Episode77 煌めく彗星の軌道
シュヴァルツシルト親子の転落を見届けたそのすぐ後、ユースティンは転移魔法によってその崖の上へと舞い戻った。
舞い戻った本人は気を失っている。
ということは、アンファンが転落の最中、ユースティンだけを地上へと送り届けたという事になる。
あの冷血な父親でさえ、最後は自分を犠牲にして息子を救った……。
あのアンファンでさえ、だ。
これが本来の親子の姿である。
じゃあ、俺の父親は何だというんだ。
殺してしまえ、とまで言われたことがある。
「ユースティンさん!」
シアがユースティンの頬の傷を見つけ、すぐ駆け寄ってヒーリングをかけた。頬に穴が開いてしまっているようだ。もしかしたら傷として残るかもしれない。
「やれやれ、ようやく終わりやがったか……」
ひょっこり俺の肩から現れる火トカゲのサラマンド。
そういえばこいつずっと俺の肩にしがみついてたのか?
なんか偉そうな態度だけど、もしかしてコイツ俺たちの想像以上にチキンなんじゃ?
「まったく、お前の肩の乗り心地は最悪だぜ。早くシアの肩に戻してくれ」
口だけは本当に偉そうである。
そのシアは、ユースティンの介抱のため、大穴の崖付近まで駆け寄っていた。その大穴の上空に浮かび上がるリゾーマタ・ボルガの赤黒い円月輪が自然と目に付いた。それは未だにぐるぐると回転を続けている。
アレはどうしたらいいんだろう。
というか、あんな魔力の塊で何ができるんだろう。
本当に過去の改竄や、因果律を書き換える円盤だとでも?
そんな風には見えないけど―――。
「エンペドの亡骸はいずれまた這い上がってくるかもしれません。今のうちにリゾーマタ・ボルガを封印しましょう」
ふわふわ宙に浮かぶシルフィード様は、俺の目線に気づいて、そう促した。その声は、心無しか、さっきエンペドが現われたときよりも落ち着いている気がする。戦う対象がいなくなって、ちょっと安心したのかもしれない。
それは俺も同じ事だった。
でも封印するって言ってもどうするんだろう。
手持ちのボルガを使って?
そもそも俺には魔法系の知識はさっぱりだから封印魔法なんて物も聞いた事がない。一般人が使っているような魔法は使えないし、魔力もゼロだから、ボルカニック・ボルガを作り出す以外には役に立てそうにない。
その辺りの事は、賢者様たちにお任せしちゃっていいよな?
――――と、山場を越えて人まかせ気味になっていた時。
しかし、その赤黒い魔力を感じ取ってしまった。
どんよりとしたその暗雲の気配。
まだ、戦いは終わっていない。廻る円月輪が浮かぶ直下。その奈落の底から、禍々しいオーラが立ち込める。その崖付近には気絶したユースティンを介抱するシアがいた。
「シア! ユースティンを連れて早くこっちに来るんだ!」
「……? はい」
それを聞くと、シアはユースティンの両脇を支えて引きずって戻ってきた。そして俺と一緒に担いで、なるべく崖から離したところまで運んだ。父親が命を懸けて守った子だ。また奪わせるわけにはいかない。アンファンは気に入らないけど、ユースティンは大切な友達だ。
ユースティンを遠くまで運んでいる最中、俺は自分の右腕が疼くのを感じていた。自身の右腕を這う赤黒い線形模様は見慣れたものだ。だが、その"赤"が危険信号を告げるように点滅していた。
気のせいなんかじゃない。
あの赤黒い混沌は、アレは……俺だって散々振り回された魔力の渦だった。
"―――どちらかというと神聖なものだが、だが危険な魔力だ"
ガラ遺跡で俺の運命を変えた、あの赤黒い魔石。あれの魔石内部に渦巻いていたものと、リゾーマタ・ボルガの円月輪の中枢で渦巻いているものは同じものだった。
トリスタンは気づいていた。
危険な魔力。リゾーマタ・ボルガにも使われているその力の源は……女神ケアの持つ魔力だ。神との契約で造り出した兵器リゾーマタ・ボルガ―――神って女神だったのか。
ケア・トゥル・デ・ダウ……あいつは"これ"を知っていた。エンペドの存在を知っていた。まさか、俺を長い間放置していたのも、これを何とかさせるため?
