあ、そうだよね。


 私以外で孤立しているのは、やっぱりあの人達みたいだ。


 ナタリーは勝気なキャラが敬遠されているのだろう。


 そして、あのナルシストのブロンズ美少年は、なまじ美しすぎて近寄りがたいのかもしれない。


 けれど、コロセオは逆だ。美しさの欠片も無いからだ。執拗に筋肉をアピールしている。………あっ!ヤバい。目が合ってしまった。完全にロックオンされた。白い歯を見せつけてくる。


 恐怖に身を凍らせていると、近くで声がした。


「あたいは、テネシーと組むのだ!」


 ののだ。私は見捨てられたのかと思っていた。


「ええ。ありがとう!のの」


 満面の笑みをののは浮かべている。けれど、少し怪しい。


「テネシーに、手土産があるぞ!」


 そう言って、ののは誰かの手を引っ張って私の前に出した。


「あ、あなたは!」


「ん?俺を知ってるのか?………ああ、朝に教室の入り口で邪魔をしてきた奴か」


「そうじゃなくて、もっとこう通学途中で何か、あったでしょ!?」


「通学途中、か。起きてすぐに、寝ぼけたままで来たからなあ。分かんねえ。何かあったか?」


「い、いえ。何も。そう何も無かったわ!!」


 あはは、と誤魔化したが、内心グツグツと煮えくり返っている。


「いやよ!のの、私はこんな男となんて組めないです!!」


 ののに耳打ちで抗議する。


「えー。良いじゃない」


 私とののが揉めていると、ネロの声がした。


「ネロは、お姉さんと組むーー!」


 ネロは周りの人だかりを器用にかわすと、私の胸に抱き付いてきた。そして顔をうずめる。


「3+1で4人。チーム結成なのだ」


 ののがそう言うと、先生が名簿を付けた。


「なっ!」


 ナタリーが叫ぶ。私が早々にチームを作るとは予想してなかったみたい。


 チラッとあのキス魔導士の方を見た。………まあ、私は選り好みなんて出来ないし、仕方ないかな。


 そして、全てのチームが出来た。


「よしっ!全員決まったようだな。じゃあ」


 ブツ


 無理矢理、電子機器のコンセントを抜いたときのような音がした。


 そして、今まで普通に話していた先生が消えた。


 どういうこと?何が起きたの?


『僕はジークハルド。君達は予行演習のモルモットに選ばれたのだ。この世界には今、人間・・は君達しかいない。それが今とちょっとの間だけなのか、それとも未来永劫そのままなのかは、君達次第。失われし都、その秘密を解き明かせ』

これで、1章:出会い編(主なキャラクターの登場)は終わりです。


すこし突飛な展開かもしれないですけど、2章は冒険色強めで行きたいと思います。この章でキャラクターと世界観の掘り下げを頑張ります。

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