そう考えると、俺が記憶喪失になったのも、ケアの企みがあるような気がしてならない。……いや、それは邪推しすぎているか。
あの女神は一体何を考えているのか分からない。
とにかく無事にすべてが終わったら、絶対ラウダ大陸へ戻る。そしてケアに会いに行く。いや、父親イザイアに会いに行く。……違う、まずアルフレッドとリンジーに会いに行く。長年ダラダラこっちで過ごしてしまったけど、今この瞬間にやりたいことがいっぱいできてしまった。
―――またしても大地は振動した。
今はそれどころじゃない。さっき落ちたのはアンファンとエンペドの亡骸だ。それが奈落の底から、またしても舞い戻ろうとしている。
「……エンペドが来ます!」
その掛け声と同時に、膨大に腫れ上がった骸が姿を現した。
リゾーマタ・ボルガから放出される魔力を、相変わらずその亡霊は吸い続けていた。先ほど揺らめいていた操り人形とは既に別物だった。
もはや人型すら留めていない。―――巨人族以上に膨れ上がった胴体。2本の脚は癒着して、尾びれのようになっている。まるで太った鯔のようだった。背中からは翅にも似た巨大な触角が幾重にも生え、表皮には漆黒の魔力が漂っていた。
そして、その胸の部分には、かの壮年の魔術師――アンファンの成れの果てが融合して、前傾姿勢で垂れ下がっていた。腐って爛れたような黒い皮膚と融合し、黒い泥のような体液がダラダラとその綺麗な銀色の髪に垂れていく。
「アンファン……!」
顔の面影が一部残っている。あれが死に顔だとしたらユースティンに見せるにはとても酷だ。親の死に顔があんなだったら嫌に違いない……。ましてや自分と引き換えになってあんな姿になっているとしたら―――。
ユースティンが気絶してくれていてよかった。
「あの大魔道士の"現代の魔力"を吸い上げて、パワーアップしたみたいですね………」
シルフィード様が冷や汗を流して、唖然とその異形の怪物を眺めていた。精霊様でも怖れている魔物だ。外見の醜悪さもあるが、その能力は得体が知れない。早いところ封印した方がいいだろう。臭いものには蓋をしよう。
「じゃあ、早いところ封印を―――――」
振り返って言いかけた瞬間、俺とシルフィード様の間に黒い粉塵が舞い上がった。その直後に爆発音が目の前で炸裂する。
「うわっ!」
「きゃあ!」
見上げると、その異形は片腕を俺の方に向けていた。ギュルギュルと黒い魔力が蜷局を巻いている。
何か魔法でも放ったのか……?
そう疑問に思ったのも束の間、さらにその腕の黒い魔力は回転力を高めた。それと同時に手の平から黒い魔力弾が炸裂する。
その弾道は、シアとユースティンに向かっていた。
――――バクッ、バクッ、バクッ……。
「あっ――――ぶねぇ………!」
時間制御で加速して、その2人にダイブして突き飛ばす。3人仲良く転がった。だが、一息つく暇もなく、追撃が襲ってくる。
迫りくる黒い塊に、俺はシアとユースティンの前に飛び出た。
ここでは俺がタンク役だ。この2人の後衛は、防御力が弱すぎる。
咄嗟に作り出した赤黒い複製剣をがむしゃらに地面から引き抜いて叩き斬った。1度斬りつけるだけで黒い魔力弾は爆散し、それと同時に俺の剣もバラバラに砕ける。
「な―――」
1つの魔力弾に対して、1本の使い捨ての複製剣。
向こうの1撃のエネルギーが強すぎて、強度が拮抗するみたいだ。
向こうが連射撃なのに対して、こっちは1本1本の剣戟でしかない。
複製が追いつかない……!
とうとう、黒い魔力弾は俺の身体に直撃した。
「ヴォ……ヴォ……ヴォ……!」
はるか上空から俺を見下ろす怪物は、その光景を楽しむように笑っている。まるでオモチャでも見つけた子どものように。狂気の人形遊びでもしているかのようだ。
まるで知性なんかあったもんじゃない。
魂も魔力も抜けきったその抜け殻は、古代の大魔術師と謳われた聡明さなど微塵も感じさせなかった。あるのは遊びに興ずる幼児のような好奇心だけ。
「ヴォォ………ヴォォオ………」
だけど、俺は特にダメージは感じていなかった。
「………?」
ふと、右腕を見やる。湯気のような煙が薄らと浮かび、黒い魔力は俺の右腕に触れた事で打ち消されていた。
「あ、そうか」
"あなたは虚数次元に有る魔力の使い手"
俺は女神ケアの力によって魔力を無効にする力がある。アンファンの言う"新規の魔法"とやらは無力化できないみたいだから魔法の怖さを改めて感じていたけれど、アレ系の魔法だったら打ち消せるんだった。
ということは、エンペドの放つ魔力弾もそんなに恐れることはない?
「ボ、ボ、グォォォ!!」
俺という遊び道具から期待した反応がなくて不満を感じたのか、その怪物の姿をした幼児は不満と怒りを振り撒いていた。
そしてまたしても、その背後に浮かぶリゾーマタ・ボルガから黒々とした魔力をチャージしている。
待てよ、あの黒々とした魔力――――。
記憶の片隅でこのリバーダ大陸での冒険の日々を思い出した。
インシグニア・アームズの反魔力弾で爆散するジャイアントG。正拳突きで装甲を割るだけで爆散するブラックコープス。そして、ルクール大森林に現われたベヒーモスも……。
すべて、黒い魔力を纏っていた。
"―――ベヒーモスは神が造りだした最高傑作と言われておる"
「あ………」
全てを思い出した俺。
この大陸でも、いわゆる"神"とは女神ケアの事だった。そしてその最高傑作のモンスター、黒い魔力を纏った魔物は悉く爆散させてきた。
ということは。
「ヴォ……」
チャージが終わったエンペドの亡骸。
それが再び、黒い魔力を腕に巻きつけ、俺に照準を合わせていた。
そして容赦なく、その黒い塊が放たれる。
俺はそれに、反魔力弾を当て、見事にその黒い泥を消滅させた。
消滅させることができた……!
「いける……!」
封印するどころじゃない。
アレは倒せる。俺はその確信を得るとともにその怪物へと駆け出した。ギリギリまで近づいて、その反魔力弾を怪物本人に放射する。
「オオオオアアアアア……!!」
しかし、エンペドは今までにない素早い動きでその弾丸を回避した。その瞬発的な動きは惚れ惚れするほど鬱陶しい。
「くそ、当たれよっ!」
何度も何度もインシグニア・アームズからその反魔力弾を放つ。しかし、エンペドは予測不能な瞬発的な動きで回避し続けた。
「ヴォ……ヴォ……ヴォ……」
それもヤツには楽しんでいるように見えた。新しい遊びを見出したかのように。苛々する。ジャンプして直接殴れば手っ取り早いんだろうが、助走をつけたとしても、高すぎて届かないだろう。今更だけど、グノーメ様に"インシグニア"じゃなくて、"スレッドフィスト"に戻してもらってれば良かった。あれだったら飛翔力で届くことも可能だっただろう
これだから浮遊系の敵は嫌いだ。
「ロストさん!」
と、そう思った直後。背後から声をかけられ、それを得意とする少女の存在を思い出した。
「1人で抱え込むのはやめましょう」
その子は俺をよく理解していた。何でも1人でやろうとしてしまうのは俺の悪い癖だ。彼女の腕には、エアリアル・ボルガ―――その神秘の力が宿った必中の弓が握られていた。
…
「くそ、なんで俺様がこんなことを………」
「今まで見てるだけだったのですから良いでしょう。精霊としての責任もありますよ」
「だからって、囮役ってのは性に合わねえ……」
俺たちの準備中、囮役になってくれるのは精霊にして賢者の2人だ。
シルフィード様とサラマンドは人型の姿となって、それぞれ風の結晶や炎の塊を作り出す。サラマンドは不満そうだったが、ぶつくさ文句を垂れながらもちゃんと役目を果たしてくれるらしい。
その魔法を、2人はふらふらとエンペドへと放った。
エンペドがそれらを興味深そうに目で追っている。
シルフィード様とサラマンドの存在に気づいたのか、その2人に向けて黒い魔力弾の連撃を構える。
「来ます!」
「ちぃ……エンペドがっ! 千年程度で変わり果てやがってッ!」
2人の精霊は散開してエンペドの気を引き、逃げ続けた。
その2人の姿を確認し、俺はシアの方へと向き直る。今回のこの戦い、俺が反省するべき点は山ほどある。だけど、シアはそんな俺の尻拭いをしてくれたようなものだ。
知らずにアンファンの手伝いをし続けた俺。偽ボルカニック・ボルガで封印をすべて解除してしまったのも俺。暴走するアンファンとの戦いで、その術中にハマり続けたのも俺。
振り返ると、格好悪い事ばかりだった。
「シア……今回の戦いは………」
「なんでしょう?」
彼女は相変わらず出会ったばかりの頃のように、キョトンとした目で小首を傾げた。度重なる戦いで、顔が煤や泥だらけになっているが、その流麗な青い髪は首の動きに反するようにキラキラと揺れている。
「俺のミスばかりだった……だから、こんな事になって、その――!?」
彼女の小さな人差し指が、俺のその唇の動きを抑えた。そして、ゆっくりとその人差し指は彼女の唇へと移動した。こんな状況だと言うのに、その仕草に俺は目が釘づけになっていた。
そして人差し指を一本立てたまま、彼女は俺に微笑んだ。
「それは、気のせいというやつです」
にっこりと微笑むシア・ランドール。
天使のような微笑みだった。
俺は自身の頬が赤くなるのを感じた。
「………」
「化け物同士、お互いのダメな所は補い合いましょう」
「あ、あぁ……!」
俺は完璧なんかじゃない。これから先、どれだけ英雄視されても失敗は繰り返し続けるだろう。……だけど、この子ならそんな俺の短所を受け止めてくれる気がした。
「じゃあ、最後のケジメをつけにいくぞ」
「はい」
俺は地面から、その得物を引き抜いた。
何度もトレーニングして貯蓄したイメージだ。
引き抜いたのはレイピアよりもさらに細い、もはや剣とは言えないほどの"針"だった。その針には、歪んだ赤黒い線が張り巡らされている。
反魔力の力を宿した"退魔の矢"だ。
「これだ………射てるか?」
「エアリアル・ボルガなら………多分」
「たぶんかよっ!」
「いえ、かなり確実に近い多分です」
心配な事を言ってくれるが、少しは緊張が和らいだ。
俺はその針の剣を握りしめると、シアの背後に立ち、彼女の握るそのエアリアル・ボルガへと添えた。そして彼女の小さな白い手が、俺の手を握りしめる。シアの左手がエアリアル・ボルガのレザーグリップを、そこに俺の左手を添える。
俺の右手が赤黒い針の柄を、シアの右手が弓弦を引っ張った。
「いいか………!?」
2人でその"必中必殺の弓矢"を創り上げる。
彼女が必中の弓となり、俺が必殺の矢となる。
「はい………!」
「いくぞ………ッ!!」
――――放てっ。
そして射られた最強の弓矢。
照準はエンペドの亡骸―――歪に膨れ上がった黒い魔力そのものだ。
対象は現在、黒魔力を蓄えている最中だった。精霊たちに翻弄されて失った魔力を、三度ボルガから吸収している。
そこに一本の神秘の矢が狙いをつけて加速する。
放たれた退魔の矢は、空圧制御とボルガの力が加速度となって威力を増した。轟音は、その疾風とともに。
赤黒い彗星が、翠緑の軌道を描いて空中を駆け抜ける!
「ヴォ……ヴォォ…………ヴォ……?」
エンペドがその存在に気がついた。
直撃するところを寸前のところで、回避した。
だが、あの神秘の矢は、必中の矢だ。
大きく弧を描いて軌道を曲げ、再びエンペドの元へと迫りくる。
いけ………!
その背後から迫る生きた矢に気づかず、エンペドにそれが直撃する。
「ヴォオオ!」
その声が重なるとともに、エンペドと、それに黒い魔力で繋がっていたリゾーマタ・ボルガは、動きを制止させた。
――――ッパァン……! 豪快な炸裂音が鳴り響く。
爆散した。エンペドの亡骸も、そして円月輪の中心の魔力も……。
黒い怪物と赤黒い混沌は、俺とシアが造り出した必殺必中の退魔の矢で、消滅した。
「……やった」
「はい、終わりました………」
「やったーーーー!」
霧散した骸と魔力は、散り散りになって振り注ぐ。
黒い大量の煤のようだった。
「……は、はは………はぁ………」
達成感を得たと思ったら体がずしりと重くなる。
延々と続く戦いと極度の緊張で、俺の身体は限界だったらしい。疲れは重力魔法を受けた時のように重たく圧し掛かる。
肩で息をして、成功を共有した隣の女の子へと顔を向けた。
しかし俺なんかよりも、シアの方が重症だったようである。
まるで最初からそうしていたかのように、彼女は地面に静かに倒れて眠りに就いていた。その小さい寝息も、穏やかな寝顔も、俺はこれからも守っていきたい。
だが、今回シアを守ったのは俺なんかじゃない。
それは両親からの贈り物―――考古学者が探究し続けた神秘の力"エアリアル・ボルガ"だ。
彼女はそれにより、両親の復讐を果たし、そして勝利した。
使い込まれたロングボウは彼女の背中に寄り添ったまま。
そして力を失ってただの木筒に戻ったボルガは、、転がるようにしてシア・ランドールのお腹へ寄り添った。
その光景はまるで、親子の添い寝を彷彿とさせた。
○
―――戦いが終わると同時に、夜明けが来た。
俺はシアの寝顔、そしてユースティンの寝顔を眺めて、眠ることを諦めた。さすがにこの2人に加えて俺まで倒れたら、精霊様2人のお手を煩わせることになる。
「帰るまでが迷宮ピクニックだもんな……」
独り言を呟き、ガタガタの身体に鞭打って隣にいるシアをおんぶした。
崩壊したアザレア古城に差し込む朝日は、暗雲を照らす聖なる光のようだ。
天からの贈り物―――勝利の栄光だ。
かつて迷宮と呼ばれたこのアザリーグラードに訪れた本当の夜明けとも言える。生活基盤を失った冒険者たちもこれから大変だろうけど……まぁさすがにそこまでは面倒見切れない。
瓦礫の山の中、シアをおんぶする俺と、ユースティンを担ぐシルフィード様とサラマンドは、悪戦苦闘しながらその崩落した瓦礫の上を歩いた。
――――チャリン……。
「ん?」
振り返ると、そこに力を失って小さくなった円月輪が落ちていた。
リゾーマタ・ボルガ―――世界の因果律を書き換える羅針盤。
それが朝日を反射して、銀色に輝いている……。
(第2幕「賢者と迷宮」 完)